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更新日:令和3(2021)年7月7日

ページ番号:447569

ニホンナシのいや地現象発生程度は台木や品種の組み合わせで異なる!

1.はじめに

ニホンナシ新品種「甘太」は、果実品質が良く栽培が容易で、晩生ナシの需要を拡大できる品種として普及拡大が期待されています。しかし、生産現場からは、改植圃場に定植すると初期生育が不良であるという情報が寄せられています。そこで、「甘太」におけるいや地現象の発生程度を検討しました。また、同じ品種であっても台木によっていや地現象の発生程度が異なる可能性があります。そこで、ホクシマメナシ台(以下、マメナシ台とする)とヤマナシ台について、いや地現象の発生程度を比較したので、併せて紹介します。

2.「甘太」はいや地現象の影響を強く受ける

ナシのいや地の発生程度については品種間で差があり、特に「あきづき」で生育抑制が強いことがわかっています。そこで、「甘太」と「あきづき」について、いや地現象の発生程度を調査しました。

ポット(容積22.5リットル)に、豊水(37年生)の主幹部から採取した連作土とナシ未植栽の新土をそれぞれ充填し、3月下旬に1年生苗木(マメナシ台)を植えました。8月下旬に樹体生育を調査したところ、新しょうの乾物重は、「あきづき」の連作土区では新土区と比べ67パーセントであるのに対し、「甘太」の連作土区では56パーセントと生育がより強く抑制されました(図1)。また、「甘太」の連作土区では、新土区に比べ葉の乾物重が72パーセントと少なくなりました(データ略)。これらのことから、「甘太」を連作圃場に改植した場合、いや地現象による生育抑制が「あきづき」以上に大きくなると考えられること、生育抑制は主に新しょうや葉に発生することが明らかになりました。

図1「甘太」と「あきづき」のいや地現象の発生程度

図1.「甘太」と「あきづき」のいや地現象の発生程度

注1)平成30年3月26日に連作土及び新土区それぞれ5反復で定植

注2)平成30年8月22日に新しょう、旧枝、葉及び根部に分けて乾物重を測定

注3)グラフ内の数字は、各品種の新土区を100とした時の連作土の比率を示す

3.台木の違いでいや地現象の発生程度が異なる!

ナシの台木はヤマナシとマメナシが一般的です。台木が違うといや地現象の発生程度も異なるか調べるため、前述した試験と同様に連作土区と新土区を設け、3月下旬に「あきづき」の1年生苗木(ヤマナシ台もしくはマメナシ台)を植えました。8月下旬に樹体生育を調査したところ、新しょうの乾物重は、ヤマナシ台の連作土区では新土区比べて86パーセントに抑制されました(図2)。一方、マメナシ台の連作土区では新土区と比べて67パーセントとなり、ヤマナシ台より抑制程度は大きくなりました。このことから、新土における生育はマメナシ台がヤマナシ台より旺盛ですが、いや地現象による生育抑制はマメナシ台がヤマナシ台より大きいと考えられました。

図2台木及び土壌の違いが「あきづき」苗木の新しょう乾物重に及ぼす影響

図2.台木及び土壌の違いが「あきづき」苗木の新しょう乾物重に及ぼす影響

注1)平成30年3月26日に連作土及び新土区それぞれ5反復で定植

注2)調査は前述の試験と同様に行った

注3) グラフ内の数字は、各台木の新土区を100とした時の連作土の比率を示す

4.まとめ

いや地現象の発生には品種間差があることが明らかになっており、特に「あきづき」で激しく発生します。普及拡大が期待される「甘太」は、「あきづき」以上にいや地現象の影響を受ける品種であり注意が必要です。また、「あきづき」では、マメナシ台ではヤマナシ台と比べ生育が旺盛ですが、いや地現象による生育抑制も大きくなります。ヤマナシ台、マメナシ台いずれの台木でも「あきづき」を改植する場合は、客土などのいや地対策を行うことが大変有効です。

 

初掲載:令和3年7月
農林総合研究センター
果樹研究室
研究員 金子夏樹
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