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更新日:令和5(2023)年12月7日

ページ番号:402832

ニホンナシにおけるいや地現象を軽減するための客土量

1.はじめに

ニホンナシは生産開始から30年を過ぎた頃から生産力が落ちてくるために、改植を行うことが必要です。しかし、改植した幼木はいや地現象により初期生育が不良になることが多く問題となっています。これまでに、植え穴の土壌600リットルを取り除きニホンナシ未植栽の土壌を客土することで、初期生育が改善することが明らかとなっています。しかし、生産現場からは労力を軽減するため客土量を600リットルより減らすことが望まれています。そこで、どの程度減らすことができるか明らかにするため試験に取り組みましたので紹介します。なお、今回客土に用いた土壌はすべてニホンナシ未植栽の黒ボク土、品種は「幸水」を用いました。

2.125リットルの客土は600リットルの客土と同程度生育する

客土量は600リットル区(縦×横×深さ=100センチメートル×100センチメートル×60センチメートル)、300リットル区(同100センチメートル×100センチメートル×30センチメートル)、125リットル区(同50センチメートル×50センチメートル×50センチメートル)、60リットル区(同45センチメートル×45センチメートル×30センチメートル)、無客土区の5区で比較しました。定植後の樹は4本主枝整枝を目標に、腕を作って(※)、主枝を直立に育成し、上棚まで到達した主枝から順次棚面に誘引しました。
※腕を作る:主枝基部30センチメートル程度を水平に誘引し、その先の新梢を垂直に誘引する技術。腕を作ることにより、棚付け時に主枝が折れることが少なくなる。

定植2、3年目の総新梢長(30センチメートル以上の新梢長の和)を調査したところ、600リットル区と比較して300リットル区でやや劣ったものの、125リットル区は同等以上でした(表)。300リットル区では客土の深さが浅かったことが影響している可能性が考えられます。また、主枝長は総新梢長と同様の傾向を示しました。

表.客土量別の定植2・3年目の樹体生育(品種:幸水)

果樹表

注1)平成25年12月定植、総新梢長及び主枝長は同27年12月(2年目)及び同28年12月(3年目)に調査を実施.主枝誘引率は同28年3月に調査を実施
2)主枝長は定植後から各年調査時までに生育した延長枝を含む長さ
3)客土範囲は本文を参照
4)試験は各区5樹調査

また、主枝誘引率は定植3年目に棚面に誘引された主枝数の割合を示しており、客土した4区では50%以上でした。一方、無客土区では45%と低くなり、これは、定植2年目までに上棚に達した主枝が少なかったことを示しており、側枝の配置が遅れ、樹冠の拡大が遅れる可能性があることを示しています。

3.おわりに

樹体生育を異なる客土量で比較したところ、定植3年目までは125リットル区で600リットル区と同等以上の生育を示しました。また、60リットル区でも定植2年目までは無客土区よりも生育が良く、主枝誘引率が高いことから生育が促進されていることがわかりました。そのため、改植時の客土を125リットル(縦×横×深さ=50センチメートル×50センチメートル×50センチメートル)まで減らしても初期生育の改善が図られ、60リットル(同45センチメートル×45センチメートル×30センチメートル)以上の客土であれば一定の生育促進効果が得られます。

なお、125リットル程度の客土をする時は、おおよそ50センチメートル四方の段ボール等を4枚直列に張り合わせた簡易な枠を用いると、客土範囲を容易に決めることができます(写真)。簡易枠は客土後に容易に取り除くことができ、繰り返し使用できます。

果樹写真

写真.簡易枠を用いた客土方法

(縦×横×深さ=50センチメートル×50センチメートル×50センチメートルの枠を用いた客土法)

初掲載:令和2年11月
農林総合研究センター
果樹研究室
研究員吉田明広
電話:043-291-9989

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

電話番号:043-223-2911

ファックス番号:043-201-2615

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