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更新日:令和7(2025)年5月27日

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温暖化による落花生の開花期の前進と初期の栽培管理のポイント

1.地球温暖化に伴う開花期の前進

(1) 近年の気温の上昇傾向

近年、夏期の気温上昇だけではなく5から6月の気温も上昇しています。約40年前の1980から1990年代では5から6月の日平均気温平均値が20℃を上回る年はほとんどありませんでしたが、最近10年では20度を上回る年が多くなりました(図1)。

落花生の開花期は気温の上昇に伴って早まることが知られています。したがって、落花生の生育は播種直後から地球温暖化による気温上昇の影響を受けて変化しています。

5から6月の日平均気温の平均値

図1.1980年から2024年の5から6月の日平均気温の平均値の推移(アメダス佐倉)(PDF:29.8KB)(クリックすると大きな図が表示されます。)                

(2) 開花期の前進

播種から開花期までの日数が短くなる傾向にあり(図2)、近年では「ナカテユタカ」と「千葉半立」ともに開花期が以前と比較して早くなっています。

ナカテユタカの播種から開花期までの日数の推移千葉半立の播種から開花期までの日数うの推移

図2.1980から2024年の落花生の播種から開花期までの日数の推移(農林総合研究センター落花生研究室(八街市))(PDF:42.6KB)(クリックすると大きな図が表示されます。)

注) 播種時期は両品種ともに標播(1980年から2009年は5月15日頃、2009年以降は5月25日頃)。

 

2.初期の栽培管理のポイント

(1)播種時期の決定(栽培計画) 

開花期の前進に伴い、収穫時期も以前より早い時期となることから、収穫作業を見据えて品種ごとの播種時期を決定する必要があります。落花生開花期予測モデル(令和5年度試験研究成果普及情報)を用いて予測した直近10か年の平均的な気象条件(アメダス佐倉)における品種ごとの開花期、収穫時期は表1のとおりです。

表1.直近10か年の5から7月の日平均気温平均値から予測した品種ごとの開花期と収穫期(PDF:25.9KB)(クリックすると大きな表が表示されます。)

表1 直近10か年の5月から7月の日平均気温平均値から予測した品種ごとの開花期と収穫期

(2)種子の準備

自家採種を行った場合、過熟種子や未熟粒を取り除き、発芽率や初期生育の向上を図ります。また、前年の夏に干ばつを受けた畑で採取した種子は幼芽褐変症が発生することが多いため、10粒の種子を割り、1粒でも中度から重度の症状が見られる場合はこの畑で採取した種子は使用しないようにしましょう。

(3)土づくり

落花生の作付に当たり地力を高める必要があります。しかし、未熟堆肥を施用すると登熟不良を招きやすいため堆肥は原則として前作作物の作付前に施用して土によく馴染ませます。また、石灰や苦土資材による土壌改良を行い、土壌の酸度(pH)が6.0から6.5の範囲となるようにします。黒ボク土の場合、苦土石灰の標準的な施用量は10アール当たり40から60キログラムです。

(4)施肥・畝立て・マルチ張り

標準的な基肥量は普通マルチ栽培で10アール当たり窒素3から4キログラム、りん酸12から13キログラム、加里11から12キログラムです。ただし、「千葉半立」と「Qなっつ」は土壌窒素が多いと過繁茂になりやすいので、野菜跡では施肥窒素量を20から30%減肥する必要があります。

畝立て・マルチ張りは栽植密度が10アール当たり約5,000から5,500株となるように行います。市販の穴あきマルチ(幅95センチメートル、2条・30センチメートル間隔の穴あき)を利用する場合、畝と畝の中心間隔を130センチメートルとすると、平均畝間が65センチメートルとなります。(図3)。

図3 マルチ栽培における標準的な栽植様式

図3.マルチ栽培における標準的な栽植様式(PDF:307.7KB)(クリックすると大きな図が表示されます。)

(5)コガネムシ類幼虫・ヒョウタンゾウムシ類の防除

コガネムシ類幼虫には、作付前・は種前又は、は種時にヒョウタンゾウムシ類には生育期に薬剤散布を行います。薬剤や使用方法については千葉県ホームページの農作物病害虫雑草防除指針を参考に、最新の登録情報を確認した上で散布しましょう。

(6)播種

1穴当たり1粒又は2粒を横置きで播種します。覆土の厚さは3センチメートル程度とします。鳥害対策として、種子に忌避剤を塗抹処理してから播種し、物理的な回避策としてはテグス等が挙げられます。テグス等は、出芽完了したら速やかに撤去しましょう。

(7)雑草防除

雑草防除は、対象となる雑草に効果のある除草剤を防除指針から選定し、散布するとともに、生育・結莢促進のため開花期までに中耕培土を2から3回行います。 

3.開花期後のかん水(空莢、幼芽褐変症の発生防止)  

(1)開花期の確認 

開花期とは畑の4から5割の株が開花始めとなった時期です(写真1)。落花生栽培では開花期を知ることで(ア)結莢期(開花期後約20日以降)の把握による干ばつ時の適期のかん水、(イ)開花期後日数による収穫期の目安の把握、を行うことができることから開花期を正確に把握することが安定生産上、重要です。上述のとおり近年、高温傾向により開花期が前進していることから、開花期の観察には注意が必要です。表1に示した品種と播種時期ごとの開花期を目安とし、この時期が近付いたら開花状況をよく観察しましょう。

写真1 落花生の開花始め(第1花が株元に咲く)

写真1.落花生の開花始め(第1花が株元に咲く)

(2)マルチの除去

マルチを張ったままの状態では収穫時の残さの処理に支障を来すばかりではなく、降水量が少ない場合に干ばつ害が助長されるため、必ず除去します。除去は、作業性の観点から子房柄が土中に進入する前(開花期の7日程度後)までに行います。

(3)かん水

結莢期(開花期後20日以降)に土壌水分が不足すると、莢数の減少、空莢(子実の充実不足)、子実重の減少が発生しやすくなります。降雨が少ない場合、開花期の20日後頃から一週間おきにかん水します。一回のかん水量は30から40ミリメートルとし、たっぷりと行います。

写真2.かん水の様子

写真2.かん水の様子

 

初掲載:令和7年5月

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