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更新日:令和3(2021)年7月1日
ページ番号:7273
外国人技能実習生(以下「実習生」)とは、開発途上国への国際貢献と国際協力を目的とした「外国人研修・技能実習制度」により来日した実習生のことです。千葉県内でも酪農家の約15パーセント(2012年時点)が実習生を受け入れています。
今回、実習生を受け入れている県内1酪農家での乳房炎の多発を受け、実習生が正しい搾乳技術を習得できるように取り組んだ事例を報告します。
全頭検査を行ったところ、飼養頭数の44パーセントが乳房炎で、そのうちの73パーセントが、実習生が担当している群で発生していました。細菌検査の結果、大部分がコアグラーゼ陰性ブドウ球菌を原因とする環境性乳房炎でした。(図1)
図1 発生状況と検査結果
そこで聞き取りを行った結果、この農場で乳房炎が多発した要因は、1)畜主の「実習生に正しい畜産技術を教える」という認識の不足、2)双方の搾乳手順の失宜(適正でない)、3)互いの畜産技術についての確認不足と考えられました。3)については、4)言葉の壁が原因になっているのではないかと考えられました。(図2)
図2 農場の問題点
まず、畜主に対して「実習生に正しい畜産技術を教える」という意識の再確認を行いました。次に搾乳指導をするにあたり、実習生との間にある言葉の壁を解消する必要がありました。このことが原因で、畜主と実習生が搾乳方法の確認を互いに行えていない事が考えられたためです。そこで、言葉の壁があっても指導する側が使いやすく、指導される側が理解しやすいテキストを作る必要があると考えました。
テキストの内容は環境性乳房炎防除を重点に置き、形態は一目で内容がわかるポスターとしました。(図3)
今回は、言葉の壁を解消する事を目的としているので、誰でも理解できるよう、イラストと算用数字のみを使用しました。文字を使わない利点は、実習生の国籍を問わずに使えること、そして実習生が自ら母国語で書き込めることです。
ポスターの左半分に正しい搾乳手順を、右半分に各手順における注意点を表記し、また、バルク室や牛舎内などどこにでも貼れて、いつでも実習生が確認できるようにラミネート加工をしました。
このポスターを用い、畜主・実習生立会いのもと乳房炎防除の指導に当たりました。
図3 搾乳指導ポスター
取り組みを行った1ヶ月後、乳房炎の牛は14パーセントまで減少し、その後も状態は維持されていました。バルク乳中の体細胞数も年間を通して1ミリリットル当たり50万から70万個前後で推移していたものが、対策後、1ミリリットル当たり30万個前後まで減少しました。(図4)
図4 体細胞数の推移
フィリピン人の実習生を受け入れている養豚農場で、子豚の温度管理と注射器の適正な使用について的確に指導できていない、という事例がありました。畜主から、実習生の母国語である英語で飼養管理についてテキストを作ってほしい、という要望があったため、基本的な飼養管理について、簡単な英語とイラストを使ったテキストを作成しました。(図5)
図5 養豚農家向けテキスト
実習生の数が増えている中、実習生が正しい畜産技術を習得できないことで飼養衛生に問題が生じる事例は今後も増える可能性があります。このため、実習生の畜産技術習得の推進や、実習生に係る問題改善に向け関係機関とともに支援していきます。
初掲載:平成26年9月
北部家畜保健衛生所
防疫課
関谷圭美
(電話:0478-54-1291)
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