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更新日:令和3(2021)年7月1日

ページ番号:7241

細断型ロールベーラで調製したトウモロコシサイレージの生産費と作業時間

1_はじめに

近年、千葉県においても細断型ロールベーラあるいは細断型コンビラップ(以下まとめて「細断型機」)によって、長大飼料作物を収穫調製する畜産農家が増えています。
その導入理由を聞くと「サイレージがカビにくい」「長期間、良好な状態で安定的に給与できる」「ロール形状なので給与作業が楽」といった声が多く聞かれます。

しかし一方で、細断型機は高価であり、またグローブ(ベールグリッパ)等、細断型機以外の作業機及び作業員が必要なことから、費用対効果が判然とせず細断型機の導入をためらう畜産農家もいます。

そこで、これらの畜産農家が細断型機の導入、あるいは利用拡大を検討する際の参考となるように、細断型機による収獲体系と従来体系におけるトウモロコシサイレージの生産費及び作業時間を比較してみました。

2_現地調査に基づく生産費試算

まず、収穫体系を以下のように分類しました。

定置区…細断型ロールベーラを収穫ほ場外(ロール保管場所など)に定置してロールを梱包する収穫体系(写真1)

コンビ区…細断型コンビラップを収穫ほ場外(ロール保管場所など)に定置してロールを梱包する収穫体系(写真2)

地下型区…地下角型サイロに収穫物を投入し鎮圧・密封する、従来通りの地下型サイロ体系(写真3)

ロールベーラ

写真1_細断型ロールベーラ

コンビラップ
写真2_細断型コンビラップ

地下型サイロ
写真3_地下角型サイロ

続いて、千葉県内でトウモロコシサイレージを生産する酪農家(定置区2戸・コンビ区3戸・地下型区2戸)を現地調査し、その結果を基に以下のような試算根拠(表1)を設定しました。

表1_試算根拠について

試算根拠

3_1ヘクタール当たりの生産費、収穫量1キログラム当たりの生産費

表1の設定数値で各区の生産費を試算した結果、以下のとおりになりました。

生産費の大部分を占める減価償却費が、地下型区では安く、コンビ区では高くなりました。

その結果、収穫量1キログラム当たり・10アール当たりの生産費は、地下型区が最も安価となり、コンビ区が最も高くなりました。

つまり定置区、コンビ区において、表1の条件下で地下型区と同じ生産費を実現しようとした場合、収穫面積を拡大して増収を図る必要があります(グラフ1、グラフ2)。

表2_生産費の試算結果

生産費の試算結果

グラフ1_コンビ区

コンビ区

 

グラフ2_定置区

定置区

4_軽労化の程度を推し測る

細断型機による収獲作業は従来体系の収穫作業よりも楽だ、という畜産農家が少なくありません。

そこで、細断型機による収穫体系の軽労化の程度を調べるため、作業の質(疲労度)を考慮した作業時間を算出してみました。

表3_作業時間の算出結果

作業

実作業時間(1ヘクタール当たり時間)

疲労度

質調整作業時間(1ヘクタール当たり時間)

定置区

コンビ区

地下型区

Max100

定置区

コンビ区

地下型区

ハーベスタ(共通)

3.04

3.04

3.04

26

0.31

0.31

0.31

運搬トラック(細断型機)

6.91

6.91

-

32

0.37

0.37

-

運搬トラック(地下型)

-

-

7.41

34

-

-

0.40

投入ホイルローダ
細断型ロールベーラ

5.24

-

-

59

0.69

-

-

ベールラッパ

3.76

-

-

12

0.14

-

-

投入ホイルローダ
細断型コンビラップ

-

5.24

-

41

-

0.48

-

グローブ

3.80

2.93

-

40

0.47

0.47

-

地下型サイロ鎮圧・密封

-

-

1.17

100

-

-

1.17

計(1ヘクタール当たり時間)

22.75

18.12

11.62

 

1.98

1.63

1.88

地下型区との比

196パーセント

156パーセント

100パーセント

 

105パーセント

87パーセント

100パーセント

  • 疲労度は、「地下型サイロの鎮圧・密封作業の疲労度(つらさ)」を基準として、各作業に携わった作業員に主観的に評価してもらった。
  • 疲労度決定のための調査人数は、上から8、6、3、2、2、4、3、0人(いずれも基準作業の経験者)で、平均値を採用した。
  • 現地調査において、細断型機の操作は投入ホイルローダの作業員が兼務していたため、両作業まとめての疲労度とした。

収穫面積1ヘクタール当たりに投入した実作業時間の合計は、地下型区と比べて定置区が約2倍、コンビ区は約1.6倍となりました。

しかし、これらに疲労度を加味すると、地下型区と比べて定置区は同程度、コンビ区は約1割減少しました。

これはこのように解釈することができます。

「定置区・コンビ区は地下型区より作業人数が多く、そのぶん合計作業時間も長い。けれど、収穫調製作業のつらさは地下型区より楽であり、その軽労化の程度を”つらさ(疲労度)を考慮した合計作業時間″で表現すれば、定置区なら地下型区と同程度、コンビ区は地下型区より若干短い、と感じる程度である。」

ただし実際には、ハーベスタ作業と運搬トラック作業はどの区でもほぼ同じ内容(同じ作業時間)であり、それらに対する疲労度もほぼ同じかと考えられますので、それ以後の作業(=地下型サイロの鎮圧・密封作業)において負担感が大きく軽減され、つまり軽労化が図られた、と考えられます。

5_まとめ

今回の現地調査において、トウモロコシサイレージの給餌作業における軽労化の程度についても調べました。(事例調査結果の紹介)

「サイレージ+その他のTMR材料をミキサーに投入しきるまで」の作業時間において、サイレージを地下型サイロからクレーンで取り出す場合と、ロールを開封して取り出す場合を比較したところ、1日当たりの実作業時間は同程度であったのに対し、つらさを考慮した作業時間は「ロール開封による場合の方が地下型サイロの場合よりも約4割短く感じる」という結果になりました。

このように、細断型機による収穫体系では、従来の地下型サイロ体系より生産費が高くなりがちですが、収穫調製作業や日々の給餌作業に伴う負担感を軽減できます。また、ラッピングロール形状によるサイレージ化は変敗が起きにくく、長期間良好な状態でトウモロコシサイレージを給与できます。

なお、今回の調査では開封済みラップフィルムの処分やロール保管場所の確保に係る手間等については考慮していません。

細断型機の導入あるいは利用拡大を考える際には、これらのデメリットも含めて多角的にご検討ください。

初掲載:平成23年5月

畜産総合研究センター企画環境部
企画経営室
研究員西山厚志
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お問い合わせ

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