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ホーム > 教育・文化・スポーツ > 歴史・文化 > 文化施設 > 美術館・博物館 > 県立美術館・博物館のイベント・展示情報 > 千葉県立中央博物館分館 海の博物館 造礁サンゴ「パリカメノコキクメイシ」に2種が含まれていたことを発見
更新日:令和3(2021)年11月13日
ページ番号:473709
発表日:令和3年11月12日
千葉県立中央博物館分館 海の博物館
県立中央博物館分館海の博物館の立川浩之主任上席研究員が一員となっている研究グループは、これまで1つの種と考えられていた造礁サンゴのパリカメノコキクメイシに2つの種が含まれていることを発見し、新たに見つかった別種を「ヒュウガパリカメノコキクメイシ」と命名しました。
この成果は、2021年11月5日付の国際学術雑誌 Invertebrate Systematics誌のオンライン版で公開されました。
滿木 雄大(国立大学法人宮崎大学)
磯村 尚子(独立行政法人 国立高等専門学校機構 沖縄工業高等専門学校)
野沢 洋耕(中央研究院 (台湾))
立川 浩之(千葉県立中央博物館分館海の博物館)
Danwei Huang (シンガポール国立大学)
深見 裕伸(国立大学法人 宮崎大学)
Invertebrate Systematics(国際学術雑誌) オンライン版
Distinct species hidden in the widely distributed coral Coelastrea aspera (Cnidaria, Anthozoa, Scleractinia)
(広域に分布するイシサンゴ「パリカメノコキクメイシ」に隠されていた別種のサンゴ)
造礁サンゴはサンゴ礁生態系の基盤となる非常に重要な生物です。現在、水温上昇などの環境変動によりその数が激減していることから、全世界的に保全対象となっています。その一方で、種の境界を定めるのが難しく、地域ごとの種多様性を知るのも困難であるため、現在分類学的な研究が世界的に進められています。
造礁サンゴの一種であるパリカメノコキクメイシには生殖様式が違う2グループが存在することがこれまで知られていました。一つは紀伊半島から九州にかけての温帯域でみられる、繁殖時にバンドルと呼ばれる精子と卵が塊になったものを放出するタイプで、もう一つは沖縄などのサンゴ礁域でみられる、卵と精子をばらばらに放出するタイプです。これらの二つの生殖様式はかなりの違いがありますが、骨格などの形態ではほとんど区別できないと思われていたことから、同一種の地理的変異であろうと考えられていました。一方、これらの2グループが非常によく似た別種である可能性も残されていました。
本研究グループではパリカメノコキクメイシには生殖様式の異なる複数種が含まれている可能性があると考え、生殖様式の再検討、分子系統学的及び形態学的な2グループ間の比較検討を行いました。その結果、これまで温帯型とされていたバンドルを放出するタイプはサンゴ礁域にも生息する(サンゴ礁域では2つの生殖様式をもつグループが共存する)こと、交配実験によりグループ間には生殖隔離がみられること、分子系統学的には2グループがそれぞれ独立した系統にあること、形態学的には骨格細部のトゲの形状などに2グループ間で違いがみられることなどが明らかになり、パリカメノコキクメイシには2種が含まれているという結論が得られました。
従来の分類学的研究により、パリカメノコキクメイシにはいくつかの異名(別種と考えられて記載されたが、その後の研究で同種と判断された名前)が含まれていました。今回、これら過去の記載を精査した結果、放卵・放精をするグループは狭義のパリカメノコキクメイシCoelastrea aspera(シーラストレア アスペラ)に該当し、バンドルを放出するグループはパリカメノコキクメイシの異名の一つと考えられていたCoelastrea incrustans(シーラストレア インクラスタンス)に該当するという結論となりました。後者にはこれまで和名が無かったため、本研究でヒュウガパリカメノコキクメイシと命名しました。
今回の研究成果は、これまで1つの種と考えられていた造礁サンゴの種の中に別種が含まれていたことを明らかにしたものであり、造礁サンゴの種多様性や地域特異性を考える上で基盤となる研究となると考えています。
研究材料となったパリカメノコキクメイシの骨格標本の形態の検討およびパリカメノコキクメイシの異名とされていた種の記載内容の精査・命名上の問題の検討などを行いました。論文執筆に当たっては、形態の記載および分類学上の問題の整理を行うとともに、論文全体の監修を担当しました。
パリカメノコキクメイシ(宮崎・沖縄)
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