カテーテル治療
1.経皮的冠動脈形成術
経皮的冠動脈形成術とは?
通常、PTCA(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty)あるいはPCI(Percutaneous Coronary Intervention)と略され、一般的に風船療法とも呼ばれている狭心症や心筋梗塞に対する治療法です。具体的な方法としてはカテーテル検査と同様に手首や脚の付け根から検査のカテーテルより少し太い2~3mmのカテーテルを入れて行います。そのカテーテルの中を経て細いワイヤーを冠動脈の中まで通していき冠動脈の狭窄部や閉塞部を通過させます。次に細いカテーテルをそのワイヤーに沿って病変部に持っていき広げますが、用いる器具により先端に風船がついたカテーテルにより広げるバルーン形成術や風船に加えステントと呼ばれる網目状の金属チューブにより病変をしっかりと広げるステント留置術、狭窄部にあるアテロームと呼ばれる病変を削り取る方向性冠動脈アテレクトミー(DCA)や硬い病変を削り取る高速回転式アテレクトミー(ロータブレーター)などの方法があり、病変の状態に応じて使い分けております。
苦しくないの?
カテーテル検査同様、局所麻酔薬を注射する時は多少痛みはあります。その他、治療に伴い風船で30秒から1分程度冠動脈を人工的にふさぐ形となりますので一時的に狭心症の発作が起こることはありますが、大部分改善します。
手術時間はどのぐらいかかるの?
病変の難しさにより異なりますが、多くは1~2時間で終了します。局所麻酔ですので治療中も会話は可能です。術後の安静時間は手首の場合は3時間、脚の付け根からの場合は6~8時間となります。また原則手術の翌々日には退院となります。
合併症について
造影剤や局所麻酔薬によるアレルギー反応、危険な不整脈、腎機能障害、心筋梗塞、脳梗塞、動脈解離や閉塞、出血や血腫などといったカテーテル検査と同様の合併症に加え、ワイヤーやバルーンカテーテルによる冠動脈の穿孔などがあり、その頻度は全体で約1%で死亡も0.3%と報告されております。このためその適応はメリット、デメリットを考えた上で慎重に判断しております。このため当センターでは年間約400例の治療を行っておりますが、待期的に治療(急性心筋梗塞ではない)した患者様で手術により亡くなられた方は開院以来いません。
2.経皮的経静脈的僧帽弁交連切開術
経皮的経静脈的僧帽弁交連切開術とは?
PTMC(Percutaneous Transluminal Transvenous Mitral Commissurotomy)と呼ばれ僧帽弁狭窄症に対して行う治療法です。僧帽弁は心臓の左心房と左心室の間にあり心拍動に伴い開いたり閉じたりしておりますが、その弁がくっついて狭くなったのが僧帽弁狭窄症です。多くは子供の頃のリウマチ熱の後遺症として大人になってから僧帽弁が狭くなり心不全や脳梗塞の原因となります。比較的軽症の場合PTMCの適応となりますが、具体的な治療法としては局所麻酔で脚の付け根の血管を刺し4mm程の風船の付いたカテーテルを静脈を経て僧帽弁に持って行き狭くなった僧帽弁で風船を一時的に膨らますことにより弁を広げる手術です。局所麻酔で行いますので会話は可能で痛みも局所麻酔の時のみです。手術時間は2~3時間程で、術後の安静は5時間です。問題なければ手術の翌々日には退院となります。
合併症について
手術に伴う合併症に関しては、一般的なカテーテル検査の合併症に加え、重篤なものとしては稀に僧帽弁に亀裂が入ることにより重症の僧帽弁閉鎖不全を合併したり心臓に裂け目を生じ緊急手術となることがあり、その頻度は約3~5%と報告されております。当センターにおいては今まで200例弱の患者様にこの治療を行っておりますが、治療により緊急手術となった方やなくなられた方はおられません。