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報道発表案件

更新日:令和7(2025)年5月13日

ページ番号:767846

県内中学生が千葉県初記録となる魚を発見し、学術論文を発表 博物館研究員と協働した研究が資料収集活動に貢献

発表日:令和7年5月13日
県立中央博物館

鴨川市の中学生が漁港の岸壁で採集した魚が、千葉県初記録で分布北限記録となるクラカケエビス(イットウダイ科)であることがわかり、学術雑誌「Ichthy(イクチィ)」で発表されました。
中学生は県立中央博物館 分館海の博物館(勝浦市)の研究員に指導を受けながら、採集した魚の形態的な特徴を自分で観察・計測して、本種であることを明らかにしました。当館では、房総半島周辺に生息する海の動植物の標本を網羅的に収集してきましたが、これまでに本種の記録はありません。この標本は千葉県産魚類の多様性を示す貴重な資料として、当館で登録・保管しています。
当館では、5月17日(土曜日)から、研究内容の概要とクラカケエビスの液浸標本を、トピック展示として紹介します。

鴨川市天津で採集されたクラカケエビス

鴨川市天津で採集されたクラカケエビス(全長約6.8センチメートル)

学術論文の著者

秋山 天汰(あきやま てんた)(一般社団法人) にじいろはうす 「フリースクール ステーション」中学3年生
川瀬 裕司(かわせ ひろし)千葉県立中央博物館分館海の博物館 主任上席研究員

研究の経緯

秋山天汰さんは、小学生のころから自宅近くの磯や漁港で魚を採集して、その魚を水槽で飼育していました。6年生の時に記録用として死後冷凍保存していた魚が、これまで千葉県では見つかっていないクラカケエビス※ではないかと最近気づき、県立中央博物館分館海の博物館へ相談に来ました。
魚類担当の川瀬裕司主任上席研究員がクラカケエビスの標本記録を文献で確認したところ、千葉県では記録がないことが分かりました。そこで、秋山さんが採集した標本は、当館の魚類標本として登録・保管することになり、その標本に基づいて、千葉県初記録で分布の北限記録となるクラカケエビスが採集されたことを、学術論文として報告することになりました。
学術論文で新記録となる魚を報告するには、単に色や形が似ているという主観的な判断だけでは不十分で、その魚の具体的な特徴、例えば、鰭(ひれ)にある棘条(きょくじょう)(鰭(ひれ)にあるスジのうち、固く先端がとがっているもの)や軟条(なんじょう)(鰭(ひれ)にあるスジのうち、軟らかく先端がとがっていないもの)の数や、体の各部位の長さなど30項目以上を計測して比較する必要があります。秋山さんは分館海の博物館へ何度も通い、川瀬主任上席研究員の指導のもとで実体顕微鏡やノギス(計測器具)を用いて、これらの作業を全て自分で行い、この標本がクラカケエビスであることを確認しました。
 
※クラカケエビス 学名は、Sargocentron caudimaculatum (Rüppell,1838)。熱帯性のイットウダイ科の一種で、日本では沖縄などサンゴ礁域を中心に分布しているが、本州では非常に稀。

研究の意義

この標本は、クラカケエビスの千葉県初記録かつ分布北限記録(これまでの記録は三重県)であることや、千葉県産魚類の多様性を示す標本として重要な意義があります。
本研究は、広く県民に開かれた博物館として一般県民(中学生)と研究者が協働して研究成果を生み出すシチズンサイエンスの例であるとともに、市民が採集した標本が博物館資料の充実に貢献している点で大きな意義があります。

掲載誌・論文タイトル・発表日

掲載誌 『Ichthy (イクチィ)』
論文タイトル 南房総から得られた北限記録のクラカケエビス(イットウダイ科)

発表日 令和7年4月22日
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研究内容の展示について

研究内容の概要と、クラカケエビスの液浸標本を展示します。

期間 5月17日(土曜日)から

会場 千葉県立中央博物館 分館海の博物館(勝浦市吉尾123)

開館時間 午前9時から午後4時30分(入館は午後4時まで)

入館料 一般200円、 高校・大学生100円

※中学生以下・65歳以上・障害者手帳等をお持ちの方とその介護者1人は無料

本件に関する問い合わせ先

県立中央博物館 分館海の博物館

電話 0470-76-1133