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報道発表案件

更新日:令和6(2024)年4月3日

ページ番号:656514

房総半島沖の浦賀水道・相模湾から新種のアナエビ類を発見

発表日:令和6年4月3日
県立中央博物館

県立中央博物館(千葉市)の駒井智幸(こまいともゆき)地域連携課長は、房総半島沖の浦賀水道・相模湾からアナエビ科カイメンヤドリアナエビ属の新種を発見し、「ビャクガンヤドリアナエビ(白眼宿穴蝦)」と名付けました。
カイメンヤドリアナエビ属はいずれも深海に生息し、キヌアミカイメン類の群体を住処に利用することが知られています。当該海域からはすでに本属の2種が報告されていましたが、DNA解析により新種の存在が明らかとなりました。
この研究成果は、2024年3月8日に国際学術雑誌Zootaxaで公開されました。

研究者

駒井 智幸(こまい ともゆき)県立中央博物館 地域連携課長

掲載誌・論文タイトル

掲載誌 『Zootaxa 5419 (4): 495-524外部サイトへのリンク
論文タイトル Reappraisal of Eiconaxius farreae Ortmann, 1891 and Eiconaxius mortenseni Sakai, 1992 (Decapoda: Axiidea: Axiidae), with description of a new species from Japan
DOI https://doi.org/10.11646/zootaxa.5419.4.2

研究の概要

カイメンヤドリアナエビ属について

カイメンヤドリアナエビ属Eiconaxiusは、十脚目 アナエビ下目 アナエビ科に属するザリガニ類に似た甲殻類で、水深200メートルを超える深海に生息し、キヌアミカイメン類の群体を住処にすることが知られています。
本属はこれまで、世界で37種、日本近海でそのうち4種が記録されており、房総半島から相模湾にかけての海域からは、カイメンヤドリアナエビとマルツノカイメンヤドリアナエビの2種が記録されていました。

新種発見の経緯、特徴など

県立中央博物館では、房総半島とその近隣海域に生息する甲殻類の調査を続けてきました。これらの調査により博物館に所蔵されている標本をDNA解析した結果、3つの標本群が認識されました。これらを比較したところ、2つの標本群はそれぞれ既知種であるカイメンヤドリアナエビとマルツノカイメンヤドリアナエビに同定されましたが、一つは未記載種であることが判明し、今回新種として発表されました。
なお、種の同定にあたっては、フランスのストラスブール動物学博物館に所蔵されているカイメンヤドリアナエビのタイプ標本(相模湾産)を検討しました。興味深いことに、このタイプ標本には2種が混在していて、そのうちの1種は今回の新種であることがわかりました。そのため、カイメンヤドリアナエビについて学名を担うタイプ標本(レクトタイプ)を指定し直し、カイメンヤドリアナエビの種同定を明らかにしました。
形態を詳細に調べたところ、新種はマルツノカイメンヤドリアナエビによく似ていますが、額角が尖ることや、眼に色素がないことなどの特徴で識別できることがわかりました。学名は、これまでその存在が知られていなかったことにちなんで、ラテン語のreconditus(=隠された)からEiconaxius reconditusと命名しました。和名は、色素を欠く白い眼にちなんで「ビャクガンヤドリアナエビ」としました。
カイメンヤドリアナエビカイメンヤドリアナエビ(中央博物館所蔵)
新種ビャクガンヤドリアナエビ新種ビャクガンヤドリアナエビ(中央博物館所蔵)

今回の新種発見の意義について

カイメンヤドリアナエビ属は浮遊幼生期がない、あるいは短いことにより分散能力が低く、種の地域固有性が高いと推測されてきました。今回扱った3種もその分布は日本周辺海域に限定され、さらに今のところ、ビャクガンヤドリアナエビとマルツノカイメンヤドリアナエビは房総半島・相模湾海域からしか見つかっていません。
今回の発見により、狭い水域に同属種が3種共存していることが明らかとなり、生息場所を共有する種がどのように狭い海域で共存しているのかを調べる第1歩となります。
房総半島沿岸は比較的、海産生物についての研究が進んでいますが、航路となっている浦賀水道の深海調査は難しく、刺網漁業などの支援をいただいて資料の収集を進めてきました。また、相模湾側は、東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所を拠点とした調査船による調査で、水深500メートルまでの深海も含めた海域で資料の収集を行ってきました。収集された標本の検討はまだ途上ですが、未記載種と思われるエビ・カニ類が見つかっています。今後も辛抱強く研究を継続し、地域の生物多様性の解明に貢献したいと考えています。

研究者プロフィール

駒井 智幸(こまい ともゆき)県立中央博物館 地域連携課長
駒井
十脚目甲殻類の分類を研究テーマに、比較形態学とDNA配列情報を用いて、十脚類の種多様性を解明している。十脚目甲殻類の分類・多様性に関する原著論文を372編公表(2024年3月20日時点)。記載した新種は410種を超える。これらの論文に加え、図鑑NEOシリーズの「水の生物」「深海生物(小学館)」やバイオディバーシティシリーズ「節足動物の多様性と系統」(裳華房)などに分担執筆者として参加し、研究成果をより分かりやすい形で紹介している。

World Ranking of Top 2% Scientists in 2022(スタンフォード大学と学術出版社のElsevierが共同で発表する全世界の科学研究者の論文引用に関するデータベースに基づいたランキング)で世界の研究者の上位2%にランクインした。

問い合わせ

県立中央博物館 地域連携課長 駒井智幸(こまい ともゆき)
電話 043-265-3111
メール komai(アットマーク)chiba-muse.or.jp
※(アットマーク)を@に変更して送信してください。
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