都会と田舎の二拠点生活。
自然の中で子どもと共に育つ暮らし。

馬場さん顔写真

2地域居住 馬場未織さん

ジャンプするチーバくん

東京から1時間半の距離にある田舎、それが南房総市

南房総市は千葉県南部に位置しており、東西を海に囲まれています。また中央部にはのどかな里山があり、それぞれの地域で文化・景色が異なります。

馬場さんは、平日は東京で暮らし、週末は南房総市に通うという二拠点生活を送っています。この暮らしは2007年から始め、現在まで続いています。

 

「息子が生き物について興味を持つようになって、それがきっかけで始めた二拠点生活ですが、言い出したのは夫でした。私はずっと東京で暮らしてきましたし、過不足ない生活をしていると思っていました。それに子どももいるし、仕事も東京にある。実は、最初はあまり乗り気じゃなかったんです。」

 

本当に田舎暮らしをするとも思わず、洒落で物件を探し始めたという馬場さん。東京との土地の価格や広さの違いに驚いたそうです。

 

「遊びに行くような軽い気持ちで実際に現地に行ってみたら、急にリアリティが出てきたんです。ここ(南房総市)にもう一つの家があって、東京から1時間半かけてここに来て、暮らしているイメージが湧いてきました。その感覚に背中を押されるようにして、この土地と家を買いました。」

 

 

東京都から南房総市までは館山自動車道とアクアラインを使えば約90kmで、車で1時間半の距離。しかし当時はアクアラインの通行料が高かったこともあり、千葉方面に行ったことはほとんどなかった、と馬場さんはいいます。

 

「アクアラインを降りるとすぐ、山深い田舎の風景が広がっています。初めて千葉に行ったとき、身近な場所に東京とまったく違う空気が流れていることに驚きました。富津市くらいで、海の色がぱっと変わるんですよね。『南に入ったぞ』という感じがして、こんなに近くにこんなに自然の深い場所があることに感動しました。

特に南房総市は、ブランディングされていない素朴な場所です。東京での仕事は建築関係なので、デザインされたものに完全に浸かりきっていました。なので、その何もなさがとても気持ちがよくて、本質的に心地良いなとも思いました。」

 

東京で建築関係のライターとして働く馬場さんにとって人の手の加えられていない千葉県の豊かな自然はとても新鮮だったそうです。

 

「南房総市では山暮らしも海暮らしも楽しめます。それが房総半島の南端の良さだと思いますね。山で暮らしているのに、暑くなる10時前に畑仕事などを全部終わらせて、シャワー代わりに海に入って、帰ってゴロゴロする、そんな生活ができるんです。

館山の市街地まで行けばそこまで田舎じゃないですし、東京までのアクセスも良い。田舎暮らしに没頭することもできるし、何かあったら都市にも出られる。こんな場所は珍しいですよ。」

二拠点生活は「やりたいことを一生懸命やる子どもの姿」をみせてくれた

南房総市での二拠点生活を始めた当時、馬場さんには5歳と2歳のお子さんがいました。そのような状態での二拠点生活に対して、周囲からは心配の声も多かったといいます。

 

「移住ならまだしも、家を2つ持つことに対して心配され続けていました。我が家のある地域は別荘地ではなく、管理人がいるわけでもない。広い安い土地にある古い家を買っても、管理し切れなくて途中で投げ出してしまうんじゃない?そんなことしている人、ほかに見たことないよ、と」

 

そんな心配の声を受けながらも始まった二拠点生活。馬場さん家族は、今も築100年以上の古民家に暮らしています。外にあるデッキ以外、増築などはしておらず、ほぼ買った当初のままだといいます。

 

「子どもも大人も最初は手探り状態でした。『何もできない!どうしよう』って。田舎暮らし、古民家ならではの問題もあります。東京にいる時は、床下に湿気がたまって畳がカビるなんてあり得ないことだと思っていました。だけど、ここだとカビが生えるとか虫が入ってくるとかは普通のことで、生々しいことがたくさんあります。」

 

 

大人も子どもも、それぞれが好きなことをする南房総市での暮らし。その中で馬場さんは、自分にとっての幸せを見つけます。

 

「私は、やらないといけないことをやっている子どもたちより、やりたいことを一生懸命やっている子どもたちを見るのが好きなんですよね。主体的に動く姿を見ることが私の幸せなのだなと思いました。また、飼っている猫についても同じように、制約された空間ではなくて、大自然の中に解き放たれた時に何をするのか、よく見ています。この幸せは、二拠点生活をしていなければ感じられなかったかもしれません。

また、植物や生き物の名前や生態など、人間以外との関わり方を知ると自分の行動や活動の幅が広がるというのも大きな気づきでした。新しいことを知るごとにびっくりし、次の発見の扉を開ける、という体験を家族で繰り返していた感じです。だから育てているというより、共に育つ、という感じでした。」

 

二拠点生活を始めた当時は小さかったお子さんは、今は大学生と高校生です。南房総市に暮らし始めてから生まれたお子さんは中学生。大きくなるにつれて、南房総市との関わりは変わっていきました。

 

 

「大学生の長男は友達と泊まりに来て、翌朝早朝からサーフィンに出かけたりして、シェアハウスみたいに使っています。一方で下の子たちは田舎育ちゆえに都会に憧れる子みたいになっていって。週末はずっと田舎で過ごしていた反動か、原宿や渋谷など繁華街に行くのが楽しいようです。

その気持ちは分かります。ティーンエイジャーの彼女たちは都市的なところで青春をキラキラ楽しみたいでしょうしね。けれど面白いことに、高校3年生の長女は最近変わってきていて、私が南房総に行くときにたまに『わたしも行く!南房総の空気が吸いたい!』とついてきます。受験勉強に疲れると、広い空のもとでリフレッシュしたくなるみたいです。」

 

馬場さんのお子さん達は、年齢と共に形を変えながらも二拠点生活を楽しんでいるのでしょう。

小さい子どもがいても、やりたいと思ったことをやるべき

二拠点居住をしたいけれど小さい子どもがいるし…との不安から一歩踏み出せない人も多いです。しかし馬場さんは、やりたいと思った時にやったほうが良い、といいます。

 

「小さな子どもがいる状態での二拠点生活は楽しいですよ。子どもが大きくなると、その時間の尊さに気づきます。小さい子どもがいることで大変な部分もあるし、失敗することもあります。けれどそんな経験も丸ごと家族の栄養になり、過ぎてしまえば笑い話になります。

自然の中で子どもと一緒に遊んでいる時、ふと同じ目線で夢中になっていることがあるんですよね。子どもを遊ばせて見て確認するんじゃなくて、子どもと一緒に感動して、一緒に記憶に焼き付ける。この価値は後になってわかります。子どもが2歳や3歳の時にしか作れない時間がたくさんあるし、その頃に戻ることはできないですからね。リスク管理だけに囚われていると、本当に大事なことが見えなくなる時があります。親こそ、自由な気持ちで」

 

もちろん都市部で経験できることもたくさんあります。反対に、自然の中でしかできないこともまた、たくさんあるでしょう。東京と千葉の田舎を両方楽しめる南房総は二拠点生活にピッタリの場所なのかもしれません。

 

「人生なにがあるか分かりません。自分の計画通りにいかないことがたくさんあるからこそ、面白いのかもしれませんね。私の場合、動きながら考える、という行動パターンができている気がします。ハプニングこそ面白いぞと思えるようになったのも二拠点生活を始めてからです。」

 

こう話す馬場さんの顔はとても輝いていました。人生そのものを楽しんでいるのが伝わってきます。

 

「今後は福祉にも力を入れていきたいです。ここでは、おじいちゃん・おばあちゃん達とたくさん話をします。何年もこの暮らしを続ける中で、高齢の方たちや障がいを持つ人たちが幸せな場所って良いなと思ったんです。自分達の幸せは、まわりが幸せでこそ本当の意味で成立するんですよね。

ご近所さんが嬉しそうにしているのを見ると、わたしも嬉しくなります最近は100年の人生をどうしたら自分らしく生ききれるかを考えるようになりました。どの世代の人たちも孤独にならず、困り果てることなく、そこそこ幸せに生きられるネットワークをつくってみたいです。」

 

馬場未織さんのインタビュー動画はこちらから

 

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