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更新日:平成28(2016)年12月6日

次世代に引き継ぐ農地の土壌保全

1.土は一日にしてならず、長い目で守り・育てるべし

「ローマは一日にしてならず」という諺を御存知でしょうか。繁栄は長い蓄積の上に成り立っています。

土は、岩、火山灰、周囲の堆積物などの「母材」が長い年月を経過して変化してできました。いわば母材の素質の上に、長年にわたる多様な作用が積み重なった「変化の蓄積」の産物、「自然と時間」の賜物です。

気付きにくいものですが、現在でも常に変化しています。そして人間は「自然と時間の蓄積財産を消費し尽くし、破壊してしまう」力も持っています。

生産の基盤である土がひとたび壊れると、とりもどすのに長い時間と膨大な手間・資材が必要になります。休耕地を含めて農地を国民的資産として次世代に引き継ぐには「今、踏ん張らねばならない」のです。

土の保全はすぐにお金を生み出すものではありません。でも、足下がくずれては地域農業の安定的な発展は望めません。地域リーダー、あるいは指導者であるあなた自身が、問題意識を持って取り組むことが大切です。

2.侵食に注意!

(1)生産基盤保持は生活環境改善を兼ねる

農地土壌の「侵食」は世界レベルで重大な問題になっていますが、実は身近なところでも発生しています。せっかくの豊かな耕土が流出するのは農業生産上の損失です。何の対策もとらないと裸地の畑から毎年0.5~10t/ha程度が流れ出てしまいます。

また、砂ぼこりや濁流となって近隣の生活環境を脅かします。周辺住民の理解が得られなければ、農業もやりにくくなります。すなわち、生産基盤保持と生活環境改善を兼ねて「土壌侵食」を防止しましょう。

(2)侵食防止には、ちょっとだけ手間と楽しみを

土壌の侵食は、風食と水食に大別できます。いずれも土を風や雨水にできるだけさらさない工夫が必要です。

分かっていることではありますが、普段の農作業だけでも忙しいのに、侵食防止のためだけに手間や経費をかけるのはなかなか困難でしょう。でも、「土を養う」意義を理解し、かつ何か「楽しみ」を見付けて「無理なく」続けたいものです。

ア.主な手法

  • (ア)多毛作・輪作
  • (イ)緑肥・被覆作物(カバークロップ)
  • (ウ)間作・同伴作物(コンパニオンクロップ)
  • (エ)草生栽培
  • (オ)敷きわら
  • (カ)防風垣・防風作物
  • (キ)グリーンベルト・土砂貯めのます
  • (ク)たい肥施用
  • (ケ)耕耘時のローラー鎮圧
  • (コ)雨水浸透促進のためのサブソイラー処理

イ.ちょっとした知恵

  • (ア)夏蒔きの麦は出穂しないで枯れる
  • (イ)検査規格外の麦を活用すれば種子代不要
  • (ウ)緑肥・被覆作物・間作等のすき込みは、たい肥投入より省力的
  • (エ)休耕地の過度なロータリー耕よりも緑肥等の法が省力的
  • (オ)すき込み作業は、機械を持っている人に頼む
  • (カ)緑肥等には土壌線虫防除効果も期待できる
表1_土壌線虫の対抗植物
植物 商品名 サツマイモネコブセンチュウ キタネコブセンチュウ キタネグサレセンチュウ
マリーゴールド アフリカントール、セントール、マサイ  
クロタラリア・ユンシア コブトリソウ、ネマコロリ   ×
クロタラリア・スペクタビリス ネマキング、ネマクリーン
ハブソウ ハブエース      
ギニアグラス ナツカゼ、ソイルグリーン
エンバク ヘイオーツ、オーツワン、ニューオーツ、ネグサレタイジ    
ソルゴー つちたろう    
  • (キ)麦などの防風作物は50m程度の間隔で垣根状に
  • (ク)緑肥等で花を楽しむ、地域行事を盛り上げる

3.汚染物質に注意!

土壌に有害物質が入り込むと、除去は非常に困難です。客土や資材投入に当たって、十分に注意することで土壌汚染を防止しましょう。

汚染物質として危惧されるものは多様ですが、農地では従来から自然由来を含めた重金属に着目しています。

(1)制度

ア.特定有害物質と農用地土壌汚染対策地域の指定要件(農用地の土壌の汚染防止等に関する法律)

表2_特定有害物質と農用地土壌汚染対策地域の指定要件(平成22年6月改正)

特定有害物質

許容基準(ppm)

土壌中

米中

カドミウム及びその化合物

-

0.4未満

銅及びその化合物

125未満(田に限る)

-

ヒ素及びその化合物

15未満(田に限る)

-

イ.管理指標としての亜鉛に関する基準

有機性の副生物を再生原料にした資材の適切な利用を図り、重金属の農地蓄積を防止するために暫定的に定められている。カドミウム、銅、ヒ素等の法律に定める物質そのものではなく、「指標物質」として亜鉛の値を用いている。

  • (ア)農用地における土壌中の重金属等の蓄積防止に係る管理基準(昭和59年11月8日付け環境庁水質保全局長通知、抜粋)

農用地における土壌中の重金属等の蓄積防止に係る管理基準値は、土壌(乾土)1kgにつき亜鉛120mgとする。

  • (イ)下水・し尿汚泥の農用地施用に係る当面の留意事項について(昭和63年9月1日付け千葉県農産第234号、抜粋)
表3_下水・し尿汚泥等の土壌別,地域別施用基準

施用基準

火山灰土

河成壌質土(県北地域)

海成砂質土(九十九里地域)

三紀粘質土(安房地域)

年間施用上限量(kg/10a)

乾物:500

現物(水分30%):700

現物(水分60%):1,300

土壌中全亜鉛濃度(平均,ppm)

100

90

60

100

下水・し尿汚泥等の総施用限界量(乾物,t/10a)

2.0

5.5

11.0

3.0

  • 注1)汚泥の全亜鉛濃度を1,000ppmとした場合の数値である。
  • 2)作土の深さは15cmとし、仮比重は火山灰土0.65、三紀粘質土1.0、海成砂質土及び河成壌質土1.2とする。
  • 3)上述の数値は、たい肥化しない現物を施用する場合の一般的な基準であり、個別の施用に当たっては、土壌中並びに汚泥中の全亜鉛濃度等を勘案して施用限界量を算出する。
  • その他の主な留意事項
  • ア.原則として、連年施用は避ける。
  • イ.焼成汚泥は、重金属濃度が高いので、施用は避けることが望ましい。
  • ウ.カドミウム汚染及び水稲の倒伏防止のため、水田では使用しない。
  • エ.有効かつ適正な施用を行うため、適宜農業改良普及センター等関係機関の指導を受けることが望ましい。

(2)具体的な注意事項

  • ア.盛り土・客土に注意する
  • イ.肥料等の投入資材に注意する
  • ウ.ほ場自身の蓄積状態に注意する

肥料取締法に基づく登録や届出のあるものを使用する。個々の資材において「肥料としての基準」を満たしていても集積することで「土壌としての基準」を超過してしまうころがあり得る。

4.養分蓄積に注意!

農地には、作物収穫によって収奪される物質を補うとともに、化学性の改善等の目的を含めて様々な資材が投入されてきました。日本の農耕地土壌は、火山灰性の土壌が多くりん酸吸収係数が高い傾向にあるなどの難点が強調されてきましたが、ほ場によっては既に十分、あるいは過剰なレベルにまで蓄積している場合があります。土壌の成分バランスがくずれると、施肥効果が思うようにならないばかりでなく、様々な障害の発生にもつながりかねません。

資材投入量を減らすことには、なかなか勇気の要るものですが、資材費の軽減を含めて十分に検討することが必要な時代を迎えています。

5.過度な深耕にも注意!

深耕には作物の根張り、土壌排水性、蓄積成分の活用等様々な効果があります。最近は大型農機も普及したので、手軽にできるようになりました。

でも、深耕には「慎重さ」が大切です。あまり深いところの土を作土に混ぜてしまうと、作物の育つ環境が変化して思わぬ障害をもたらすことがあります。

基本は「深いところの土を徐々に肥えさせながら、少しずつ深くする」と心得ましょう。

6.土壌診断を見直そう

土壌の特性を知り、永続的に活かすことが営農の鉄則です。そして「土壌の特性を知り、変化に対処するための指針」が土壌診断。

上述の土壌中の成分バランスを確認して、適切な施肥管理を実施するために必須です。新たな資材を使う際には、事前・事後に診断することで、その効果を確認するのにも役立ちます。

ところで、土壌診断と言えば化学的な分析、と思いがちではないでしょうか。もちろん化学性は重要な要素です。でも、分析にはちょっと手間と時間がかかります。

一方で土壌断面の観察や物理性の診断は、現場ですぐできます。そして大切なのは、「どんな管理をした結果が今のほ場状況をもたらしているか」の見極めです。また、せっかく分析結果に基づき処方箋を書いたとしても、その結果がどうであったかの判断がなければ、本物の改善にはつながりません。やりっぱなしでは効果が薄れます。

表4_土壌診断の手順

診断する地域の概況把握(過去の調査結果などを調べておく)

聞き取り調査(調査するほ場の特徴,耕種概要,肥培管理など)

現地での観察と調査

採土(目的に合わせた採土)

理化学性の測定(必要な項目の分析)

診断結果の検討と処方箋の作成

土壌改善対策の実施と効果の確認

土壌診断はとても手間がかかり、また分かりにくいところのある技法ですが、前述のとおり営農の鉄則につながる王道です。

生産者の実施と評価を伴う土壌診断であれば、着実に営農改善につながり、指導対象農家又は地域に対する活動が展開しやすくなると考えるべきです。農林振興センターと農協との協力・分担体制の確立にも取り組みましょう。

7.地域の広がりを持って取り組んでみよう

農地の保全は地主の財産保全です。一方で農業生産の基盤保持や生活環境改善などの地域的な価値もある活動です。

侵食防止の活動などは、地域全体で取り組むことで効果が明確になります。そして、地域の生産者の意識を高めるためには、例えば地域的な土壌調査も効果的でしょう。市町村の理解と協力も重要です。

土壌保全の本来の価値を常に意識しながら、地域的な広がりを持たせることで、その歩みが着実になるのです。

初掲載:平成20年

担い手支援課普及指導室
上席普及指導員熊谷一秀

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所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

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