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更新日:令和3(2021)年12月17日

ページ番号:7459

促成キュウリでの効率的な炭酸ガス施用―低濃度長時間施用―

炭酸ガスの施用は、増収の見込める技術として、施用事例が徐々に増加しています。

図1は、冬季の施設内の炭酸ガス濃度の推移を示したグラフです。夜間は、施設が密閉され、作物や土壌微生物の呼吸等によって外気より濃度が高くなりますが、日中は換気によって外から導入される量よりも、作物の光合成によって吸収される量が上回るため、施設内の濃度は外気よりも低下します。

冬季の施設内の炭酸ガス濃度の推移

図1.冬季の施設内の炭酸ガス濃度の推移

注)場所:大網白里市、期間:平成30年1月19日から2月9日(この期間の平均値を24時間推移で示した)

土壌に有機物が少ない圃場ほど、日中の施設内の炭酸ガス濃度は低下しやすいため、堆肥等の利用がない養液栽培では、特に増収が期待できます。

1.低濃度長時間施用

低濃度長時間施用は、千葉県の川城ら(2009)がキュウリで開発した技術で、外気より少し高い400から500ppmを目標にします。冬季は外気温が低いため必要な換気量が少なく、天窓の開きは全開時の20パーセント以内であることが多くなります。この程度の換気であれば、外気よりやや高い濃度を目標に設定しても、実用的な施用効率に収まります。

表1.炭酸ガス施用が促成栽培キュウリの果実収量に及ぼす影響

区分

上物収量

(アール当たりのキログラム)

総収量

(アール当たりのキログラム)

炭酸ガス施用量(推定)

(アール当たりのキログラム)

低濃度長時間施用

1,002

1,126

170

無施用

648

749

0

注)品種:ハイグリーン21、定植日:2002年11月20日、収穫期間:2003年1月1日から3月10日

2.効率的な施用方法

(1)施用時期

日中の炭酸ガスが不足しやすい時期は、外気温が低く、施設が密閉される時間が長い11月から4月です。これ以外の季節は、収穫物の販売単価も安いため、経費を上回る効果を得るのは難しくなります。

(2)施用量

キュウリが十分に育った状態における晴天日の施用量は、10アール当たり1時間に3キログラム程度です。幼果の生理落果を抑える効果も期待できるので曇雨天でも施用します。曇雨天の施用量は晴天日の3分の1程度です。

(3)施用濃度

500ppmを基本としますが、それに固執する必要はなく、天窓の開度が大きいときは、設定濃度に達しなくても差し支えありません。また、天窓とカーテンが開いていない朝の時間帯は600から900ppmに設定することも可能です。ただし、高濃度のまま天窓を開放すると、炭酸ガスが漏出するので、天窓が開く前に500ppmまで低下するようにします。

(4)施用時間帯

開始時刻は概ね日の出頃からとし、夜間の炭酸ガス濃度が高いときは、開始時刻をこれよりも遅らせます。終了時刻は日没1から2時間前とします。

(5)制御方法

炭酸ガスの制御法には、濃度制御と時間(タイマー)制御があります。

濃度制御は、炭酸ガス濃度センサーを用いて予め定めた濃度に制御する方法で、センサーを組み込んだ機器が市販されています。

時間制御は、15分刻みで開始時刻と終了時刻を設定するプログラムタイマーを利用して行うものです。この方法では細かな施用量の調整ができないので、燃焼式発生器を炭酸ガス源に利用する場合は、サブタイマーを併用して間欠的に施用できるタイマーや専用機器を利用します。時間制御の場合も、温室内の炭酸ガス濃度を把握することが重要であるのは変わりません。ガス検知管や数万円の簡易な炭酸ガス濃度計が市販されているので、これらを利用して、定期的に炭酸ガス濃度をチェックします。

作物にとって必要な炭酸ガスの量は光合成量に比例するため、濃度制御より量のみの制御となる時間制御のほうが合理的と思われます。

3.草勢の調整

炭酸ガス施用による1シーズン(11月から4月)の増収は、10アール当たり5トン程度です。炭酸ガスを施用したのにうまく増収できない原因として、炭酸ガスの施用量がそもそも足りていない場合もありますが、光合成量の増加までは成功しても同化産物が葉に留まったままで(葉が厚く重くなっている)果実への転流が十分にされていない場合も多くあります。果実への転流を増加させるには、夕方から夜間の気温を高めることが効果的であり、併せて収量増に見合う量の追肥やかん水の追加が必要です。

引用文献

川城英夫・土屋和・崎山一・宇田川雄二.2009.低濃度二酸化炭素施用が促成栽培キュウリの収量に及ぼす影響とその経済性評価.園学研.8(4):445-449.

初掲載:平成30年11月

農林総合研究センター

野菜研究室

主任上席研究員

矢内浩二

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お問い合わせ

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