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更新日:令和3(2021)年5月13日

ページ番号:7444

黒皮種なしスイカ「ブラックジャック」の日焼け対策

1.はじめに

種なしスイカは、その栽培法が昭和17年にわが国で発表されましたが、栽培に手間がかかることや品質が劣ることなどから、国内での栽培が広がりませんでした。しかし、近年、品質や食味が向上した品種の登場により農家や一般消費者に受け入れられ始め、食べやすさやカット販売への適性などから年々需要は高まっています。特に銚子市では、インパクトがある縞模様がない黒皮の種なしスイカ「ブラックジャック」(ナント種苗株式会社)の生産を進め、地元量販店において「真っ黒すいかコンテスト」が開催されるなど、その評価を高めています。

しかし、「ブラックジャック」は果皮色が濃いため、果皮が色あせたりただれてしまう「日焼け」(写真1)の発生が多く問題となっています。そこで、遮光資材によって「日焼け」の発生を抑える方法を明らかにしました。

日焼け果

写真1_日焼け果

2.日焼けの原因

日焼けは、果実肥大期後半に直射日光により果皮の温度が上昇することで起こります。

「ブラックジャック」は果皮色が特に濃いので、表面温度が高くなりやすく、色あせが目立ちます。また、日焼けは単に高温と強日射の影響で多発するわけではなく、天候や栽培方法などの影響により草勢が弱まり、根からの吸水が不足して起こることが多いと考えられています。

「ブラックジャック」は、暑い時期の栽培に向く品種であることから、7月収穫のトンネル栽培が多く、日焼けの発生しやすい環境で栽培されています。

3.遮光の効果

(1)遮光方法の比較

2015年にパスライト(不織布、ユニチカ株式会社)、クールコート(吹付け遮光剤、大同塗料株式会社)、傘かけ(コピー用紙による果実の遮光)の3種類の遮光方法の効果を慣行栽培(無処理区)と比較しました(写真2)。遮光率は、傘かけ区が85パーセントで最も高く、クールコート区が50パーセント、パスライト区が25パーセント、無処理区が16パーセント(トンネルのビニールによる遮光率)でした。

各遮光方法

写真2_各遮光方法

パスライトとクールコートは、トンネルの南西側半分だけに処理し、すべての処理区で日焼けの発生しやすくなる授粉24から30日後に開始しました。果実の表面温度は、晴天日(7月13日13時30分から14時計測)には傘かけが31度で最も低く、次いでクールコートが38度、パスライトが39度、無処理が44度と高くなりました。2015年は草勢が弱い年であり、収穫前の5日間に曇雨天後の急激な晴天に見舞われ、無処理区では色あせと皮ただれを合わせて50パーセントの果実で日焼けが発生しました。しかし、いずれの遮光処理区とも日焼けは発生しませんでした(表1)。

ただし、クールコート区及び傘かけ区では、茎葉重が重く、空洞果が29パーセントと多くなりました。空洞果は規格外品となります。空洞果の発生は、草勢が強いと助長されることが知られています。空洞果の発生した株では、茎葉重と果重が正常果の株より重くなりました。果実の昇温抑制による果実呼吸量の低下や茎葉の遮光による蒸散抑制等によって草勢が強くなりすぎたことが考えられます。

このように、「ブラックジャック」では、過度の遮光は過繁茂と空洞果の発生を助長する恐れがあります。このため、パスライトなどの遮光率の低い被覆資材による日焼け対策が適すると考えられます。

パスライト被覆は、日焼け果防止の効果が認められ、トンネルバンドの下を潜らせて設置できるので作業性が良く、再利用も可能です。

表1 遮光がスイカの生育、日焼け・空洞果発生率及び糖度に及ぼす影響

表1 遮光がスイカの生育、日焼け・空洞果発生率及び糖度に及ぼす影響

  • 注1)露地トンネル、畝幅230センチメートル、株間90センチメートル
  • 注2)10アール当たり施肥は、化成8号133.3キログラム、BM苦土重焼燐50キログラム、苦土石灰66.7キログラム
    (窒素:リン酸:加里=10.7:28.2:10.7)
  • 注3)遮光方法:「パスライト」はトンネルフィルム上南西側にパスライト(遮光率10パーセント、幅100センチメートル)を被覆。「クールコート」はトンネルフィルム南西側に遮光塗布剤クールコート(80ミリリットル/平方メートル)を塗布。「傘かけ」は果実上部にA3コピー用紙で傘状に被覆。
  • 注4)2015年は、4月27日に定植、5月25から31日に授粉、6月24日に遮光開始、7月15から16日に収穫。各区7株計7果(果重・日焼け果は14果)2反復を調査。
  • 注5)2016年は、5月12日に定植、6月14から21日に授粉、6月27日に遮光開始、7月25から8月1日に収穫。各区7株6果(日焼けは14果)を調査。
  • 注6)2017年は、5月18日に定植、6月19から25日に授粉、7月6日に遮光開始、7月27日から8月1日に収穫。各区4株3果(果重・日焼け果は8果)4反復を調査。※は慣行区に対してt検定5パーセント水準で有意。

(2)天候の違いによる効果

2015年の試験で最も効果が優れたパスライトについて、2016年と2017年にその効果を確認しました(表1)。

前述のとおり2015年は、定植後の少雨や、果実肥大期後半の曇雨天後の晴天などにより、草勢が弱い年でした(無処理区の株当たり茎葉重:2.7キログラム)。2016年は、定植後に降水量が多かったものの、着果後が曇りがちとなり草勢は中程度でした(同:4.6キログラム)。2017年は、降雨が適度にあり、果実肥大期の前半までは特に好天に恵まれ、気温も高く、草勢は3年間で最も強くなりました(同:6.8キログラム)。このように、草勢の異なる条件でパスライト被覆の効果を確認しました。

2015年は、前述のように無処理区では50パーセントの果実で日焼けが発生しましたが、パスライト区では発生しませんでした。

2016年は、無処理区では色あせ7パーセント、皮ただれ18パーセントと高かったのに対して、パスライト区では色あせ4パーセントでした。両区とも果実重は7キログラム程度と大き過ぎず、空洞果は発生しませんでした。糖度はパスライト区の方が高くなりました。

2017年は、収穫1週間程前から曇りがちになった影響もあり、無処理区で皮ただれが3パーセント発生したのみでした。パスライト区は種子部で糖度が無処理区より有意に低くなりました。また、茎葉重と果重が重く、空洞果が25パーセントと高くなりました。

以上のように、3年間の試験の結果から、草勢が弱から中程度で収穫前に晴天となる状況で日焼けが発生しやすく、パスライト被覆による日焼け低減効果が高くなりました。一方、草勢が強く収穫前に日射量が少ないような状況では、遮光が糖度の低下及び空洞果の発生を助長してしまいました。

4.まとめ

以上のように、果実の日焼け防止には遮光が有効です。作業労力及び資材の再利用性を考慮すると、パスライトのように遮光率10パーセント程度の遮光資材をビニールトンネルの上に被覆することが適当です。弱から中程度の草勢で、生育後半に好天が予測されるような場合に、遮光による日焼け防止の高い効果が期待されます(表2)。

試験年度 草勢 収穫前天候 日焼け果 遮光による日焼け防止効果 注意点
表2 草勢と収穫前天候の違いによる日焼け果発生とその防止効果
2015 晴天多 -
2016 晴天やや多 -
2017 曇雨天多 糖度低下、過繁茂

初掲載:平成30年5月

農林総合研究センター水稲・畑地園芸研究所

東総野菜研究室

研究員

千吉良敦史

電話:0479-57-4150

 

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

電話番号:043-223-2911

ファックス番号:043-201-2615

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