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更新日:令和3(2021)年11月12日
ページ番号:7454
最近ではスーパーなどで、春から夏にかけても焼きいもが販売されるようになり、一年を通して「べにはるか」に代表される粘質系サツマイモの出荷が求められています。ここでは、サツマイモ貯蔵の基本と「べにはるか」の食味を低下させずに長期間貯蔵するためのポイントを紹介します。
品種により貯蔵性に難易があり、主力品種では、「ベニアズマ」が「やや困難」、「べにはるか」、「高系14号」、及び「シルクスイート」が「やや容易」です(表1)。
表1.主なサツマイモ品種の貯蔵性
貯蔵性 | 品種 |
---|---|
容易 | タマユタカ |
やや容易 | 高系14号、べにはるか、シルクスイート、べにまさり、アヤコマチ(カロテンいも) |
中 | パープルスイートロード(紫いも)、クイックスイート |
やや困難 | ベニアズマ、コガネセンガン |
注)農林水産技術会議技術指導資料「新品種活用による産地育成を目指したサツマイモの高品質生産技術・販売促進支援の手引き」(2015)から抜粋、一部改変。
長期貯蔵に適する健全いもの条件は次のとおりです。
サツマイモの好適貯蔵条件は、温度13から16度、湿度90から95パーセントです。
9度以下の長期貯蔵では変色や腐敗などの低温害が発生し、17から18度以上では萌芽が始まるため品質が低下します。また、湿度が低下すると両端が乾腐する乾燥害が発生します。収穫した翌年の夏まで貯蔵する場合は、断熱剤が設置され、エアコンが装備された専用貯蔵庫で貯蔵する必要があります。
「べにはるか」を6か月以上長期貯蔵すると、焼きいもの甘味が低下し、肉質が過度な粘質となる現象がみられます。そこで、貯蔵温度を13度、15度、17度とする3温度帯を比較したところ、次の結果が得られました(図1、図2)。
貯蔵中にデンプンの糖化が進むため、焼きいもの甘味の指標となる甘味度は高くなりますが、肉質の指標となる乾物中のデンプン含有率は低く、過度に粘質な「べっちゃり」した焼きいもとなりました。
貯蔵中のデンプンの糖化が適度に進むため、焼きいもの過度な粘質が抑えられ、甘味及び肉質ともに基準値以上でした。
サツマイモの好適貯蔵温度よりやや高かったため、デンプンの呼吸による消耗が激しく、肉質は粘質ぎみとなりました。
以上から、「べにはるか」の食味を低下させずに6か月以上長期間貯蔵するためには、貯蔵温度を15度前後とし、貯蔵湿度は90から95パーセント前後で管理するのが望ましいことが明らかとなりました。
図.1 6か月間貯蔵した「べにはるか」の焼きいもにおける糖含量及び甘味度
注1)収穫:平成24年11月13日(生育日数:170日)、調査日:平成25年5月23日
注2)甘味度=焼きいも100グラム中のショ糖含量+ブドウ糖×0.55+果糖+麦芽糖×0.35
注3)3糖総量は、ショ糖、ブドウ糖、果糖の合計値。
注4)図中の赤点線は、「べにはるか」の焼きいもの甘味を保証する甘味度基準値(下限値)である12.0。
図2. 6か月間貯蔵した「べにはるか」の焼きいもにおける乾物中のデンプン含有率
注1)収穫日及び調査日は図1と同じ。
注2)乾物中のデンプン含有率=焼きいも100グラム中のデンプン含量/(100-水分含量)×100
注3)図中の赤点線は、「べにはるか」の焼きいもの肉質を保証する乾物中のデンプン含有率基準値(下限値)である26.3。
初掲載:平成30年9月
農林総合研究センター
流通加工研究室
主席研究員 安藤利夫
電話:043-291-9993
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