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ホーム > しごと・産業・観光 > 農林水産業 > 農業・畜産業 > 普及・技術 > 千葉県農業改良普及情報ネットワーク > フィールドノート履歴一覧 > フィールドノート平成30年 > 10月出荷を可能にする鉢物トルコギキョウの品種と栽培法
更新日:令和3(2021)年6月25日
ページ番号:7440
鉢物の需要期は母の日を始めとする春と年末の2回に大別されますが、9月末から11月も値段が安定する時期で、市場からは秋需要に対応した出荷の要望が寄せられています。しかし、9月から11月出荷の作型は夏季高温期をまたぐため品質低下を招きやすく、秋需要に対応できる品目が少ない状況です。
トルコギキョウは切り花品種を中心に全国的に生産が増加している人気の高い品目です。切り花品種では年間を通して出荷できる作型が開発されていますが、鉢物品種では春出荷作型が中心で、他の時期の作型は殆ど検討されてきませんでした。そこで、10月出荷に適した栽培方法をご紹介します。
トルコギキョウは育苗期にストレスを感じると生育が著しく停滞してしまい、これをロゼットと呼びます(写真1)。
ロゼットを誘発するストレスの1つに高温が挙げられます。そのため、栽培期間が夏季高温期となる10月開花作型はロゼットが発生しやすく、安定した生産が行えません。ロゼットの発生は品種間差のあることが知られています。そこで、これまでに農林総合研究センターで春出荷に向く鉢物品種として選定してきた「サファイア」シリーズ(株式会社エム・アンド・ビー・フローラ)を対象に、10月開花作型におけるロゼット発生の品種間差を調査しました。
その結果、「サファイアピンクリム」は試験を行った3年間のいずれもロゼットの発生は無く、ロゼットの発生しづらい品種であることが明らかとなりました。一方で、「サファイアブルーチップ」及び「サファイアブルー」は、年次間差があるものの発生率が高く、ロゼットの発生しやすい品種であると考えられました(表1)。
写真1.トルコギキョウのロゼット
表1.トルコギキョウ「サファイア」シリーズにおけるロゼット発生の品種間差
10月開花作型では1鉢当たり1株で栽培すると株幅が狭く、花蕾数が少ない状態で開花してしまい、鉢物としてのボリュームが不足します。上記でロゼットが発生しづらい品種として選定した「サファイアピンクリム」は1株当たりの開花揃いが良い品種であるため、寄せ植えで鉢当たりのボリュームを改善できると考えられました。そこで、5号鉢に鉢当たり1株、3株及び5株植えした際の開花及び生育を検討しました。3株植え及び5株植えした鉢では1株毎の開花揃いに差は無く、鉢当たり3輪開花した際の株幅及び花蕾数を増加させることができました(表2)。
鉢当たりの植付株数 | 鉢当たり3輪開花日 | 草丈(センチメートル/鉢) | 株幅(センチメートル/鉢) | 株当たり花蕾数 | 鉢当たり花蕾数 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 10月14日±2.0 | 21.8±0.7 | 16.3±0.5 | 7.6±0.9 | 7.6±0.9 |
3 | 10月21日±2.1 | 19.3±0.7 | 23.4±0.4 | 8.5±1.1 | 25.5±3.1 |
5 | 10月19日±2.8 | 20.1±0.6 | 25.3±0.4 | 8.8±0.5 | 43.8±2.6 |
写真2.植え付け株数の違いが草姿に及ぼす影響
注)左から鉢当たり5株植え、鉢当たり3株植え
5号鉢で栽培した際の鉢と草姿のバランスを3株植えと5株植えで比較すると、3株植えではややボリューム不足でしたが、5株植えでは十分なボリュームが得られました。そのため、5号鉢で出荷を行う場合は5株植えが適していると考えらます(写真2)。
以上のことから、「サファイアピンクリム」はロゼットが発生しづらく、開花が揃いやすい品種であるため、1鉢に複数株を植え付けることで10月出荷に利用できる品種であると言えます。本試験では5号鉢での栽培のみを検討しましたが、4号鉢であれば1鉢当たり3株程度の植え付け数で鉢と草姿のバランスが取れると考えられます。1鉢当たりの植え付け株数が多くなると種子に掛かる経費が増加するため、単価と鉢サイズのバランスを考慮した生産を行いましょう。
初掲載:平成30年3月
農林総合研究センター・花植木研究室
研究員
中島拓
電話:043-291-0151
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