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更新日:令和3(2021)年6月25日
ページ番号:7437
カラーはサトイモ科の球根植物で、水を好む湿地性カラーと陸生の畑地性カラーに大別されます。湿地性カラーは南アフリカ原産で、白く大きい仏炎苞とまっすぐに伸びた茎の清楚で気品ある草姿が美しい切り花で(図1)、ブライダル用途に使用されることが多いのが特徴です。千葉県では君津市が産地となっており、豊富な地下水を掛け流してハウスで栽培しています。この地下水は年間を通して水温15度程度であるため、夏は冷房、冬は暖房の効果があり、地の利を生かした栽培が行われています。
湿地性カラーは収穫がピークを迎える3から4月の出荷調整作業が負担となっています。また、通常5月上旬に収穫が終了してしまうため、需要が多い母の日に十分供給できないという課題があります。そこで、収穫した切り花を貯蔵して出荷可能な状態で長期間保存する方法を検討したのでご紹介します。
図1.湿地性カラーのほ場の様子
湿地性カラー「ウェディングマーチ」を収穫後60センチメートルに切り揃え、仏炎苞を鮮度保持剤「ミラクルミスト」の250倍液又は500倍液へ瞬間的に浸漬しました(図2)。その後、蒸留水1リットルを入れたバケットに生け、気温5度の暗所で1日、8日及び15日間貯蔵しました。さらに、それぞれ5センチメートル切り戻して室温23度、相対湿度70パーセント、PPFD(※)1秒、1平方メートル当たり10マイクロモル、日長12時間の条件で日持ちを調査し、仏炎苞が萎凋、褐変又は変形した時点で日持ち終了としました。
※PPFDとは、光合成光量子束密度。光合成に関連する光環境を表す単位。
調査は2か所のほ場から収穫したカラーを1区1本、10反復で行いました。
図2.浸漬処理の様子
鮮度保持剤の処理濃度と貯蔵期間によって、貯蔵後の日持ちがどのように変わるかを表1に示しました。鮮度保持剤を処理することにより、貯蔵期間が1日の場合は1から2.5日、8日の場合は1から1.5日、15日の場合は1.5から2.5日程度日持ちが延長しました。
貯蔵期間が長くなると、鮮度保持剤を用いても日持ち期間は短縮する傾向にありましたが、250倍液で処理した場合はいずれの貯蔵期間においても慣行で行われている無処理で1日貯蔵のものに比べ日持ち期間は同等か長くなりました。
鮮度保持剤 | 濃度 | 貯蔵期間(日) | 日持ち期間(日) |
---|---|---|---|
ミラクルミスト | 250倍 | 1 | 9.1±0.18 a |
ミラクルミスト | 500倍 | 1 | 8.2±0.33 b |
無処理 | - | 1 | 6.4±0.16 c |
ミラクルミスト | 250倍 | 8 | 7.1±0.31 a |
ミラクルミスト | 500倍 | 8 | 6.5±0.31 ab |
無処理 | - | 8 | 5.5±0.27 b |
ミラクルミスト | 250倍 | 15 | 6.8±0.33 a |
ミラクルミスト | 500倍 | 15 | 5.8±0.13 a |
無処理 | - | 15 | 4.1±0.35 b |
このように湿地性カラーでは、鮮度保持剤を前処理で用いてから冷蔵貯蔵することにより、通常の出荷方法の場合、収穫後1週間程度の日持ちである切り花を、収穫してから15日後に出荷しても通常と同等の日持ち期間が得られることが明らかになりました。
初掲載:平成30年1月
暖地園芸研究所野菜・花き研究室
研究員
大坂龍
電話:0470-22-2962
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