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更新日:令和3(2021)年11月12日

ページ番号:7452

1年間常温保存した飼料用米の肥育豚と採卵鶏への給与

1.はじめに

本県における飼料用米の作付面積は年々拡大しています。飼料用米を家畜に給与する場合、コストの削減や、肉・卵等畜産物への付加価値等の利点があり、今後も需要の拡大が見込まれ、年間を通した利用が増えるものと考えられます。飼料用米を通年利用するにあたり懸念されるのが、飼料用米の長期保管による品質の低下です。仮に、保存した飼料用米を給与して家畜の発育や畜産物に影響がでた場合、飼料用米の低温保管や早期の利用が必要となり、生産者が利用しにくくなることが予想されます。そこで、1年間常温保存した飼料用米「夢あおば」を豚と鶏へ給与し、その影響を調査しましたので紹介します。

2.肥育豚への給与

(1)試験内容

三元交雑豚(去勢雄)の体重70から110キログラムの期間に飼料用米を給与しました。試験では飼料用米を籾または玄米の状態で1年間常温保存した古米と、新米を豚の養分要求量を満たすよう飼料設計し、通常の飼料であるとうもろこし主体の飼料との比較を行いました。飼料用米は玄米の状態で給与するため、給与直前に籾は籾すりして玄米の状態にしました。玄米は飼料用米破砕機で2ミリメートル以下に粉砕したものを飼料配合しました。

(2)試験結果

1年間籾または玄米の状態で保存した飼料用米配合飼料を給与した肥育豚は、通常のとうもろこし主体の飼料や新米の飼料用米を給与した肥育豚と比べて、発育や肉質は同程度の成績でした。

飼料用米を給与した肥育豚の枝肉

写真1.飼料用米を給与した肥育豚の枝肉

 

表1.肥育豚への飼料用米給与

区分 対照区 新米区 精米区 玄米区
1日平均増体重(1日あたりグラム) 848.8±37.9 907.7±81.7 985.8±179.4 940.0±55.7
110キログラム到達日齢(日) 151.2±9.1 147.7±7.3 144.4±10.4 147.2±9.4
肥育日数(70キログラムから110キログラム) 46.2±3.8 43.6±6.1 39.2±8.0 42.0±4.9
飼料摂取量(1日あたりキログラム) 3.03±0.01 2.99±0.02 3.01±0.03 3.03±0.01
飼料要求率 3.57±0.17 3.32±0.31 3.13±0.48 3.52±0.88
背脂肪(センチメートル) 対照区 新米区 精米区 玄米区
カタ 4.0±0.5 3.9±0.2 3.8±0.2 3.5±0.2
2.0±0.3 2.3±0.3 2.1±0.5 1.9±0.2
コシ 3.4±0.1 3.5±0.5 3.5±0.3 3.2±0.2
ロース断面積(平方センチメートル) 18.2±3.2 21.4±2.6 20.3±4.7 21.2±3.2

※平均値±標準偏差

3.採卵鶏への給与

(1)試験内容

平成27年産の籾または玄米を飼料倉庫内で1年間常温保存した古米と、平成28年産の籾または玄米である新米を、丸粒のままそれぞれ20パーセント程度配合し養分要求量を満たすよう調整した飼料を、とうもろこし主体飼料の対照と比較するため採卵鶏に280日間給与しました。

(2)試験結果

籾給与による飼料摂取量の低下と、飼料用米給与による卵黄色の低下、オレイン酸の増加傾向がみられました。しかしその他の産卵成績、卵質成績、卵黄中脂肪酸組成ともに古米と新米、とうもろこし主体飼料給与の違いによる影響はみられませんでした。

表2.産卵・卵質成績

区分 産卵率(パーセント) 平均卵重(1個あたりグラム) 産卵日量(1日1羽あたりグラム) 飼料摂取量(1日1羽あたりグラム) 飼料要求率 HU 卵殻強度(平方センチメートルあたりキログラム) 卵殻厚(ミリメートル) 卵黄色
古玄米 95.1 64.8 61.7 122.4A 1.98 91.72 3.82 0.357 7.46B
古籾 93 64.6 60.1 117.5B 19.6 93.53 3.67 0.355 7.27B
新玄米 95.7 65.5 61.3 123.2A 2.01 93.18 3.58 0.353 7.18B
新籾 91.2 64.3 58.7 118.0B 2.01 91.87 3.76 0.364 7.65B
対照 94.3 65.0 61.3 120.4AB 1.96 93.12 3.61 0.355 8.45A

※異符号間に有意差あり(P<0.01)

 

卵黄中脂肪酸組成

図1.卵黄中脂肪酸組成

 

採卵鶏試験の様子

写真2.試験の様子

 

4.おわりに

肥育豚および採卵鶏において、養分要求量を満たす飼料給与を行えば、1年間籾や玄米の形で常温保存した飼料用米でも、とうもろこしとの置き換えが可能ということがわかりました。飼料用米を給与する際、害虫の被害やカビの発生等がないよう適切な保管条件の下では、籾または玄米の状態でも1年間は常温保存して問題ないと考えられます。

 

初掲載:平成30年9月

畜産総合研究センター

養豚養鶏研究室

研究員 伊藤香葉

研究員 竹尾 駿

電話:043-445-4511

 

 

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

電話番号:043-223-2911

ファックス番号:043-201-2615

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