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更新日:令和3(2021)年7月1日

ページ番号:353806

畜産クラスター事業を活用した経営改善に向けて

~安房地域における新たな畜産振興の取組~

1.取組の背景

安房地域は「日本酪農発祥の地」と呼ばれ、酪農を一つの核として発展してきた地域です。しかし近年の酪農経営体の状況を見ると、平成15年には生乳出荷戸数371戸、出荷乳量61千トンであったものが、平成20年には244戸、48千トンに、平成25年には181戸、39千トンと減少していました。このまま直線的に減少すれば平成30年には生乳出荷乳量は31千トンを下回ることが懸念され、早急な対策が求められていました。

このような状況の中、平成26年冬に国から畜産農家と地域の畜産関係者(コントラクター等の支援組織、流通加工業者、農業者団体、行政)がクラスター(ぶどうの房)のように、一体的に結集することで、畜産の収益性を地域全体で向上させる取組に対して支援策を講じるとの情報がもたらされました。

そこで、安房地域では、安房農業事務所が中心となって地域の酪農家等畜産農家に対してこの情報を周知し、地域の畜産の課題を解決するための畜産組織、畜産クラスター協議会の設立について支援をしました。

その結果、平成27年1月、安房地域で千葉県みるく農業協同組合南部支所の組合員からなる協議会と5つの地域協議会が設立されました。

2.中心的な経営体を支援する体制づくり(畜産クラスター協議会の立ち上げ)

地域を取り巻く課題(地域の現状)を整理し、中心的な経営体が地域の畜産の収益性向上に向けてどのような取組をすべきなのか各地域協議会で検討しました。

課題としては、畜産農家が年々減少しており、後継者がいない農家もあることから、畜産業が産業として消えつつある。耕種農家も同じ現象にあり、耕種農家が耕作していた農地を畜産農家が担わなければ耕作放棄地が増える懸念がある。土づくり等に畜ふんたい肥は活用されているが、畜産農家がなくなれば耕種農家へたい肥の供給ができなくなる。食育、酪農業(牛乳ができるまで)を学習、体験する場がなくなる等があげられます。

この課題を解決していく取組として中心的な経営体が関係機関(安房農業協同組合、千葉県みるく農業協同組合南部支所、市町、地域酪農組合、家畜診療所、千葉県畜産総合研究センター、安房農業事務所等)に呼びかけ、畜産クラスター協議会の設立、畜産クラスター計画の作成をしました。畜産クラスター計画には収益性向上のための取組、中心的な経営体を含め各関係機関の役割分担等が記載されています。

写真1.畜産クラスター協議会

図1.畜産クラスター計画の推進図

3.畜産クラスター計画の進捗状況~施設整備等による生乳生産量の拡大~

(1)九重畜産振興協議会

館山市を活動拠点とする協議会で中心的な経営体は2戸。平成27年からWCS用稲の生産拡大、収穫面積拡大のため、フォレージハーベスタ等の機械を整備し、収穫面積35ヘクタールを目指して活動しています。また、この内、1戸の酪農経営体において平成28年に牛舎整備が実施され、目標の経産牛頭数190頭、生乳出荷量2,052トンに向けて収益性の向上の取組が行われています。

写真2.畜産クラスター事業で整備した牛舎施設・機械

写真3.畜産クラスター事業で整備した牛舎施設・機械

(2)朝夷南地区酪農振興協議会

南房総市千倉町を活動拠点とする協議会で中心的な経営体は2戸。平成28年に牛舎及びたい肥乾燥処理施設の整備が実施され、目標の経産牛頭数90頭、生乳出荷量810トン、たい肥供給量300トンに向けて収益性の向上の取組が行われています。

写真4.畜産クラスター事業で整備した牛舎施設・機械

写真5.畜産クラスター事業で整備した牛舎施設・機械

(3)JA安房和牛振興協議会

JA安房和牛部会を母体とする協議会で中心的な経営体は3戸。平成28年に牛舎整備が実施され、繁殖和牛頭数の増頭にともなう、子牛販売頭数、千葉県産の和牛の頭数(肥育頭数)の増加による収益性の向上の取組が行われています。

写真6.JA安房和牛振興協議会における畜産クラスター事業で整備した牛舎施設

(4)海発地区畜産振興協議会

南房総市和田町海発地区を中心に活動している協議会で中心的な経営体3戸。平成27年から飼料作物の生産拡大、稲わら収集面積拡大のため、収穫機械、防除機械等の機械を整備し、収穫面積35ヘクタールを目指して活動しています。

(5)南三原酪農振興協議会

南房総市和田町南三原地区を中心に協議会で中心的な経営体は2戸。平成28年、29年に牛舎及び搾乳ロボット等が整備され頭数の増頭、平成27年から飼料作物等の生産拡大のため機械等を整備し収穫面積30ヘクタールを目指して活動しています。

写真7.畜産クラスター事業で整備した牛舎施設・機械

写真8.畜産クラスター事業で整備した牛舎施設・機械

 

写真9・畜産クラスター研修会

4.地域への技術普及推進~研修会の開催~

畜産クラスター協議会では技術や取組を安房地域に波及させることを目的に研修会を開催しています。

平成29年2月2日は、ぼうそう農業共済組合の会議室を会場にして、協議会の取組について発表するとともに、九重畜産振興協議会で現地研修会を開催しました。また、朝夷南地区酪農振興協議会の施設については2月13日に現地研修会を開催し、技術の普及について推進を図っています。

また、7月24日は、南房総市丸山公民館の会議室を会場にして、畜産クラスター事業を活用した酪農振興について意見交換を実施するとともに、南三原酪農振興協議会の施設や搾乳ロボット等の先進技術について現地研修会を開催し、技術の普及を図りました。

写真10.畜産クラスター研修会

写真11.現地研修会

 

初掲載:平成30年1月

安房農業事務所改良普及

主任上席普及指導員

渡辺聡

電話:0470-22-8132

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

電話番号:043-223-2911

ファックス番号:043-201-2615

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