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更新日:平成29(2017)年11月21日

5月どりダイコンのべたがけ栽培法

1.はじめに

千葉県のダイコンは、10月~6月どり栽培が中心であり、その中でも5月どりは、出荷量が多く、市場占有率も高い作型です。これまで5月収穫のダイコンはトンネル被覆により栽培されてきましたが、省力化や晩抽性品種の登場などにより、近年ではべたがけ栽培が増えています。しかし、一般的に春どりは抽台の多発しやすい作型です。ダイコンは、多少の抽台であれば食味への影響は少ないものの、葉付きの出荷で花茎が目立つようでは問題になります。そこで、べたがけによるダイコンの安定生産技術について解説します。

2.ダイコンの抽苔特性とべたがけ被覆下の環境

ダイコンは、一定期間、15℃以下(0~10℃の効果が高い)の低温に遭遇する(低温感応)と花芽が分化し(春化)、花芽分化後の高温・長日条件で抽台が促進されます。一方、低温感応後に19℃以上の高温に遭遇すると、低温感応効果が打ち消され、花芽分化は進まなくなります(脱春化)。脱春化は、温度が高く、遭遇時間が長いほど、大きな効果があります。

当研究室において、2014年の2月20日から1か月間、トンネル内及びべたがけ被覆下の気温を計測したところ、トンネル内では、最高気温が30℃を超え、19℃を超えたのは1日平均6.6時間であったのに対し、べたがけでは最高気温が25℃程度、19℃以上は1日平均3.8時間しかありませんでした。また、「耐病総太り」(タキイ種苗)で行われた試験(千・斎藤、2003)では、30℃の高温が1日6時間であれば、低温処理した18時間のうち28~88%が脱春化されますが、べたがけ栽培に近い24℃4時間では、低温処理した20時間のうち4~14%しか脱春化されないと推計されています。

したがって、べたがけ栽培ではトンネル栽培に比べて抽台の危険性は高まるため、品種、播種時期及び資材を的確に選ぶ必要があります。

3.べたがけ栽培に適した品種とべたがけ方法の違いによる抽苔抑制

(1)適品種とその特性

2014年~2017年に実施したべたがけ栽培に適した品種選定試験で、「トップランナー」(タキイ種苗)と「蒼の砦」(ナント種苗)を選定しました。2014年の試験(パスライト被覆)では2月4日、10日及び25日に播種したところ、「トップランナー」はそれぞれ抽台率が8.3%、4.2%及び0%でしたが、「蒼の砦」はすべて抽台しませんでした。2016年と2017年では、2月中旬の播種で両品種とも収穫適期にほぼ抽台の発生はありませんでした。

一方、2015年は他の年と比べて著しく抽台の発生が多い年でした。この年は播種後に日照が少なく低温遭遇時間が長く、その後の好天で抽台が促進されたと考えられます。2月13日の播種でほとんどの品種の抽台率が50%を超える中、「蒼の砦」は平均根重1,571gと1週間ほど収穫適期を過ぎていたものの抽台率は13%に抑えられました。

両品種の特長として、「トップランナー」は、晩抽性であり、揃いが良く、低温時にも伸張性が良く短根になりにくい品種です。「蒼の砦」は極晩抽性であり、肌がきれいで揃いと尻詰まりの良い品種です。また、この両品種は、他の品種と比べて黒斑細菌病などの病害の発生が少ない傾向がみられました。

栽培上の注意点としては、「トップランナー」は収穫が遅れると根長が長くなりすぎることがあります。「蒼の砦」は、低温期に栽培すると短根になることがあり、収穫が遅れると肩部の割れや調整作業中の割れが起こりやすくなります。また、両品種とも収穫遅れは、抽台や病害の発生を助長するので適期収穫を心掛けます。

 

写真1.「トップランナー」

写真2.「蒼の砦」

(2)べたがけ資材と被覆方法

抽台を防ぐためには、昇温性の高い資材を使用することが重要です。4年間の試験の結果、1重被覆の時はパスライトによる被覆で高い抽台防止効果が得られました。パスライトは寒い時期には、通気性の高いベタロンよりも最高気温が高くなり、脱春化が起きやすいと考えられます。2重被覆では、ベタロンの上にパスライトを重ねることで高い効果が得られています。パスライトの1重被覆に比べて、低温感応が強くなる0~10℃に遭遇する時間が1日当たり約1時間減少し、被覆下の最高気温が0~5℃高くなります(2015年2月15日~3月15日計測)。2015年の試験では、2月13日、19日及び25日の播種のとき、パスライトの1重被覆では抽台率がそれぞれ19%、47%及び44%であったのに対して、パスライトとベタロンの2重被覆では6%、19%及び6%となりました(品種:トップランナー、25日の播種では収穫が遅れ抽台が進んだ)。特に2月中旬播種においては、2重被覆を行うと、抽台の発生しやすい年でもその発生を抑えることができます。

4.べたがけの経営試算

トンネル栽培に比べて、1重被覆のべたがけ栽培では、1作当たりの資材費は半分強、作業時間は1月7日程度となり、資材費と作業労賃を合計したコストは4割と、経営上有利になると言えます。一方で、2重被覆では、ベタロンが高価であるため、資材費と作業労賃を合計したコストは8割と、1重被覆ほど大きなメリットがありません。しかし、トンネル栽培では、重いパイプの設置は重労働であり、この作業を省略できることにより、軽労化につながるメリットはあります。

 

コスト試算

表1.トンネル栽培と比較したべたがけ栽培におけるコストの試算(10a当たり)

注1)マルチ張り、播種作業は含めない

2)作業時間は「経営収支試算表(平成8年)」や研究室での計測から試算した(片づけには設置の半分程度の労力がかかるものと、トンネルは換気作業も含めた)

3)労賃は1,000円/時と仮定した

 

5.まとめ

2月中旬播種(5月中旬収穫)では、「蒼の砦」を使用することで1重被覆のべたがけ栽培が可能です。「トップランナー」を使用する場合は2重被覆の方が安心です。2月下旬播種(5月中下旬収穫)では、両品種とも1重被覆で栽培可能です。

なお、香取市や山武市など内陸部の地域では、当研究室のある旭市飯岡地区よりも気温が低いため、これよりさらに1~2週間播種を遅らせる必要があります。逆に銚子市の沿岸部など、温暖な地域では1週間程度播種を早めても栽培可能と考えられます。

 

引用文献:千春鎭・斎藤隆(2003)新指標“花成強度”を用いたダイコンの春化中の高温による離春化程度の明確化,生物環境調節41(4),353-359

初掲載:平成29年11月

農林総合研究センター水稲・畑地園芸研究所

東総野菜研究室

研究員千吉良敦史

電話:0479-57-4150

 

よくある質問

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

電話番号:043-223-2911

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