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更新日:令和元(2019)年11月18日
ページ番号:343542
水田農業では、現状の米政策である水田活用の直接支払交付金等の活用により、米の生産調整が進んでいます。特に、ホールクロップサイレージ用稲(以下、WCS用稲と記述)の導入は、畜産農家には、地域内で生産される安定した品質と価格の粗飼料が入手できるというメリットがあり、稲作農家にとっては、所得確保や作期分散による安定した稲作経営が可能になります。
本稿では、夷隅地域の取組事例を参考に、WCS用稲導入にあたっての留意点について紹介します。
水田活用の直接支払交付金の戦略作物助成、耕畜連携助成等の活用によるWCS用稲では、主食用米以上の収入確保が出来ます(図1)。収入から生産に係る費用(物財費)を引いた所得では、表1のとおり、WCS用稲+牧草では、主食用米と比較して、34,167円/10a多くなります。
表1主食用米とWCS用稲+牧草との所得比較
WCS用稲では、収穫・乾燥・調製作業が省力化できるため、その労力を利用して主食用米等の規模拡大、水田裏作への園芸品目導入につなげられます。
稲作農家がWCS用稲の栽培を計画した場合、地域内での生産及び利用に関する調整が必要です。そのため、いすみ市内では、酪農家、稲作農家、コントラクターを構成員とした連携会議を開催し、その中で、粗飼料としての需要量(利用量)とWCS生産量、収穫作業受委託についてお互いに確認し合い、市域を範囲とした、当年度のWCSの生産・販売、利用に関する計画づくりを進めています。
前記3者が連携することで、地域内資源の循環体系が構築されました(図2,図3)。
図2夷隅地域における生産体制
図3稲WCSと牧草の生産流通体系
WCS用稲では、収穫作業に大型機械を使用するため、排水性がよく作業しやすい大区画水田が望まれます。大型機械が入りにくい水田では、飼料用米を導入したほうがよいと考えられます。また、効率的な作業を進めるためには、水田を集約していく(団地化)ことも重要です。
いすみ市では、WCS用稲の品種として、約70%がコシヒカリを選定しています。
主食用品種であるコシヒカリは、少ない施肥量でもよく伸びる品種であること、主食用品種のため、種子の確保が容易であること、主食用品種の中で茎葉収量が多く栽培しやすいということから選定されています。サイレージ化した製品では、酪農家から、茎葉が柔らかく嗜好性が高いという評価を得ています。
専用品種としては、茎葉型専用品種の「たちすずか」「リーフスター」が約6%栽培されています。茎葉収量が多いという特徴等があり、また、晩生品種のため、作期分散が可能なため導入されています。
品種の選択は、稲作農家の規模やWCS収穫後の園芸品目導入(食用なばな等)の有無により選択されています。
長所:少ない施肥量で草丈が伸びるので、低コストで生産することができます。種子の休眠性が浅いので、早期播種(4月中旬以前)が可能です。
短所:WCS用稲の収穫適期(移植時期にもよりますが、概ね7月下旬~8月上旬)である乳熟期から収穫が遅れると、倒伏しやすい。
長所:施肥量が多くなるものの、安定多収を図ることが出来ます。収穫適期から刈り取りが遅れても倒伏しにくい。
短所:施肥量が多くなる(窒素成分で10a当たり10kg以上)ため、肥料代がコシヒカリよりもかかります。種子の休眠性が深いため、4月下旬以降に播種する必要があります。
WCS用稲では、玄米ではなく、茎葉を収穫する品目になるため、使用できる農薬や使用時期に制限があります。最新のWCS用稲に使用可能な農薬を確認ください。
初掲載:平成28年10月
夷隅農業事務所改
改良普及課いすみグループ
普及指導員
小川剛史
電話:0470-82-2213
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