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更新日:令和元(2019)年7月22日
ページ番号:7376
アカスジカスミカメ(写真1)は斑点米(写真2)を発生させ、玄米の品質低下を引き起こす「斑点米カメムシ」の一種です。1等米の格付けを得るためには、斑点米を含む着色粒の混入率を0.1%未満に抑える必要があります。本種による斑点米被害は、千葉県では平成10年以降に増加し、防除手法の確立が求められました。農林総合研究センターでは、本種の生態解明や被害解析により、効率的な防除技術の確立に取り組みました。
写真1アカスジカスミカメ(体長4-5mm)
写真2アカスジカスミカメによる斑点米(上から1・2段目:頂部斑点米、3段目:側部斑点米、4段目:正常)
本種が被害を増加させる条件として、籾殻に隙間のある「割れ籾」(写真3)の多発生があります。本種はクモヘリカメムシなどのように籾殻を貫通して玄米を吸汁することができず、割れ籾の隙間から吸汁するためです。割れ籾の発生は、籾の発育期間や玄米肥大期の気象条件の他、品種による差が大きく、「あきたこまち」では「コシヒカリ」、「ふさおとめ」、「ふさこがね」よりも発生が多くなる傾向があります。割れ籾が発生しやすい条件が認められる、または予想される場合には、穂揃期の防除に加えて追加防除を検討する必要があります。
一方、本種の水田への侵入量が少ない場合は、割れ籾の多少に関わらず被害が多発する危険性は低くなります。出穂期における調査で、すくいとりでは20回振りで1頭、フェロモントラップでは1週間の設置で3頭以上の捕獲数が、穂揃期防除が必要となる基準となります。
写真3割れ籾(写真中の丸印)
本種は主に雑草地で暮しています。イタリアンライグラス、メヒシバなどのイネ科や、イヌホタルイなどのカヤツリグサ科の穂があると増殖しますが、イネで増殖することはまれです。そのため、水田周辺や水田内で、発生源となる植物の穂が出ないように管理することが重要です。水田への侵入は、イネの出穂期に始まり、発生源に近いほど侵入量は急激に多くなります(図1)。侵入量を抑えるためには、あらかじめ発生源となる雑草を防除しておくことが必要です(図2左図)。イネの出穂と同時に除草すると、そこにいたアカスジカスミカメを水田に追いこんでしまう恐れがあります(図2右図)。
図1発生源およびその周辺の水田におけるアカスジカスミカメ捕獲数
注1)水田の出穂期から10日間の間に4回行った20回振りすくいとり調査の合計値を示す
注2)0メートルは発生源における捕獲数を示す
図2発生源とそれに隣接した水田におけるアカスジカスミカメ捕獲数の推移
注1)図中の点線はイネの出穂期、矢印は発生源における除草を示す
近年、水田周辺には耕作放棄地などアカスジカスミカメの発生源が増加していますが、地域が連携して適切な発生源管理を行うことで、被害と薬剤使用量の低減に繋がることが期待されます。
初掲載:平成28年7月
農林総合研究センター
病理昆虫研究室
研究員
武田藍
電話:043-291-9991
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