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更新日:令和元(2019)年11月28日

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果樹カメムシ類の発生数を予測してビワの被害を未然に防ぐ

1.はじめに

南房総地域(南房総市、館山市、鋸南町)のビワ栽培では、果樹カメムシ類による被害が大きな問題となっています(写真1)。被害は、果実が吸汁されて果肉が崩壊し表面がデコボコになるもので、年によっては、ビワ園で収穫されるほとんどの果実が出荷できなくなるような大被害となることもあります。ここでは、千葉県農林総合研究センター暖地園芸研究所が開発した、被害抑制効果の高い二重果実袋の利用と、果樹カメムシ類の発生数の予測技術とを組み合わせた防除法を紹介します。


写真1_果樹カメムシ類の種類と加害されたビワ果実
左上_チャバネアオカメムシ、右上_被害果実、左下_クサギカメムシ、右下_ツヤアオカメムシ

2.二重果実袋で果樹カメムシ類からビワを守る

ビワの果実は果皮が弱く傷みやすいので、果実一つ一つに紙袋を被せることで、風ズレや当たり傷、病気や害虫等様々な障害を防いでいます。また、ビワは傾斜地で栽培されることが多く、農薬散布が難しいことから、袋掛けは病害虫防除に有効な技術です。しかし、果樹カメムシ類はこの袋の上からも吸汁するので、発生が多い年は、袋を被せただけでは被害を抑えることができません。
そこで千葉県では、メーカーと連携して果樹カメムシ類の吸汁を抑えるための二重構造の果実袋を開発しました(写真2)。実際にその二重果実袋を使用すると、通常の果実袋を使用して殺虫剤を2回散布した場合と同等の被害抑制効果が得られるので、対策として非常に効果が高いことが分かります(図1)。これは、二重果実袋の外側の袋はこれまで使ってきた通常の袋と同様の材質ですが、内側に袋があることで外側の袋と果実の間に空間ができることやその材質も硬めの紙になっていることから、果樹カメムシ類が吸汁しにくくなっているためと考えられます。しかし、二重果実袋は通常の袋に比べて価格が高く、袋掛け作業にも時間がかかり生産者の負担も増えてしまうので、防除の必要な年だけ使うことができれば最も経済的です。

写真2_二重果実袋の外側(左)と内側(右)

図1_殺虫剤散布回数と袋の種類による販売できない果実の割合の違い
注)1回目は5月中旬にアドマイヤーフロアブル2,000倍液、2回目は5月下旬にテルスター水和剤1,000倍液を散布した(暖地園芸研究所、平成20~23年)

3.果樹カメムシ類の発生数を予測する

実際には、果樹カメムシ類は発生が多い年と少ない年との差が非常に大きく、発生が少ない年には通常の袋を使用しても、ビワにはほとんど被害がありません。したがって、果樹カメムシ類が多発生する年だけ二重果実袋を使うようにします。
果実袋の注文は前年の秋になるので、通常の果実袋を購入するか二重果実袋を購入するかの判断に必要な果樹カメムシ類の発生数は、前もって予測しておく必要があります。
果樹カメムシ類はビワ園に1年中生息しているのではなく、夏にスギ林等で繁殖し、翌年の春に周辺のビワ園に飛来します。そこで、果樹カメムシ類が繁殖する際のエサとなるスギの球果の生産量に着目したところ、スギの球果が多く実るほど、翌年に発生する果樹カメムシ類の数も多くなることが分かりました。球果の量は、その年の春に飛んでいた花粉の量から判断できるので、結果的に「スギ花粉が多い年の翌年は果樹カメムシ類の発生が多い」ことになります。スギ花粉の情報は当センター森林研究所の協力により、毎年正確なデータを得ることができます。
この技術によって、毎年秋には、翌年の果樹カメムシ類の発生数が多いか少ないかがおおよそ分かるようになりました。主要な果樹カメムシ類の中で、例年、発生割合が高いチャバネアオカメムシでは、本技術を利用した翌年の発生数予測値が実際に計測して得られた値とほぼ合致していることが実証され(図2)、秋の時点で翌年春に使用する二重果実袋を準備するべきかどうかの判断ができるようになりました。

図2_チャバネアオカメムシの発生数の実測値と予測値の年次別推移
注)毎年4月から7月にかけての誘殺数累積値である

4.おわりに

果樹カメムシ類の発生数予測は病害虫発生予察情報として公表されます。なお、この予測は南房総地域全体での傾向を表しており、実際の発生数は地域の中でもばらつきますので、各ビワ園で毎年の傾向と照らし合わせることが必要です。
二重果実袋は通常の果実袋と比較して被害抑制効果は高いですが、ビワ園によっては果樹カメムシ類が集中して発生し、吸汁を防ぎきれずに被害が激しくなる場合もあるので、他の防除手段と併用することが必要となります。


初掲載:平成28年10月

農林総合研究センター
暖地園芸研究所
生産環境研究室
研究員
清水健
電話:0470-22-2963

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

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