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更新日:平成31(2019)年1月21日
ページ番号:7360
現在、円安、生産地の天候状況や新興国の需要増加などにより、そのほとんどを輸入に頼る濃厚飼料原料や輸入乾草の価格が高騰し、酪農における生産費の約半分を占める飼料費の高止まりが続き、経営を圧迫しています。このような中で自給飼料生産は飼料費を抑制し、飼料の安定的な確保において重要な要素になっています。
本県の生産現場ではトウモロコシの単播栽培とトウモロコシ・ソルガム混播栽培が普及しています。ソルガムについては適用できる除草剤が少なく、また嗜好性がトウモロコシよりやや劣るとして、県内でもトウモロコシの二期作にチャレンジする事例を目にするようになりました。畜産総合研究センターで実施した試験の中で見えてきた二期作栽培のポイントを御紹介します。
二期作栽培では、二期作目の播種を8月上旬までに行わないと収穫までに熟期が十分に進みません。そのためにも、一期作目はRM100前後の品種を用いて「4月上旬播種~8月上旬までの収穫」とすることが重要です(表1)。単播で一作の体系よりも1カ月程度播種が早いので、早めに堆肥散布等の圃場作業を行ってください。本県では、一期作目用としてニューデント101(系統名:LG3457)を奨励品種に指定しています。
表1一期作目試験の播種日、収穫日と乾物収量(H24~26年度)
表中太字は7月中、太字斜体は8月上旬の収穫を示す
生育ステージは0未乳熟1乳熟2乳熟後期3糊熟前期4糊熟期5糊熟後期6黄熟前期7黄熟期と表示
乾物収量は栽植密度7692本/10aの栽培試験の数値(kg/a)
RM106以上の5品種は平成26年度のみのデータのため参考値
二期作栽培の二期作目は雑草とトウモロコシの競争になります。そのため一期作目でしっかりと雑草を防除して、その種子の落下や多年生雑草の繁殖を防いでおく必要があります。一期作目は播種が4月上旬と早いため、気温の関係で雑草の発生までに時間的余裕が比較的あるので、ゲザノンゴールド等で土壌処理をしましょう(当センターでは播種後発芽前の4月10日前後に処理)。それでも雑草が生育したらワンホープ乳剤やアルファード液剤等の生育期処理剤を適切な時期に使うようにしましょう。
※農薬は初掲載(平成28年1月)時点の登録内容をもとに作成しております。農薬の使用に当たっては、ラベル及び最新の登録内容を確認し、安全に使用してください。
4月上旬にRM100前後の品種を播種すれば7月下旬には糊熟期程度まで生育が進み、収穫が可能ですが、播種が遅れれば未熟な状態で収穫せざるを得ません。乳熟期程度まで生育していれば糖度は十分に上がっていますが、水分が高いので不良発酵の懸念があります。サイレージ調製の基本に立ち帰って、十分な踏圧と早期密封、土砂の混入を避けること、ロールベール調製であれば高密度での梱包を心がけてください。また地下サイロを使用する場合は収量が少し低めになりますが、RM90前後の極早生品種を用いて、収穫までになるべく生育を進めて水分を下げることで排汁を減らす事も有効です。
当センターの試験では8月上旬の播種であれば11月下旬には糊熟期~糊熟後期まで生育が進みますが、8月中旬の播種では12月上旬でも乳熟期程度までしか生育が進みません(表2)。トウモロコシのメリットである子実の収量を得るためにも8月上旬までの播種を心がけてください。また生育期間中の台風の影響は避けられません。「遅播き」「二期作用」と表示されている耐倒伏性の高い品種を用いてください。本県では二期作目用奨励品種としてなつむすめ(系統名:九交128号)を奨励品種に指定しています。
表2二期作目試験の播種日と収穫日(H23~26年度抜粋)
生育ステージは0未乳熟1乳熟2乳熟後期3糊熟前期4糊熟期5糊熟後期6黄熟前期7黄熟期と表示
乾物収量は栽植密度7692本/10aの栽培試験の数値(kg/a)
全試験のうち6月、7月播種と1年しか試験していない品種を除外
一期作目収穫から二期作目播種までは時間的余裕が少ないので効率的な作業が求められます。不耕起播種機(写真1)を用いることによって、作業時間が大幅に短縮されますので効率的な作業が可能となります。当センターでは、不耕起播種機を用いた場合、播種後にマニアスプレッダーで堆肥を散布し、ディスクハローなどで浅く覆土しています。
写真1不耕起播種機
一期作目のところでも触れましたが、二期作目は雑草との競争になります。トウモロコシは種子からのスタートなのに対し、圃場に残っている雑草はすでに根を張っていますから、雑草が優勢になってしまいます。二期作目の収量を確保するためにも一期作目で防除しきれなかった雑草を再度防除しましょう。不耕起播種機を用いるのであればラウンドアップマックスロードを、ロータリー等で耕起してから播種するのであればゲザノンゴールドを播種翌日に散布しましょう。二期作目は播種から3日程度で地表に出芽しますので、計画的かつ迅速な作業が求められます。特にラウンドアップマックスロードは出芽後のトウモロコシには厳禁です。
※農薬は初掲載(平成28年1月)時点の登録内容をもとに作成しております。農薬の使用に当たっては、ラベル及び最新の登録内容を確認し、安全に使用してください。
8月上旬に播種すれば11月下旬には糊熟期~糊熟後期まで生育が進みますが、どうしても水分が高くなってしまいます。一期作目でも触れましたが、水分が高ければ不良発酵の懸念があります。また地下サイロを使用する場合は排汁処理の問題があるので、なるべく水分を下げておきたいところです。ソルガムの立毛保存と同様にトウモロコシも霜にあてて水分を低下させることが可能です。平成24年、26年の当センターの試験では8月上旬播種のトウモロコシは12月10日前後で乾物率が30%程度まで上昇します(図1・図2)。葉が枯れて多少見た目は悪くなりますが、しっかりと水分を低下させましょう。
図1平成24年8月6日播種乾物率の推移
図2平成26年8月5日播種乾物率の推移
以上、これまでの畜産総合研究センターでの試験から二期作栽培を行うに当たってのポイント7項目について記してきました。二期作栽培自体がまだ新しい技術で、十分に検討しきれていない面もあります。今後皆様が二期作栽培を行う際に問題点、疑問点等ありましたら本技術を確立するためにもお気軽にご相談ください。
初掲載:平成28年1月
畜産総合研究センター
企画環境研究室
上席研究員
青木大輔
電話:043-445-4511
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