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更新日:平成30(2018)年5月9日
ページ番号:7326
地球温暖化やヒートアイランド現象による都市部の気温上昇の抑制対策として、建物の屋上や壁面の緑化が注目されています。マット植物は、ヒメイワダレソウなどの植物を4センチメートル程度の薄い土層で栽培したもので、軽量かつ施工が容易なことから、都市緑化素材として導入が進んでいます。最近では、さらに施工を容易にするためにマット状の植物をロール状に形成したロールマットが注目されています。一方、ロールマット、マット植物に共通の問題点として、土層が薄く保水性に劣り施工後の水管理に手間がかかることが指摘されていました。そこで、保水性を改善した培養土を用いたロールマット生産方法を開発しました。本稿では、これまでもマット植物として需要の多いヒメイワダレソウを用いたロールマットの生産方法を紹介します。
培養土は、赤土、ピートモス、パーライトをそれぞれ2対1対1の体積比で混合したものを用います。この培養土に保水資材であるフェノール樹脂発泡体(写真1)を20%混合すると保水性が高まります(表1)。注意点として、フェノール樹脂発泡体を混合した培養土は強酸性になるため、炭酸カルシウムを混合しpHを6.0程度に調整する必要があります。
表1.培養土へのフェノール樹脂発泡体の混合がヒメイワダレソウロールマットの保水性と枯死率に及ぼす影響
フェノール樹脂 発泡体混合率(%) |
乾燥処理11日後の 土壌水分減少率(%) |
乾燥処理15日後の 枯死面積率(%) |
---|---|---|
0 |
91.7 |
70 |
20 |
82.7 |
25 |
注1)混合率はフェノール樹脂発泡体(粉状)の体積当たりの混合率
注2)乾燥処理はロールマットをハウス内で無灌水で管理した
注3)土壌水分減少率=(乾燥処理開始時土壌水分含量-調査時土壌水分含量)/処理開始時土壌水分含量×100
写真1フェノール樹脂発泡体
ヒメイワダレソウロールマット(縦25センチメートル×横100センチメートル)に適する土層の厚さは、重量と保水性の面から3センチメートルです。そこで、平らな地面にポリシートを敷き、その上に角材を用いて木枠(縦25センチメートル×横100センチメートル×深さ3センチメートル)を組み上記の培養土を充填します。
10月の完成を目指す場合、定植は5月中に行います。ヒメイワダレソウ苗は、2~3節長さ5センチメートル程度に整えたものを用います(写真2)。この苗を株間8センチメートル程度でおおむね1平方メートル当たり150株の密度で定植します。また、定植の手間を省くため苗のばら播きも可能です。ばら播きをする場合は、枠内に5センチメートル程度に整形した苗約30グラムを均一にばら播いた後、出荷用カゴトレイなどを用いて苗を培養土に密着させます(写真2)。約1か月後苗が活着したらカゴトレイを取り除きます。
写真2ヒメイワダレソウ苗と養生中の枠圃場
注)左:整形したヒメイワダレソウ苗、中央:木枠内にばら播かれたヒメイワダレソウ苗、右:出荷用カゴトレイを乗せ養生している枠圃場
写真3枠圃場内で密に生育したヒメイワダレソウとロールマット
注)左:定植4か月後の枠圃場、中央:枠圃場内で密に生育したヒメイワダレソウ、右:枠圃場から取り外したヒメイワダレソウロールマット(縦25×横100センチメートル、重量6キログラム)
ヒメイワダレソウロールマットを作成する時に保水資材を培養土に混合することで、作業性の向上に加えて、施工後の水管理労力の軽減など優れた特性を併せ持つ緑化植物となります。今後の需要拡大が期待されます。
初掲載:平成27年5月
農林総合研究センター
花植木研究室
主席研究員
加藤正広
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