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更新日:令和3(2021)年7月1日

ページ番号:7271

畜産排水の脱色技術の開発

1.はじめに

畜産汚水の浄化処理施設からの排水は、しっかり処理されていても、色(茶褐色~黄色)が付いてしまうため、近隣住民から未処理と誤解されたり、放流時の合意が得られないなど、畜産農家に不利益が生じる場面が見られます。色については通常の浄化処理では取り除けないので、オゾンガスによる分解や活性炭による吸着など、高価な処理装置を導入しなければなりません。
そこで、脱色能力に優れた安価な資材を選定し、脱色および環境負荷物質の低減に効果的な処理システムを開発しましたので紹介します。なお、この開発は独立行政法人農研機構・畜産草地研究所、太平洋セメント株式会社、小野田化学工業株式会社および旭化成ジオテック株式会社との共同研究で実施しました。

2.脱色資材について

資材には、非晶質ケイ酸カルシウム水和物(CSH)と呼ばれるものに着目しました(写真1)。CSHとは、産業副産物である非晶質シリカと消石灰を原料に合成した高アルカリ性の資材です。下水道分野では以前より、排水中のリン酸の除去にCSHが利用できることが確認されています。我々はこのCSHを畜産排水処理に使用したところ、リン酸の除去に加えて、脱色や消毒(大腸菌群の低減)にも効果を発揮することが分かりました。また、使用後に回収したCSH(回収CSH)はリン酸を含有することを確認しました。そこで、畜産排水向けに改良したCSHを用いて、色、リン酸、大腸菌群を効率良く低減させる処理システムを考案しました。


写真1 非晶質ケイ酸カルシウム水和物(CSH)

3.開発した処理システムの概要

処理システムは、CSHを添加して脱色、リン酸除去、消毒を同時に行うCSH反応槽(150リットル容量)と、リン酸が吸着したCSHを固液分離する槽を組み合わせました。また、反応槽からの流出液は、炭酸ガスで中和した後に、処理水として排出するシステムとしました(図1)。
養豚農家の浄化処理施設から排出される液を試験の原水として、CSH反応槽に1日あたり0.7から1.7トンで流入し、CSHを排水1トンあたり乾物重量で0.3から2.2キログラム添加しました。その結果、排水1トンあたり1.5キログラム添加することで、排水中の色は40から80パーセント低減し(写真2)、リン酸および大腸菌群の100パーセント近い除去効果が得られました(図2)。また、回収CSHは、く溶性リン酸を20パーセント以上含有しており、リン酸質肥料として利用可能であることを確認しました。


図1 CSHを利用した処理装置の概要


図2 CSHによる色、リン酸および大腸菌群の除去効果


写真2 CSH処理による色の変化(イメージ)

4.おわりに

現在、県内養豚農家の既存浄化処理施設に実規模プラントを付設し、硫黄粉末を利用した窒素除去も含めて、実証試験を実施中です(写真3)。運転・管理技術やコスト面を具体化してマニュアル化することで、早期の実用化・普及を目指します。


写真3 CSHを利用した実証試験装置

 

初掲載:平成26年11月

畜産総合研究センター
企画環境研究室
研究員
長谷川輝明
(電話:043-445-4511)

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

電話番号:043-223-2911

ファックス番号:043-201-2615

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