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更新日:令和4(2022)年2月14日

ページ番号:8429

フォレストレター32号(2002年11月)

山武の森から

昨今の里山ブーム?に想う

最近、「里山」という言葉を見聞する機会が非常に多くなっています。そこで、里山に関する情報をインターネット上で検索(Google)しましたところ、検索数が10月21日現在、約6万件にものぼり、異常?とも思える程の数になっています。ホームページの内容をみますと、地方公共団体や民間が主催しますシンポジウム・講習会などから、NPO、市民グループ、ボランティアや個人等の里山づくり、里山との係わり、経験談など多岐にわたっています。また、里山に関する図書も数多く出版され、著者には森林・林業関係者以外の方も多くみられます。

このように、情報量やその内容等からみますと里山に対する一般の方々の関心は極めて高く、一種の「里山ブーム」と称しても過言ではないかと考えられます。

なぜ、今、このように森林・林業関係者以外の多くの方々が里山に興味を示し、行動するようになったのでしょうか。

ひとつには「里山」とか「~の里」という言葉のもつ響きやイメージが今、流行の”癒やし”にも通じ、「心のふる里」を彷彿させ、日本の原風景として、一般の方々が関心をもたれるようになったのではないでしょうか。

また、NPOや市民グループ、ボランティア組織が成熟し、「里山づくり」など自然に接する活動が容易になったことも考えられます。

さらには、循環型社会の実現や地球温暖化防止などに対する森林・樹木の役割が多くの方々に認識され、一般社会に深く浸透したことも見逃すことが出来ません。

まだまだ、幾つもの要因があるとは思いますが、次に、一般的に言われてきました「里山」についてみてみました。

本来、「里山」とは人々の生活と係わりの強い山のことをさし、主に薪炭林(雑木林)や水田と接した農用林などとして利用されていたとみられます。これに対し「奥山」では、スギやヒノキなど、いわゆる用材林が主体であったと考えられます。(千葉県の森林では「里山」「奥山」というような明確な区分がなされていたか不明です)。

ところが、現在いわれています「里山」は身近にある山、都市周辺の山あるいは、人によっては、すべての山をさすようで、従来の「里山」とは異なり、一定した定義はなく、里山づくりやその利用のされ方も多種多様のようです。

しかし、現在、この「里山」に対する社会的ニーズは極めて高く、行政的には里(山)づくりの推進やNPO・市民グループ・森林ボランティア等への技術・資金援助等の事業が進められています。

当森林研究センターでも「里山のタイプ別整備指針」の作成や現地での技術指導などの要望があり、また、重点課題として「広葉樹二次林の有用樹林化技術の確立」を掲げ、里山に関する試験・研究を強化しております。

以上のように、「里山」に対する県民の関心が高いことから、県としては、その内容を的確にとらえ、この里山ブームが一過性のものとせず、里山の再生など千葉県の森林の保全・整備の起爆剤になることを祈りたいものです。

(次長岩井宏寿)

研究トピック

種取り作業でのボランティアの活用

天高く実りの秋!毎年この時期、林木育種の仕事は種取りです。あちらこちらの山を駆け回り研究用の種を集めるほか、採種園で事業用にスギ、ヒノキ、松くい虫抵抗性マツの種取りを行っています。

この種取りは、木の枝から一粒ずつ球果をもぎ取り、それらを天日乾燥(一部人工乾燥)して種を取り出しますが、ほとんど手作業による手間暇がかかる仕事です。近年、事業費減少の中、所定の生産量を確保するため様々な取り組みを行っていますが、その一つとして、一昨年からをボランティアを導入しています。

ボランティアとして来てくれているのは、森林インストラクターと生活協同組合L(エル)の会員です。森林インストラクターは下刈、枝打など山作業の経験も豊富で慣れており、いまや戦力として期待できます。

生活協同組合Lの会員は普段は森林、林業にあまり縁のない主婦が大半ですが、生活環境を守るという組合員活動の趣旨と結びつくことから、地域活動のメニューの一つとして取り入れてもらっています。毎年10~20人が参加し、日焼けを気にしながらも作業に精を出してくれます。スギの球果を初めて見る人たちが大部分なので、手が届く範囲の枝や、事前に切り落としておいた枝から球果をもいでもらいます。今年は豊作だったせいもありますが、16人が2時間弱で球果11kg、約7,000本の苗木を作ることができる量を採取しました。ベテラン作業員に同じ作業をしてもらい比較したところ、その約70%の能率でした(ただし、豊作の方が作業能率は高まります)。事前の準備が必要な点はありますが、危険がほとんどない単純作業であり、このような人たちも戦力として期待できそうです。

この他、天日乾燥した球果の種とゴミの選別作業を2時間ほど行ってもらいました。これは1人か2人で行うと、気の遠くなるような単純作業です。しかし、さすが主婦のみなさん、2~3人ずつ集まって、楽しくおしゃべりしながらも、一生懸命手を動かしていました。この作業はベテラン作業員と比較を行なわなかったものの、予想を上回る成果だったようです。

また、最後にお願いした簡単なアンケート調査の結果から、これら作業についての評判は上々でした。ほとんどの人が「作業に充実した」、「できたらまた参加したい」といった感想をもっていました。採種園は立木密度が低い(800本/ha)うえ、作業性を考え下草を刈ってあり、林としては快適な感じがします。そのような環境の中での軽作業ですから好評だったと考えられます。加えて、作業体験や昼休みの雑談などをとおして、林業が地道で手間のかかる作業の積み重ねであることを感じてくれたようです。たった一日だけの作業ですが、森林、林業の一般市民への啓発普及に役立つことでもあると思われます。

(森林保全研究室遠藤良太)

ボランティアによる作業

研究室の窓

三宅島噴火と酸性雨

環境機能研究室

酸性雨は、樹木被害をもたらすことで知られています。通常の雨は、空気中の二酸化炭素により、酸性度を示すpH値は5.6となり、酸性雨はpH値がこれより低い雨と定義されています。

人為的に発生する酸性物質以外にも火山や海洋などから発生する酸性物質もあり、全国的にpH5.0以下の酸性雨が記録されています。
当センターでも1週間ごとに降雨をまとめて採集し、集めた雨水のpH値を測定しています。その結果、1999年までは年平均のpH値は5.0~5.6でしたが、2000年は8月以降低い値が記録され、年平均のpH値は5.0以下となりました。これは8月に大噴火した三宅島の火山性ガスに起因しているものと推察されました.また、降雨ごとに採集した雨水のpH値と、日本原子力研究所がインターネットで発信している「三宅島火山性ガス拡散シミュレーション」情報で、火山性ガスが当センター上空まで達すると推測される日時とを比較してみますと、そうした時の降雨はしばしばpH4.1まで低下していました。

シミュレーション通りに火山性ガスが拡散しているとしますと、三宅島噴火に起因する酸性雨は、現在も広範囲に及んでいるものと思われます。

(富谷健三)

間伐材で作ったU字溝のふた

環境機能研究室

本誌No.28(2001.7)に、間伐材で作ったU字溝のふたを実地に使用して、耐久性を観察していると記しました。ふたは、6×6×40cmのスギ心持ち正角材を横に10本並べ、これを連結材で釘打ち固定して厚板状にしたものです。設置してからほぼ3年になる現在の状態は、次のとおりです。

正角材のズイに沿って干割れが生じ、全体に暗色化して、見た目は悪くなりました。しかし、干割れ部分や、ふたが最も湿る裏面のU字溝と接する部分にも腐朽やシロアリの食害は認められません。これは、ふたには保存処理はしていないものの、設置してからまだ日が浅いことや、下水道が整備されているので、U字溝内は比較的乾燥していることによるものと考えられます。

強雨で側溝が溢れた時に、ふたが浮き上がってズレたり、道路上に流されてしまうことはありますが、ふた1枚の目方は約8kgと同寸法のコンクリート製ふたの1月4日程度なので、側溝の掃除は大変楽になりました。強度についても、乗用車が乗っても全く問題ありません。

設置当初から、ふたは最低7年間は使用できるはずと考えているので、あと4年は観察し続けるつもりです。

(長谷川忠三)

緑化樹の新しい害虫

森林保全研究室

緑化樹害虫の多くは森林で生活しており、森林害虫であった種類が緑化樹害虫としてリストアップされたり、無名の昆虫が一躍緑化樹害虫の仲間入りしたりします。

ここ数年間で名前の明らかになった害虫がいます。それは、キャラボクを加害していたニセビロウドカミキリと、コニファーを加害していたマスダクロホシタマムシです。

ニセビロウドカミキリは、幼木の時期にも加害しますが、整形した出荷間際の立派な樹木の大切な枝に産卵し、幼虫が侵入して枝を衰弱させて商品価値を大きく低下させます。まだ被害が拡大していませんが、要注意の害虫です。

マスダクロホシタマムシは、スギ・ヒノキの害虫として既に知られており、乾燥、根切り、剪定等で樹木が衰弱した時に被害を受けます。昨年の夏は降雨が少なく、畑に植栽したコニファーの特定の品種が大きな被害を受けました。

自然は複雑な生物間の連携で成立しており、突然害虫として私たちの憎まれ役となる種類が出現します。被害を少なくするためには、いつも注意深く見守る必要があります。

(石谷栄次)

全国植樹祭を契機にした新しい里山の活用-県民参加を得て-

特用林産研究室

里山は放置されたものが多く、都市住民のボランティアによる管理が着目されています。県においてもこうした管理のあり方について全国植樹祭の関連行事「千年の森つくり事業」などで模索され始めています。

この事業に参加してみて、ボランティアの管理に挑戦する意欲には目を見張りますが、長続きには「森を知り」、「森を管理し」、「森を楽しむ」知識と技術が必要であろうと気付きました。そこで、「森を管理する」こと、「森を楽しむ」ことは様々ありますが、きのこ、山菜を現地の里山で生産することから始めるのが効果的と思いつきました。この生産は効率的ではありませんが、ボランティアの楽しみにつながることは間違いありません。難点は、当分の間、長期間の技術的支援が必要になることです。

また、きのこ生産には成長が滞り始めてたコナラなどの雑木を用いますことから、里山の更新を進める別の意味の効果があり、さらに「新しいタイプの里山つくり」、森林の持つ公益的機能をより効果的に果たす「丈が高く根が張った森」に推移させるきっかけにもなるとおもいます。

(小平哲夫)

お問い合わせ

所属課室:農林水産部農林総合研究センター森林研究所

電話番号:0475-88-0505

ファックス番号:0475-88-0286

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