ここから本文です。
ホーム > 教育・文化・スポーツ > 教育・健全育成 > 学校教育 > 生徒指導(いじめ・不登校児童生徒支援) > 「生徒の自殺に係る第三者調査委員会」の調査結果を受けた県教育委員会の対応について
更新日:令和7(2025)年1月22日
ページ番号:733223
発表日:令和7年1月22日
教育振興部児童生徒安全課
令和5年10月13日、県立高等学校の当時2年生の女子生徒が自殺を図る事案が発生しました。当該生徒は教員との関係に悩んでおり、そのことをアンケートや作文で訴えていましたが、学校は、これを組織として共有せず、対応がなされないまま、自殺に至ってしまったものです。
県教育委員会では、極めて重大な事態であると受け止め、第三者調査委員会を設置し、詳細調査を行いました。
令和5年10月13日、県立高等学校2年女子生徒(当時16歳)が自ら命を絶った。
当該生徒は、同5月18日に実施したいじめアンケートに、みんなの前で恥ずかしい思いをするので英語の授業に出たくないこと等を記載するとともに、同7月4日から14日にかけて実施した授業アンケートでは、英語の教諭が授業中に生徒を侮辱することや解答できないと立たせ続けること等について改善を訴えていたが、学校は、これを組織として共有せず、いずれも調査等の対応を行っていなかった。
また、同9月15日、国語の自習課題(作文)に、英語担当教諭に悪口を言われることや、先生をかえてほしいことなどを訴えるとともに死をほのめかす内容が記載されていたが、国語担当教諭は、課題が「がんばりたいこと」というタイトルであり、緊急性があるとは捉えず、当該生徒が亡くなるまで、その作文を読んでいなかった。
そのような中、同10月11日、当該生徒は、英語の授業時にトイレに行ったまま、授業に出席しなかったため担任から指導を受ける。その際、担任は、冷静に話していたつもりだが、途中から突き放すような叱責(「今の状態なら俺は何もしてあげられない。自分で勝手にやってくれ。好きに進路決めて好きに頑張ってくれよ」等の発言)をした。同10月12日、当該生徒は学校を休み、同10月13日に自殺を図った。
委員長 笠井 孝久(千葉大学教育学部 教授)
副委員長 本間 陽子(千葉県弁護士会 弁護士)
委員 細井 尚人(千葉県医師会 精神科医師)
委員 早川 けい子(千葉県公認心理師協会 公認心理師)
委員 赤堀 久里子(千葉県社会福祉士会 社会福祉士)
委員 川畑 愛(千葉県弁護士会 弁護士)
令和5年12月22日から令和6年7月31日まで
英語教諭の授業については、英語の授業はわかりやすいという肯定的な評価をしている生徒も多く見られるものの、一般的には生徒を起立させて答えられるまで座らせないという授業スタイルは、仮に起立させている時間が短かったとしても、生徒の羞恥心をいわば利用するような側面が否定できず、適切ではない。
亡くなった生徒以外にもアンケート調査に「こんなの小学生でもできる」と言われたこと等を記載した生徒がおり、同教諭があえて生徒達を侮辱しようとしていたとまでは考えにくいが、少なくとも生徒達にとっては人格を否定されたと思うような発言や言動が事実としてあったと考えられる。
亡くなった生徒が記載したと思われる授業評価アンケートには、生徒を侮辱する発言に対する当該教諭への抗議と、改善がなければ教育委員会に相談するという 記載があったにもかかわらず、当該教諭は管理職への報告もなく、漫然と放置した対応には、問題があった。特に、当該教諭の授業スタイルに鑑みれば、当該アンケートの記載を読んだうえで、生徒に屈辱感を与えていたのかもしれないという可能性を検討すらしなかった点は、教師としての意識の低さと指摘せざるを得ない。
生徒の個別的な事情や背景を考慮せず、一方的な思いで指導を行っていると言える。当該教諭は、いじめアンケートへの記載内容から、当該生徒と英語教諭の間の確執について認識していたはずである。その認識に立てば、その後、当該生徒が英語の授業だけで欠席等の状況が見られたことと英語教諭との確執(アンケートに記載された内容)とを結び付けることは、決して難しいことではなかったと考えられる。しかしながら、指導の際には、当該生徒の言い分を丁寧に検討したり、授業のストレス等による体調不良の可能性を考慮して、体調を確認したり、心配することもなく、また当該生徒が繰り返し訴えていた英語の授業の問題に言及せず、むしろそれに適応できない当該生徒の在り方を非難する言動を示し(突き放すような言い方等)、一方的に叱責してきたと当該生徒が捉えたとしても致し方ない状況であったと思われる。自分の言い分は聞いてもらえず、授業を欠席するという自分としては精一杯の対処法もわかってもらえず、自分の態度が悪いと指摘されたことに加え、進退(転学等)に関わる話をされて、当該生徒が追い詰められていったことは想像に難くない。
令和5年10月11日の指導の翌12日、当該生徒は学校を欠席しているが、その連絡は保護者からではなく当該生徒からのものであった。生徒本人からの欠席連絡の場合は、必ず保護者に連絡を入れることになっているが、これが為されておらず、担任教諭の対応には極めて問題があると指摘せざるを得ない。前日の指導内容を考えれば、翌日の欠席に関する保護者への連絡、確認は為されて然るべき事柄である。保護者は当該生徒が学校を欠席していることを知ることができなかったため、当該生徒の安否を心配し、友人に確認したり、帰宅を促したりする行動を取る機会を逸せられた。
令和5年9月15日、自習時間に、「がんばりたいこと」というタイトルで作文を書いている。その内容は、「英語の授業が原因で精神がおかしくなる、死んでやろうかと思った、ガチで先生変えて欲しい、本当に死ぬよ?」などという、極めて過激なものである。
しかし、国語教諭は、当該生徒が亡くなるまで上記作文に目を通していない。その理由として、教諭が休暇中に自習の課題とした作文であり、同教諭としては、与えた課題が「がんばりたいこと」であったことから、緊急に生徒らの作文の内容を確認する必要性があると考えなかった。ただ、当該生徒としてみれば、学校の反応を期待してSOSを発したにもかかわらず、いくら待っても反応がないことに落胆したであろうことは容易に想像できる。
このような状況を管理すべき管理職がほとんど情報を持っておらず、不適切な状況、対応に対して十分な指導が行われなかった。管理体制の甘さ、管理職としての責任感の欠如である。
関係する教師の個別の対応が、それぞれ単体では、当該生徒が自殺を図るに至った直接的な原因と判断することは難しいが、それぞれの対応が重なり合い、結果として学校は、当該生徒がたびたび発したSOSのサインをすべて見逃しており、度重なる無反応が当該生徒を精神的に疲弊させていったと考える。
そして、すでに疲弊し、将来にも漠然とした不安を抱えていた当該生徒に対し、令和5年10月11日に、進路に関するネガティブな指導がなされて、自殺を図るに至ったものと考える。
今回、原因として取り上げた事態は、単なる過失ではなく、教員であれば当たり前に行うべき指導を、いくつもの場面で不作為または不適切な指導に終始した点で大きな課題となる。
本件のような事態が起こらないようにするためには、チェック機能を見直す必要がある。例えば、アンケートに記載があったものについてはすべて複数の教諭が面接を行い、その結果をレポートに残し、学年会議で議題にする等、少なくとも当該学年の担任教師が共有できるようにする、などの検討が必要であろう。他にも、利用しやすい相談窓口の設置や相談しやすい(SOSの出しやすい)生徒と教師の信頼関係の構築等も考えていく必要がある。
本件の場合は、仮に保護者が当該生徒の欠席を知らされていれば、早い段階で当該生徒の行動を止めることができた可能性がある。
このような事態を二度と招かないためにも、学校が保護者に連絡をとるシステムの見直しが必要である。例えば、対保護者の連絡ツールとして、電話ではなく欠席連絡をオンラインで一元管理するシステムの導入や欠席の連絡を担当する教師を決めておく等が考えられる。
本件では、生徒が自死を企図する原因の一部に、教員の不適切な関わりがあり、その背景として、教員及び教員集団の生徒指導に対する理解・意識の低さ、技術・能力の欠如等が指摘された。
このような状況を改善するために、教職員の生徒理解や適切な生徒指導に関する更なる研鑽が求められる。教師という職業上、教師―生徒関係において、また担任という立場や自分の教科の専門性において、他の教員や生徒から指摘されることが少ないと、自分のやっていることが正しいと思ってしまうこともある。意見や指摘が少数の場合、それらを考慮しなくてもよいと考えてしまうこともある。まずは、自分の考え方や関わりの方法を客観的に省察し、必要に応じて改善することが必要である。その上で、日常の業務の中で、生徒理解や指導の方法について、他の教員と意見を交換したり、指導を受けたり、学校外の研修等に参加することも一つの研鑽方法である。このことは、本件に関係した教員に対してだけでなく、全ての教員に対しての提言である。
また、管理職は、個々の教員の教員としての素養、学習指導、生徒指導等の能力、実態を的確に把握し、必要に応じて指導・支援をする必要がある。
本件において、一部の教員だけで対応がなされ、結果として管理職に情報が伝わっていない、周囲の教員も知らないという状況が生じていた。ヒアリング調査において、「他の教員のやり方はよく知らない」、「意見を伝えても聞き入れられない」といった内容も語られ、教員間の風通しのよくない状況があったことが示されている。
本件においても、担任教諭が他の教員に相談していたら、あるいは他の教員が何らかの形で介入していたら、最悪の事態は避けられた可能性がある。
専門や経験の異なる集団ではあるが、生徒理解や生徒指導においては共有できる部分、共有しなければならない部分がある。各教員の個性を活かしつつ、チームとして生徒を指導、支援する教員集団の在り方を再考、構築して欲しい。
本件では、英語担当教諭の授業スタイル、当該生徒の「いじめアンケート」での訴え等、管理職に情報として伝達されていなかった実態がある。本来であれば「授業評価アンケート」や「いじめアンケート」の内容は、管理職に届いているはずであるにも関わらず、きちんと伝わっていなかった。また、アンケート等の仕組みはあるにも関わらず、その運用において適切に扱われなかった。
アンケート等の事業は、継続するに従って、それぞれの分掌に任されるようになり、その目的や手続き等が曖昧になりがちである。高校という毎年、新しい職員を迎える組織では、それぞれの目的、手続き等を職員に示し、より効果的なものにする等の働きかけが必要である。
高校の機能の多くは、分掌で仕切られているが、それぞれの分掌で適切な業務が行われているか、管理職自らが積極的に確認、指導をする必要がある。管理職がリーダーシップを発揮し、生徒、教職員が安心して教育活動に取り組める環境づくりを推進することが期待される。そのためには、管理職の資質向上に加え、十分にリーダーシップを発揮できるだけの1校あたりの勤務年数の確保なども必要であろう。
各種アンケート等の適切な情報共有と対応、児童生徒の人格と個性を尊重した生徒指導等について周知徹底
児童生徒に、先生の言葉や行動で悲しかったこと等についてアンケートを実施し、これを全教職員で共有し、改善を図る。
県立学校長(令和6年10月11日実施)
県立高等学校副校長・教頭(令和6年10月18日実施)
児童生徒、保護者からの相談等を統一ダイヤルで受けるとともに、学校問題解決支援コーディネーターがいじめや教員の不適切な指導等について当該学校に入り、積極的に関与し、解決を図る体制を構築する。
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください