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更新日:令和3(2021)年8月2日

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「チーム西中」の給食、新たな食育~東金市立西中学校のコロナ禍における取組~

東金市について

 東金市は千葉県のほぼ中央部に位置し、温暖な気候に恵まれ、平野部は良質な田園地帯が太平洋に向かって広がり、丘陵地は山武杉の森林に覆われています。学校給食は、市内全小中学校が自校方式で、一年を通して市内産の米を使用しているほかに、市教育委員会と連携し道の駅「みのりの郷東金」やJA山武郡市、地元の農家から農産物や調味料を購入するなど、地場産物の活用をはかっています。

休校明けの学校給食

 令和2年6月、約3か月の臨時休校期間を経て学校が再開し、続いて学校給食も再開することとなりました。かつて経験したことのない状況で、新型コロナウイルス感染症に対応する学校給食に特化したマニュアルも無く、生徒の安全を第一に考えた学校給食について、何度も検討をしました。

 給食再開直後は、教員が中心となって配膳を行い、品数を減らした市内統一献立を5日分、2週間繰り返し実施しました。市内統一献立の内訳は、月曜日がカレーライス(またはハヤシライス)・牛乳・ヨーグルト、火曜日から金曜日はご飯(または個包装のパン)、牛乳、ホイル焼き、具だくさんの汁物にしました。主菜をアルミホイルで包むことで主菜が個包装になり、衛生的で簡単な配膳が実現しました。また、魚や肉と一緒に野菜やきのこなどを包み、栄養価もアップさせることができました。

【写真】 教員が中心となり配膳を行う様子と、一方向を向いての黙食の様子

 念入りな手洗いと手指消毒、ソーシャルディスタンスを保ちながらの配膳は、時間がかかり教員の負担が増えましたが、黙食により残食の減少につながりました。

【写真】品数の少ない献立と、ホイル焼きの一例(包み焼きハンバーグ)

 生徒からは、「ホイル焼きの中身が何か、開けるのが楽しみ」という声があり、どれも食べやすいと好評で、特に包み焼きハンバーグは「レストランみたい」と喜ばれました。

給食を通して健康と食事について学び、元気に過ごそう

 夏休み明け、給食から食生活を見直してもらおうと、保健委員会で考えた健康に良い給食献立を実施しました。アイデアあふれる献立に、実施前から楽しみにしている様子が見られました。当日は、給食時間に保健委員が考えた献立のポイントを放送し、目の前にある給食を食べながら健康と食事について学べるように工夫しました。実施後は給食の写真を校内に掲示し、家庭へは食育だよりを発行してレシピとともに紹介しました。

 この保健委員が考えた健康に良い給食は、令和2年度に全11回実施し、家庭でも話題になったそうです。

【写真】保健委員会で考えた健康に良い給食の一例「みんな大好き給食」

〈献立〉赤かぶ青菜ごはん 牛乳 鶏肉の唐揚げ シーザーサラダ 豚汁 オレンジジュース

黙食の給食は楽しくない

 毎年生徒に食生活アンケートを実施し、食生活や嗜好的なこと、給食が好きかなどの質問を入れています。令和2年度の食生活アンケートでは、「給食が嫌い」と答えた理由として、調査をしていて初めて「友達と楽しくしゃべることができないから」という回答が複数みられました。そこで、給食の時間に何ができるかを考え、教職員から給食エピソードを募集することを計画し、給食時間に放送しました。教職員が寄せてくれたエピソードの内容は、子どもの頃の話や好きなメニュー、ご当地給食、調理員さんを気遣う気持ち、中には匿名希望のエピソードもあり、放送後は生徒・教職員から反響がありました。そのエピソードの中から1つ紹介します。

 子どもの頃、小学校の授業で田んぼに出かけて「いなご」をたくさん獲り、それをみんなで給食室に届けたところ、そのいなごが佃煮になって給食で出たという話がありました。このエピソードは、田んぼといなごの関係、いなごから昆虫食の話題、そして昆虫食から持続可能な社会の話題へとつながり、昔の人の知恵から世界的な食料問題へとつながる放送になりました。

 教職員からの給食エピソードはどれも、生徒の給食に対する興味・関心を高めるだけでなく、食についての知識を広げさせてくれるきっかけになりました。

 これをきっかけに、令和3年度は食生活アンケートに「給食時間に聞きたい放送の内容を教えてください」という質問を入れたところ、給食エピソードはもちろん、料理の歴史、名前の由来、栄養、作り方、給食室の様子などたくさん書かれていました。夏休み明けの給食時間の放送は、生徒の意見を反映させていきたいと考えています。

【資料】教職員から寄せられた給食エピソードの一例

教科との連携、家庭科

 新型コロナウイルス感染症の状況により調理実習の予定が立たない中で、家庭科の授業で生徒が栄養バランスのよい給食の献立を考える授業を実施しました。家庭科教諭と栄養教諭がT.Tで授業を行い、生徒が考えた献立を積極的に給食に取り入れました。令和2年度は18献立を実施しました。

 授業では、栄養教諭から献立のポイントとして、栄養のバランス、味や調理法の組合せ、地場産物の活用、旬の食材や行事食、大量調理での注意点、1食の金額など、ワークシートをもとに説明しました。

【写真】家庭科授業の様子

【写真】家庭科の授業で生徒が考えた給食の一例

 生徒は授業で学んだことをそれぞれの視点で献立にとり入れ、資料で示した給食料理以外にも独自で料理を考えるなど、意欲的に取り組んでいました。

 生徒が考えた献立は2学期、3学期を通して実施し、当日は献立作成者の思いを栄養教諭が放送で伝えました。また、生徒がイメージしている給食を作りたいと思い、調理員の方々と何度も話し合いや確認をしました。できるだけ多くの献立を給食で実施することで、生徒の給食への興味・関心が高まり、次は誰の献立が実施されるのか楽しみにする姿や、選ばれたポイントは何かを考える姿、自分の献立が実施される日の緊張した姿が見られました。

感染症対策について配慮した調理実習「ひとりクッキング」

 新型コロナウイルスの感染状況を見て、家庭科教諭が考えた感染症対策について配慮した調理実習を行いました。栄養教諭も衛生管理や調理指導補助を担当しました。具体的な感染症対策は、衛生的な服装と手洗い、消毒、クラスを半分に分け1つの調理台に2人まで、対面と調理器具の共有を避ける、食器は使い捨てを使用、試食時は同じ方向を向いての黙食、常時換気等です。調理実習が大好きな生徒たちですが少し不安もあったのか、感染症対策の説明を聞き安心したようでした。

 実習では最初から最後まで自分だけの力で作り上げたことで、試食時は黙食ながらも食べる姿から達成感が感じられ、実習後は家庭で挑戦したという報告も聞かれました。

 令和2年度に続き、令和3年度も家庭科教諭が感染症対策について配慮した「ひとりクッキング」を実施しています。今までの調理実習の形とは異なるコロナ禍の新しい調理実習は、全てを自分一人で行うため、生徒にとって食事を用意する力が身に付くのではないかと考えています。

【写真】感染症対策に配慮した調理台の準備

【写真】調理室内の様子 生徒同士の距離を確保し、どの場面でも対面とならないように配慮しました

東金市食生活改善会との連携で、オンラインによる太巻き寿司教室が実現!

 1年生の総合的な学習の時間で、東金市食生活改善会(食改さん)を講師に招き、郷土料理である「太巻き寿司」の実習を予定していましたが、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、外部講師を呼べない状況が続きました。事前の学習で生徒はどのような柄の太巻き寿司を巻きたいかを話し合い、それを受けて食改の会長さんが「西中オリジナル」の柄を考案してくださいました。そのことを受け、中止にせず実施するための方法として、学校・東金市健康増進課、食改さんで連携し、感染症対策に配慮したオンライン形式での太巻き寿司教室を計画しました。

 具体的な感染症対策として、1つの調理台に生徒一人だけとし、調理器具、食材、出来上がった太巻きを持ち帰るフードパックなど、太巻き寿司を巻くために必要なものを全て一人分ずつコンテナにセットしました。コンテナへのセットは全て食改さんからのアイデアで、準備を担当してくださいました。

【写真】東金市立西中学校調理室の様子

 これまで市内の小中学校で太巻き寿司を伝えてきた食改さんも、オンライン教室は初めてで「緊張する」と言っていましたが、巻き方の見本を見せながらモニター越しに生徒一人一人の名前を呼び、動作を確認しながら進行がそろうようにしました。また、「ご飯を〇cm幅に広げる」「合わせ目を下にする」等、画面越しでもわかりやすいように具体的に巻き方を指導していただいたため、生徒は集中して取り組むことができました。

【写真】モニターに映る食生活改善会会長の太巻き寿司と同じようにできた生徒の太巻き寿司

 生徒は自分で巻いた太巻き寿司を自分で切り、きれいに巻けた断面をうれしそうに食改さんに見せていました。感染症対策として、その場で試食はせず持ち帰りとしました。後日、生徒に家族の反応を尋ねたところ、「『本当に1人で巻いたの?』と驚かれました」「『とってもおいしい!』と言って食べてくれました」など教えてくれました。

 

【写真】食生活改善会会長さんの「西中オリジナルの桃の花」切り口アップ写真

桃の花は本来のり巻きですが、生徒の希望で「花」と「卵巻き」を取り入れ、青のりで桃の葉が生い茂る様子を表現しました。

【写真】東金市食生活改善会(市保健福祉センター)の様子

 食改さんは市保健福祉センターから参加し、オンラインの設定や段取りなどは市健康増進課職員の方々が中心となって進めました。生徒の様子は大きな画面で確認し、会長さんが巻く様子は小型カメラで鮮明に映し出されるようにするなど「生徒さんのために」とおっしゃって、様々な工夫をしてくださいました。

 

【写真】東金市食生活改善会と東金市健康増進課のみなさん

 また、この取組は市秘書広報課の取材が入り、「広報とうがね」で紹介されるなど、新しい学習の形として注目されました。生徒だけでなく教職員にとっても貴重な体験となりました。

【資料】広報とうがね(4月15日号)

おわりに

 コロナ禍において、給食時間での指導や教科と関連させた食育指導には様々な制約があり、生徒の学びを保証するためにはICT機器の活用や関係機関との連携のとり方など、新たな食育指導の方法を模索していくことが大切だと考えています。

 これからも、安全・安心でおいしく、見本となるような給食作りに励みながら、生徒が自分の健康と食事について考え、実践できるような食育を展開していきたいと思います。

文責:東金市立西中学校・栄養教諭・大口 ちぐさ

 

お問い合わせ

所属課室:教育振興部保健体育課給食班

電話番号:043-223-4095

ファックス番号:043-225-8419

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