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更新日:令和4(2022)年3月25日

ページ番号:501279

「労政ちば」(No.582春号)13-14ページ

在籍型出向を活用して雇用を維持している県内企業の事例をご紹介します

新型コロナウイルス感染拡大により航空需要が大きく減少し、航空関連の企業は大きな影響を受けています。
成田空港内での旅客案内を主な業務とする空港ターミナルサービス株式会社でも、感染症の影響で業務量が減少し、2020年5月には最大約460人の従業員が休業(部分休業含む)を余儀なくされました。
そのような中、同社では従業員の雇用を維持するため在籍型出向制度を導入し、2021年11月までに、のべ77人の方が空港外の事業所に出向しています。
人事担当者と出向中の従業員の方々にお話を伺いました。(令和3年12月)

空港ターミナルサービス株式会社(成田市) 人事課 松永 弥生 さん

「出向している従業員の心身のサポートが重要です」
ー在籍型出向を導入したきっかけは何ですか。
弊社は成田空港にて国際線の旅客ハンドリングやインフォメーション業務を受託しております。新型コロナウイルスの影響を受け、国際線の旅客便が大幅に減少したことを機に、雇用を守ることが最大の課題となりました。同業他社様でも在籍型出向という制度を活用していることを知り、同制度を活用させていただくことにいたしました。
出向先企業はグループ会社、お取引先様からのご紹介や、産業雇用安定センター様にお世話になり決定させていただきました。

ー出向成立に向け工夫した点、苦労した点は何ですか。

  • 契約成立までに要した時間:
    出向先との打ち合わせから契約成立まで、最短で1か月程度で行いました。
  • 出向契約書や就業規則等の整備:
    契約書はグループ会社の法務担当にチェックを依頼し、規程などに関しては労働局や労基署などに相談をさせていただきながら進めていきました。
  • 出向契約の締結まで、工夫した点、苦労した点:
    勤務先の働き方や環境の把握などを限られた情報の中で進めていくことに苦労しました。
    特に、住環境が変わる場合などは着任してみないとわからないことも多かったため、出向先のご担当者様とのやり取りから情報を入手いたしました。
    また、従前の制度では追いつかない面も多く苦労しましたが、スピーディな決断と実行かつ丁寧な対応を心がけてまいりました。
  • 出向者の選定方法:
    出向先業務と空港業務の内容が異なる場合、本人の適性や通勤場所などできるだけメリットが生まれるように選定しました。
    また、社内で公募を行ったりもしました。

ー在籍型出向のメリットや、課題を教えてください。
メリットは、在籍しながら自身の視野が明らかに広がることや、新たな人脈を築けることだと思います。苦労することがあるかもしれませんが、新たな自分の側面を発見し、それが後々良いサービスや自身の能力向上に繋がると思います。
課題は、遠隔地にて勤務する従業員との距離に比例して、心の距離も遠のいてしまわないようすることです。出向者をサポートするため、LINE WORKSでコミュニケーションをとっています。
また、定期的に出向先に差し入れをしたり、対面やオンラインで面談をすることもあります。

ー出向を検討している企業へのアドバイスをお願いします。
出向することで、新たな業務スキルが身につく、人事交流ができるなど、できるだけプラスになるような機会とすることが成功の鍵だと思います。できれば事前に候補者へ丁寧な説明ができるよう、出向先からできるだけ情報を得ておくことも必要だと思います。出向後は異なる環境、業務のなかで心身のサポートをしていくことがとても大切だと思います。出向先で頑張ろうと決断してくれた従業員の覚悟と同じく、送り出すほうも従業員を成長させることや会社との縁をつなぎ続けるための「覚悟」(大袈裟かもしれませんが)が必要だと思います。  

空港ターミナルサービス株式会社から、株式会社小松製作所小山工場へ出向しているお二人にお話を伺いました。(出向期間:2021年3月から1年の予定)
入社5年目 小見山 純也 さん
インフォメーションの業務に3年半従事したのち、人事総務部で約半年間、主に採用担当の業務に従事。

「出向は自己理解を深めるチャンスです」

ー出向先でのお仕事内容を教えてください。
出向先は建設重機の生産工場で、エンジンの組立てに使用するボルトやワッシャーなど様々な部品を必要個数ピッキングして袋詰めをする作業をしています。その他、ピッキングした部品を各組み立てライン別へ仕分ける作業や、海外から到着した部品の入庫作業も行います。

ー出向の話があったときはどんな気持ちでしたか。
当初は全く異なる業界への出向ということで環境の変化に強く不安を抱きましたが、現在の会社に所属したまま新しいことに挑戦ができることで自身の新しい可能性や苦手なことの発見に繋がり、職を変えずに自己理解を深めるチャンスと思い前向きな気持ちになれました。

ー出向が始まってみてどうでしたか。
異なる業界に身を置くことで自身の業界を客観的に見ることができ、今後の課題等に気づくことが出来ました。
また、新しい環境での一からのスタートということで、まるで新入社員に戻ったような気持ちになり、メンタル面では良いリフレッシュとなりました。

ー出向の経験を今後にどう活かしていきたいですか。
工場勤務によって徹底した危険予測等の安全対策意識を学ぶことができたので、元の職場では今までは気づくことのできなかった労動災害が発生するリスクを少しでも低減して、さらなる安心安全な職場環境作りに貢献したいと思います。

ー出向を考えている方へのアドバイス
最初は環境の変化に対する不安にばかり目が行きがちですが、変化が大きければ大きい程、社会経験の幅がグッと広がります。業種への自身の適正が分かったり、自身の業界を客観的に見られることで今後の改善点を発見できたりと、収穫できることも多くありますのでぜひ体験してみてください!

入社2年目 望月 彩圭 さん
新型コロナウイルスが流行し始めた時期に新卒入社、インフォメーションの業務に従事。

「出向を通しプラスに考えられるようになった。何事も挑戦してみたい」

ー出向先でのお仕事内容を教えてください。
出向先では、コマツカミンズエンジン(KCEC)業務部で海外調達のお仕事をしています。KCECはアメリカのカミンズ社との合弁会社であり重機のエンジンを製造しています。エンジンを作るための様々な部品が、世界各国のサプライヤーから飛行機や船で日本に届きます。私は主にその到着確認や遅延情報を更新し、部品が欠品しないように通関・配送等を物流会社さんと連絡を取り工場へと手配をする仕事をしています。

ー出向の話があったときはどんな気持ちでしたか。
知らない地で1人でやっていけるのか、工場と聞いていたので力仕事に自信もないため不安になったのと同時に、何か得られるものもあるのではないかと思いました。

ー出向が始まってみてどうでしたか。
初めは何をしている会社なのかもよく理解をしておらず、重機にも特に興味があったわけでもないので不安でした。数ヶ月間は現場でピッキング作業をし、その後調達事務になったのですが、2つの仕事を経験したからこそ、エンジンができて出荷になるまでの流れについてより一層理解を深めることができました。また、少し英語を使うこともあるので勉強してきたことが活かせる場面もありました。何より職場の皆さんがとても親切な方ばかりで分からないことは教えてくださるので安心しました。

ー出向の経験を今後にどう活かしていきたいですか。
今までは一歩踏み出す勇気がなかったり、考えてばかりいることがありましたが、出向を通しプラスに考えることができるようになったので何事も挑戦してみようと思います。また、以前よりPCと向き合う時間が増えたため、得た知識を事務作業などに生かしていきたいです。

ー出向を考えている方へのアドバイス
仕事内容、環境が全く違うことへの不安はもちろんありましたが、異なる分野の仕事をすることで、今まで経験したことのないことや新たに学ぶこと、知ることもたくさんあります。また、自分の知識も増えますし、今後活躍のフィールドが広がる可能性もある良い機会にもなるかと思います。

 

お問い合わせ

所属課室:商工労働部雇用労働課企画調整班

電話番号:043-223-2767

ファックス番号:043-221-1180

在籍型出向の人材マッチング※1:(公財)産業雇用安定センター千葉事務所(電話 043-216-3670)
産業雇用安定助成金※2 :千葉労働局職業対策課(電話 043-221-4393)
※1 コンサルタントが人材送出企業と受入企業を訪問し、マッチングが円滑に進むよう支援します。
※2 在籍型出向により労働者の雇用を維持する場合に、出向に要する賃金や経費の一部が助成されます。

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