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更新日:令和5(2023)年8月1日

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被災宅地危険度判定士養成講習(動画テキスト版)

動画テキスト版

講師

千葉県被災宅地危険度判定士養成講習をはじめます。

被災宅地の危険度判定を行うにあたって参考となる判定マニュアルについてご説明します。

 

ここでこれからの説明に使用する資料の確認です。被災宅地危険度判定連絡協議会のホームページにある、この赤枠の中のマニュアル類になります。

まず、「被災宅地の調査・危険度判定マニュアル」です。簡単に判定マニュアルと呼んでいます。ここには、判定票を作成するための判断基準や手順等が細かく記載されています。そして、それを補足する写真等が記載されているのが「被災宅地の調査・危険度判定マニュアル(参考資料)」になります。三つ目の資料は「擁壁・のり面等被害調査、危険度判定票作成の手引き」です。手引きと呼んでいます。ここには、判定票の記入方法や様式、記入例などが記載されています。

 

これからの説明は、マニュアル、参考資料、手引きの内容を取りまとめたスライドを中心に行います。

 

最初に基本的な事項です。「判定マニュアル」の1ページから11ページが中心となります。

 

この写真は、平成20年の東京地方の集中豪雨で斜面崩壊し、家屋を倒壊させた例です。上が被災直後、下が復旧した現在の状況です。

 

まず、目的です。これからみなさま危険度判定士の方々が活躍されるのは(1)、市町村において「災害対策本部」が設置されるような規模の「地震又は降雨」などが発生した場合で、(2)、実施するのは、被害状況調査と危険度判定調査です。(3)、そして、その目的は、二次災害の軽減と防止です。これらのことを個人のばらつきが無く実施するために、標準的な手法をマニュアルに定めています。調査対象施設は、(1)、擁壁、(2)、宅地地盤、のり面や自然斜面、

そして、(3)、排水施設になります。また、調査班の構成は、判定士を含む3から4名程度が標準です。

 

調査内容の概略です。調査期間としては、災害発生後、速やかに実施し、中地震で2週間程度以内、大地震では1ヶ月以内に終了、ただし、期間については先の震災でもおわかりのように災害の規模に応じた臨機応変な対応が必要であることは言うまでもありません。また、調査結果の活用としては、行政が対処する措置として避難勧告や、応急処置等があります。

 

判定の1日の流れは、このようになります。実際の判定活動と同じような作業を基本として研修を行いました。(7)判定調整員へ報告では、調査箇所ごとに違う人が報告をすると多くの方が勉強になるので良いと思います。

 

つぎに、調査の準備です。調査に必要な機器や用具としては、マニュアル6ページ、表2の1に示されていますが判定士の方が準備するものとしては、認定登録証、判定調査票、今回使用の判定マニュアルや手引き、そのほかに、ヘルメットや雨具等々、表上段に記載されている物になります。

 

現地で用意されている物もあると思いますが、応援隊として出動する場合は、現地は混乱していることが容易に想定されますので、出来るだけ、自分で用意するようにして下さい。

 

つぎは、いよいよ調査の実施です。擁壁の被害調査の一般的な経路からです。これは、あくまでも一般的な経路ですので現場状況に応じて対応していただければ結構です。調査時に二次災害に遭わないことが重要ですので、危ないと感じたら近寄らないことです。この踏査では、擁壁本体の変状や周囲の状況等を確認します。

 

つぎは、のり面の状況調査の一般的な経路です。のり面の場合も、まず全体をながめて危険のないことを確認してから始めて下さい。この場合も、擁壁と同様、危険のない範囲でこの順路を参考に踏査していただければ結構です。こちらには、行きと帰りの点検範囲を分けてありますが、小段部分を調査する場合、行きと帰りで見る視点を変えると調査漏れが防げますよということを示しています。この踏査では、のり面のはらみや隆起、崩壊といったのり面そのものの被害状況やその周辺の状況を確認します。

 

排水施設の被害状況調査には、「擁壁の排水施設」と「のり面の排水施設」とがあります。それぞれ、表面排水工で被害の変状を判断し擁壁の背面排水工の状況で基礎点の判断をします。後ほど詳しく説明します。

 

擁壁の高さは、「擁壁の天端から、前面地盤までの高さ」いわゆる「見え高さ」となります。後ほど詳しく説明します。

 

つぎは、調査票の共通事項です。この項目は、手引きが中心となりますが、お手元に判定票の様式1と2をご用意いただき、こちらを手元に置きながら聞いていただければ判りやすいかと思います。

 

調査票の原則的な事項です。被災1宅地につき1枚の調査票が原則です。ただし、同一宅地において、擁壁の被災とのり面の被災というように複数の被災を受けた場合は、調査票を複数作成します。こちらの様式1と様式2をそれぞれ使います。ただし、共通事項はどちらかに記載すれば片方は省略してOKです。調査票への記入は現地踏査時に行います。記入者は調査班ごとに決めておくと良いでしょう。整理は、調査班において相互確認し、調査票を基に結果一覧表を作成します。

 

手引き20の、様式1を中心に調査票の記入の流れをご説明します。

 

調査票の共通部分です。調査日時や被災者の連絡先等を記入します。さきほど、同一宅地での複数被災の場合共通事項については一方を省略して良いというのは、この部分のことです。

 

次は、その下段の部分で、確認された変状項目のチェックになります。拡大して、みてみます。

 

上段は様式1で、擁壁になりますが、踏査の段階でこちらに図示されている変状項目の中から、該当する変状にチェックをします。この事例ですと、クラックとハラミ、傾斜の3つの変状が確認されたことがわかります。下が、宅地地盤とのり面の調査票で様式2になります。ここでは、のり面の崩壊にチェックが入っていますので宅地地盤の調査ではなく、のり面の調査がされていることが判ります。このあと、チェックしたそれぞれの変状項目について判定票で配点していくことになります。

 

配点表に行く前にもう少し記入することがあります。こちらの被災状況図の記入です。くわしく見てみます。

 

被災状況図の詳細です。まず、平面図です。平面図はこちらにあるように住宅地図をコピーして貼り付けると良いでしょう。住宅地図は、スケールを持っていますので、被災規模を確認しやすくなります。もし手書きで書かれる場合は、概略の延長が判るように記入して下さい。

次に断面図です。こちらは、写真だけでは判らないような事柄を、状況が判るように適宜、コメント等を入れながらできるだけ具体的に書いてください。

 

調査票の最下段の部分です。被災写真は、調査票とリンクさせるために写真番号を記入します。特記事項では、今後予想される危険性等を記入します。共通事項については、ここまでです。

 

それでは、擁壁の調査内容から説明します。ちなみのこの写真は、平成21年に発生しました、「中国・九州北部豪雨」により被災した、擁壁ぐんです。擁壁は脆弱な、ねりづみ擁壁で、水抜き穴が殆ど無く、3段に、まし積みされた極めて粗悪な既存不適格の擁壁でした。

 

最初に、危険度判定の基本的な流れについて説明します。この図にありますように宅地擁壁は、「基礎点」と「変状点」の合計で危険度を判定します。一方宅地地盤とのり面は「変状点」のみで危険度を判定することになります。ただし、宅地地盤とのり面には、変状点の一種ですが加算点というものが共通であります。これについては、のちほど説明いたします。

 

さてこの図は、擁壁の調査を「フロー図」化したものです。まず「宅地の構成要素」を確認します。「擁壁」か「宅地地盤」か「斜面」か、「宅地地盤」「斜面」であれば各々の調査する内容に行きます。「擁壁」であれば、まず、「擁壁の構造・種類」を特定します。次に「基礎点」を調査するルートです。「擁壁の位置の特定」→「(1)、湧水の分類」、→「(2)、排水施設の分類」、→「(3)、擁壁高さ、」の測定になります。そして、これらを足した合計が基礎点合計となります。次は、擁壁の変状点のルートです。(1)、クラック、(2)、水平移動、(3)、不同沈下・目地開き、(4)、ハラミ、(5)、傾斜・倒壊、(6)、擁壁の折損、(7)、崩壊、(8)、張出ししょうばん付擁壁の支柱の損傷、これら(1)から(8)を擁壁の種類と被害に応じて配点します。そして、(9)、基礎及び基礎地盤の被害、(10)、排水施設の変状、(11)、擁壁背面の道管の破裂、これらは擁壁の種類に関係なく配点します。変状点は、(1)から(11)の最大の点数をもって、「変状点」とします。最後に最初の「基礎点」と、次の「変状点」の合計をもって、評価点とし、評価点に応じて、調査済宅地、要注意宅地、危険宅地と評価します。では、その内容について詳しく説明します。

 

ここからは、お手元の手引き10とこちらの、「擁壁調査判定の手順」を見ながらお聞きいただくとよりご理解いただけるかと思います。宅地擁壁の調査手順として、まず最初に、擁壁の種類や位置関係等の基礎的条件を把握します。次に、基礎点を項目ごとにチェックし、基礎点を決めます。続いて、擁壁の変状項目の判別と変状点です。ここでは変状程度に応じて(大・中・小)の程度判断をします。それぞれの変状ごとのチェックが終わりましたら、変状点の中から最大点を抽出します。最後に、基礎点と変状点を合計し評価点とし、擁壁の危険度を判定します。

 

それでは、それぞれの項目について説明します。まず、擁壁の基礎的条件の記入です。ここでは、擁壁の種類を特定します。

 

擁壁の種類はこちらの練積み擁壁から、からいし積み擁壁までの6種類の中から選定します。なお、赤く着色した、まし積み擁壁、二段擁壁、はりだししょうばん付擁壁、からいし積み擁壁はそのほとんどが既存不適格擁壁です。では、写真で確認していきます。

 

上の二つが練積み擁壁です。コンクリートブロック製と自然石で作られたブロックがあります。から積み擁壁との違いは、目地がモルタルでしっかり充填されているか、天端コンクリートがあるかなどで判断します。下の二つが増し積み擁壁です。写真のように下の擁壁の上に新たに別の擁壁を積み上げるものです。一般に下の擁壁は施工時には現在の状態を想定して設計されていないので、既存不適格擁壁となります。

 

つぎは、コンクリート系の擁壁です。左が現場打ちコンクリート擁壁、右がプレキャスト擁壁です。プレキャストは、現場打ちと異なり、一定間隔に目地があるので判ります。下の二つが二段積み擁壁です。これも、増し積み擁壁と同様、二段擁壁として当初から設計されていない場合は既存不適格擁壁となります。なお、小段の幅が10メートル以上あればそれぞれ単独の擁壁と見なして良いということが、(判定マニュアルの18)ページに記載されています。

 

つぎは、張り出し床板付擁壁です。これは練積み擁壁のように前面に勾配がある擁壁を覆う形で、土地の有効利用を図る目的で、張出しを後から施工し、テラスや庭、ひどいものにあっては、家屋の一部がその上に構築されているものもあります。これも下の擁壁は上の荷重を考慮した構造ではありませんので、既存不適格擁壁となります。下の二つがから積み擁壁です。これも写真のような高さの擁壁では既存不適格擁壁となります。これで擁壁の種類の特定が終わりました。このあと、説明していきます、変状点の配点は擁壁の種類によって異なります。そのような理由から時間をとって種類の説明をさせていただきました。

 

つぎは、基礎点の部分です。ここでは、まず最初に、擁壁と建物や道路との位置関係を特定します。位置関係で配点が異なるからです。影響範囲に建物や道路がある場合は、ケースAとし影響範囲に建物や道路がない場合は、ケースBとします。ケースAの基礎点の配点は、ケースBに比べて倍の配点となっています。また、擁壁背面の1.0倍の範囲は建物等の荷重分散角度を45度と想定し、決められています。前面の1.7倍の範囲は、仮に対象擁壁が崩壊した場合、崩れた土砂が安定するいわゆる安息角が、砂質の場合30度といわれています。1.7倍はそこからきています。

 

基礎点の記入部分はこの部分になります。上の欄が、ケースAの記入箇所の下の欄が、ケースBの記入箇所となります。くわしく見てみます。

 

擁壁の基礎点項目と配点表です。ケースAとケースBでは配点に2倍の違いがあります。基礎点はこの表にあるように3つの項目で点数を付けます。「湧水」、「排水施設等」、「擁壁高さ」です。それぞれの項目で状況を3段階に特定し、点数を付け、その合計点を基礎点とします。

 

まず最初に、湧水の状況分類からご説明します。ここでは、水抜き穴や擁壁表面の湿潤状態を見て擁壁の背面に水が滞水し、水圧を受けるような状態になっているかどうかを判断し、乾燥、湿潤、にじみ出し流出の3段階に分類します。水抜き穴周辺が乾いていれば、「乾燥」とし「良い」状況と判断します。にじみ出し流出が多ければ、「にじみ出し、流出」とし「悪い」状況と判断します。上記のいずれでもなく、しめった状態であれば「湿潤」とします。

 

次は、排水施設の設置状況分類表です。さきほどの、湧水の項目では、擁壁背面の、滞水状況で判断しましたが、ここでは、その背面すいを排水する機能が備わっているかどうか構造を判断します。これも、良い状態のIIIからII、Iと3段階に分類します。水抜き穴が、径75ミリメートルで3平方メートルに1箇所というように規定通りあって、かつ、擁壁天端に、雨水の浸透を防ぐ排水施設が有る場合は、「良い」と判断し、分類は、「III」とします。反対に、水抜きが規定通りなく、浸透を防ぐ排水施設もない場合は、「悪い」と判断し、分類は「I」とします。いずれか一方を満足している場合は、「中程度」と判断し、分類は「II」とします。

 

以上の2項目に加え擁壁の見つけ高さを最後に測定し、それぞれの項目点の合計を基礎点とします。基礎点には関係しませんが、擁壁前面の勾配を確認する場合は、傾斜定規や下げ振りで行うと良いでしょう。擁壁の勾配は、擁壁の基礎的条件覧に記入箇所があります。

 

擁壁の高さの測定ですが、一般の擁壁の場合は見付け高さになります。ただし、増し積み擁壁や二段擁壁の場合は、こちらのように上の高さと下の高さを分けて測定します。なお、左の写真のように近寄ると危険な場合は目測で構いません。あくまでも安全第一で判定作業を行って下さい。

 

つぎは、変状点の記入になります。赤枠で囲んだ部分が変状の概要説明となっています。この部分を拡大します。

 

先ほど被災状況図のところで確認した変状について「大・中・小」の程度に応じた概況説明と照らし合わせながら、それぞれの程度を判断します。変状項目は、こちらの11項目になりますが、先ほどの被災状況図では(9)番目の基礎及び基礎地盤の被害と(11)番目の擁壁背面の水道管の破裂の変状は図示されていませんでしたので、この2項目の変状の有無も確認をしながら採点を行って下さい。

 

ここが、いま確認した変状程度の点数を記入する箇所です。採点の箇所を大きくするとこのようになります。

 

点数の記録は、変状項目とそれに対応する点数に印を付けることで行います。例えば、コンクリート系の擁壁で、変状項目がクラックで「中」、水平移動で「中」、不同沈下で「大」というように印を付けていきます。そして最後にそれぞれの点数の中での最大点を特定し、印を付けます。以上のように、変状点は擁壁の種類によって配点が異なります。しかし、変状項目の中には擁壁の種類に関係なく点数が付けられている項目もあります。

 

こちらの3項目です。9項目目の基礎及び基礎地盤の被害、これは該当する変状が見られれば10点。10項目目の排水施設の変状、これは、擁壁の種類に関係なく被害の規模に応じて点数を付けます。11項目目の擁壁背面の水道管の破裂、これは変状が確認されれば擁壁の種類や規模に関係なく10点です。

 

それではそれぞれの変状の項目についてもう少し詳しく見ていきます。

 

最初は積み系擁壁のクラックの判断指標です。こちらはクラック幅の大きさで判断します。判断指標数値は2ミリメートル未満が「小」、20ミリメートル未満が「中」、20ミリメートル以上が「大」、となっています。

 

同じく変状項目はクラックですが、コンクリ-ト系擁壁です。こちらもクラック幅で判断しますが、積み系擁壁とは判断指標の数値が異なっているのでご注意下さい。コンクリート系擁壁では、2ミリメートル未満が「小」、5ミリメートル未満が「中」、5ミリメートル以上が「大」、というように、積み系擁壁に比べ、クラック幅の判断指標が小さくなっています。

 

次は、変状項目2項目目の水平移動です。この項目は、擁壁間の隙間や変位の量で判断します。一般に目地の部分での変位で判断します。判断指標数値は5ミリメートル未満を「小」、50ミリメートル未満を「中」、50ミリメートル以上を「大」、と判別します。

 

つぎは、不同沈下および目地開きの変状です。ここも、目地の上下ずれや開きの量で判断します。先ほどの、水平移動と区別が付きにくいと思いますが沈下の伴う変位の場合はこちらに記入して下さい。判断指標の数値は、水平移動の数値と同じです。

 

つぎは「ハラミ」です。概要説明だけでは、判断しにくい項目だと思いますが、概要説明と併せて機能回復の程度を加えて判断すると良いと思います。部分補修によって、その機能が回復する程度なら「小」、もう少し変状程度が大きく、補修または部分改修をすれば機能回復が見込めるならば「中」、完全に機能を失っていて機能回復が見込めないものは「大」、というように分類します。これらのことは、マニュアル27ページの表3-15に共通事項として記載されています。これから説明していきます変状項目の中には、ハラミと同様に概要説明の判断指標だけでは判断に迷う場合がでてくると思います。そのような場合は、機能回復の程度と併せて判断して下さい。

 

つぎは、擁壁の傾斜・倒壊です。これは積み系擁壁とコンクリート系擁壁とで判断指標が異なります。積み系擁壁であれば擁壁の傾斜が地盤に対して垂直以下、コンクリート系擁壁では傾斜が50ミリメートル未満であれば「小」、積み系擁壁の傾斜が地盤に対して垂直以上、コンクリート系擁壁では傾斜が50ミリメートル以上であれば「中」、前傾倒壊して機能を失っている場合は「大」、と判断します。

 

続いて、擁壁の折損です。こちらも積み系擁壁とコンクリート系擁壁とで判断指標が異なります。まず、練石積み擁壁の折損の程度です。クラックを境に、わずかに傾斜している程度の変状で部分補修によりその機能が回復するものであれば「小」、写真左のように抜け石や裏込コンクリートが見えるような場合は「中」、写真右のように一見して被害が大と判るものは「大」、と判定します。

 

同じく折損で、コンクリート系擁壁の説明です。こちらもクラックを境の傾斜や破壊の程度で判断します。クラックを境にわずかに、前傾している程度の変状で、部分補修によりその機能が回復するものであれば「小」、クラックを境に折れて、前傾しているが部分的な改修で機能が回復するものであれば「中」、せん断破壊で上部が、こうけいしていて全体的に改修を要するなどは、「大」、に分類します。

 

次は、擁壁の崩壊の程度です。この変状は積み系擁壁がほとんどです。この表は、判定票の表現と、じゃっかん異なっておりますが、参考資料の7ページでは、積み系擁壁を練り積みと、から積みに分けて、判りやすく説明されていますので、ここでは参考資料に基づいて説明します。まず練り積み系擁壁です。擁壁の上半分間で滑り崩壊を生じているものは「小」、被災は受けているが基礎部は残っているものは「中」、基礎部を含めすべて崩壊し機能が失われているものは「大」、と分類します。

 

つぎは、張出ししょうばん付擁壁の変状です。支柱の損傷程度で判断し、支柱にクラックが入っている程度のものは「小」。鉄筋が露出している状態のものは「中」。支柱がせん断破壊している状態は「大」と判断します。

 

続いて排水施設の変状になります。排水施設については、基礎点の判定でも出てきましたが、基礎点では、水抜きが規定通りあるか、雨水の背面への浸透を防ぐ施設があるかどうかに着目し、変状の程度は関係ありませんでした。ここでは、この表に記載されているような変状の程度に着目して判断します。被害状況としては、排水施設そのもののずれ等の変状の他にポットホールという小さな陥没や舗装面のクラック等の周辺の変状も擁壁の排水施設の変状としてとらえます。擁壁天端付近の排水側溝の欠損や天端背面のクラックなどがあるものは「小」。小の変状に加え、クラックや目地などから、湧水が有りポットホールも見られるなどの状態は「中」。水抜き穴が詰まって破損があり、排水機能を失っているものは「大」、と分類されます。あと、変状項目の11項目目に擁壁背面の水道管の破裂の項があります。

 

判定票の記入の最後です。危険度の点数を記入する項目と所見を記入する項目になります。まず、危険度ですが基礎点と変状点を記入し、その合計点で危険度を判定します。

 

危険度の判定は合計点がこの表のどの区分に入るかで決定します。擁壁の場合は、判定値が、4.5未満であれば「小」、8.5未満であれば「中」、8.5以上であれば、「大」、となります。そして、最後に所見の覧の記入です。ここでは緊急度と拡大の見込みを記入します。緊急度は、人命、財産、交通の3つの視点で判断します。拡大の見込みは、危険度や緊急度等の評価から総合的に判断することとなります。緊急度、大はすぐに処置しなければならない場合で、放置しておくと二次災害を引き起こす危険性のあるもの、中はある程度の日数は放置しておくことが可能だが長期間放置しておくのは危険であるもの、小はある程度の期間は放置しておくことが可能で人命や構造物に対して危険でないものとします。もし、判断が付かない場合は、判断不可の項目がありますのでそちらをチェックすれば構いません。

 

つぎは、宅地地盤とのり面の調査票になります。この写真は、中越地震で被災した腹付けもりどの崩壊例です。

 

こちらは、擁壁の時、お見せした危険度の判定の実施フローです。宅地地盤とのり面は、こちらになります。擁壁では「基礎点」と「変状点」の合計で危険度を判定しましたが、宅地地盤とのり面は両方とも、「変状点」のみで危険度を判定します。また、調査票も様式2を使用します。宅地地盤とのり面は同じ用紙を使用し対象によって使い分けをします。詳しいフローはお手元のこちらの調査判定の手順をご覧下さい。被災状況図の記入までは先ほどの擁壁の場合と同じです。まず、(1)から(5)までの変状項目において配点し、その最大値を抽出します。また、先ほども少し説明しましたが、宅地地盤とのり面の判定には変状点の一種ですがそれぞれ加算点の変状項目が一項目づつあります。宅地地盤の場合は(6)項目目の、「湧水噴砂の有無」が加算点の変状項目になります。のり面の場合は(8)項目目の、「湧水落石の有無」が加算点の変状項目になります。(1)から(5)までの変状点の最大値と加算点の合計を評価点として危険度を判定します。

 

さてこの図は、宅地地盤の調査を「フロー図」化したものです。まず「宅地の構成要素」を確認します。「擁壁」か「宅地地盤」か「斜面」か、「擁壁」「斜面」であれば各々の調査する内容に行きます。「宅地地盤」であれば、すぐ「変状点」を調査するルートに入ります。

(1)、クラック、(2)、陥没、(3)、沈下、(4)、段差、(5)、隆起の点数を入れます。次に(1)から(5)の最大変状点を抽出します。(6)で、湧水、噴砂の有無を確認し、「ある」で、1点、「ない」でゼロ点の加算です。変状点+湧水・噴砂の加算点の合計で「評価点」とします。

 

こちらは、宅盤、のり面の判定票になります。まず、擁壁の場合と同じように、赤枠の部分にのり面・自然斜面の基礎的条件を記入します。

 

その下が、採点表の記入箇所です。それでは、まず宅地地盤からご説明します。上段の赤枠の部分を使用します。変状項目ごとに順次ご説明します。

 

まず、宅地地盤のクラックです。これは、クラック幅またはその量で判断します。程度の「小」は、クラック幅が3センチメートル未満で単数の場合に該当します。クラック幅が3センチメートルから15センチメートル未満か、3センチメートル未満でもクラックが複数ある場合は「中」程度と判断します。クラック幅が15センチメートル以上か、15センチメートル未満でもクラックが宅盤全面に見られる場合は「大」と判断します。

 

続いて2つ目の変状項目は陥没です。陥没の程度は、陥没の深さで判断します。「小」は、深さが20センチメートル未満、「中」は、20から50センチメートル未満、「大」は、50センチメートル以上となります。

 

つぎは、沈下です。沈下の程度は、沈下量で判断します。沈下量の場合は、10センチメートル未満が「小」、10センチメートルから25センチメートル未満が「中」、25センチメートル以上が「大」となります。

 

つぎの変状項目は宅盤の段差です。これは、段差量のみで判断します。「小」は段差量20センチメートル未満、「中」は20センチメートルから50センチメートル未満、「大」は50センチメートル以上とします。ここまで、陥没、沈下、段差と3種類の変状を説明しましたが、実際に変状を目にしたとき概要説明だけでは、いずれとも判断しがたい場合が出てくるのがこの3変状です。マニュアルの43から45ページに、もう少し詳しい解説がされているので紹介します。陥没は、地中の異物や空洞によって生じたと判断される変状。沈下は、地盤の性状に起因した変状で、液状化や圧密による変状が該当します。また、段差は、地震動による衝撃等によって生じたと推測される変状というように記述されています。参考にしてください。

 

次は、宅地地盤の隆起です。これも沈下と同様、隆起量またはその規模で判断します。隆起量・規模については手元資料をご覧下さい。

 

宅盤の最後は、「湧水・噴砂」です。即ち、液状化現象です。これは、先ほども説明しました加算点項目の変状です。この変状は、変状が確認されたら程度や規模の大小に関わらず

「1点」を加算することになっています。

 

こちらは、宅盤、のり面の判定票になります。まず、擁壁の場合と同じように、赤枠の部分にのり面・自然斜面の基礎的条件を記入します。

 

続いて、のり面・自然斜面の説明に移ります。こちらも様式2を使用します。こちらの3枚目ののり面・自然斜面調査・判定の手順を併せてご覧下さい。のり面・自然斜面はこの部分を使用します。こちらの1から8が変状項目になります。その内8項目目が加算点の変状項目になります。

 

まず最初にクラックです。のり面の場合も、宅盤と同様、クラックはその幅またはその量で判断をします。判断指標は3センチメートル未満又は単数であれば「小」、3から15センチメートル又は複数である場合は「中」、15センチメートル以上又は全面に認められる場合は「大」と判断します。

 

次は、はらみ、盤ぶくれです。これも、隆起量またはその規模で判断をします。判断指標と配点はこの表のようになります。「小」が10センチメートル未満又は1宅地ごとののり面等の面積に対し10パーセント未満、「中」が10から30センチメートル又は10から50パーセント、「大」が30センチメートル以上又は50パーセント以上です。

 

つぎは、ガリー浸食です。この項目は、変状程度で判断します。浸食が始まった状態が「小」、浸食が進み放置すると被害が広がるおそれのある状態が「中」、浸食がこの表の表現にあるように大規模でのり面の下側に被害を及ぼすような状態は「大」と判断します。

 

こちらの写真が、ガリー浸食による被災例です。変状程度としては、左下が「中」、右上が「大」というところでしょうか。

 

つぎは、のり面・自然斜面の滑落、崩壊です。判断指標はこの表のようになります。この滑落・崩壊の変状は被害点では最大の配点となっており小程度でも7点という高配点となっています。「小」が部分的な表層すべり、又はのり面上部の小崩壊、「中」が表層すべりが進んでえぐり取られたような状態で放置すると拡大するおそれのあるもの、又はのり面中部までの崩壊、「大」が全面的なすべり崩壊で、さらに拡大のおそれがあるもの、又はのり面底部を含む全崩壊です。

 

次は、のり面保護工の被害です。ここでは、のり枠工を対象としているようです。判断指標は、この表のようになりますが、クラックや浮き上がりの程度で判断しています。この変状も先ほどの、滑落・崩壊と同様、被害点の配点が高くなっています。「小」がのり枠のま詰め陥没。コンクリート吹付工にわずかにテンションクラックが見られるが吹付工のずれは認められない程度、「中」がのり枠の部分的な破損。また、コンクリート吹付工のクラック部分で陥没・ずれが見受けられる程度、「大」がのり枠のうきあがり破壊。コンクリート吹付工のラス金鋼が露出し、コンクリート吹付面にも破損が見受けられる程度です。

 

こちらの写真が、のり面保護工の被災例です。左上の写真のようにアンカーヘッドが飛んでしまった例もあります。

 

つづいて、排水施設の変状です。この項目は、擁壁でもありましたが、判断指標もほとんど同じで変状点の配点も同じです。また、のちほど見比べてみて下さい。「小」が天端排水施設にずれ、欠損がある又は、天端背面、舗装面にクラックが見られる、「中」が左に加え、のり面のクラック、又は目地からの湧水がある、「大」が排水施設が破断沈下するなど、排水機能が失われているものです。

 

こちらが、排水施設の変状例になります。

 

次はのり面内の水道管の破裂と湧水、落石・転石の2項目の変状です。最初に、のり面内の水道管の破裂ですが、これは変状が確認されれば規模に関係なく8点を付けます。ここまでの変状項目の最大値が変状点となります。次の、湧水、落石・転石が加算点変状となります。変状が認められればこれは規模に関係なく変状点の最大値に1点を加算し評価点とします。

 

以上でのり面・自然斜面の変状確認は終了です。つづいて、擁壁の場合と同様に危険度判定と所見の記入を行います。この部分は、宅地地盤、のり面・自然斜面、共通で使用します。

 

危険度の判定は、宅地地盤・のり面いずれも変状点の最大値と加算点とを合計し、この表から判断します。評価内容はこちらに記載してある通りです。判定値が、1から3点未満であれば、評価区分は「小」で、当面の危険性は少ないとなります。判定値が4から7点未満であれば、評価区分は「中」で、変状は顕著であり、当該宅地に立ち入る場合は、人数を制限するなど充分注意する、変状が進行していれば避難も必要となります。判定値が8点以上であれば、評価区分は「大」となり、変状が特に顕著で、避難・立ち入り禁止措置が必要という位置付けになります。

 

所見の記入は緊急度と拡大の見込みです。これは、擁壁と同じように緊急度は、人命、財産、交通の3つの支店で判断し拡大の見込みは、危険度や緊急度等の評価から総合的に判断することになります。

 

その他の事項になります。この写真は、中越地震における被災宅地相談窓口の状況です。

 

こちらは判定ステッカーになります。「危険宅地」の赤、「要注意宅地」の「黄色」、「調査済み」の「青」、の3種類です。

 

判定ステッカーの実際の貼付例です。右上の写真で2枚貼られている上段が建築の判定です。下が、宅地の判定です。左下の例では、建築は危険、宅地では要注意と判定されています。それぞれの判断基準が異なりますので、建物の判定結果を気にする必要はありません。

 

これは、兵庫県南部地震と新潟県中越地震において、どのような擁壁が被害を受けているかと言うことです。赤い文字の部分を見ますと被災擁壁のうち石積擁壁の占める割合は8割であった。から石積み擁壁は、50パーセント以上損傷している。擁壁基礎を含む周辺地盤の変状に起因しているもの。増し積み擁壁、しょうばん付き張出し擁壁、二段擁壁など既存不適格擁壁(設計以上の載荷重が作用)等。水抜き孔を未設置または、規定に達していないもの。高さが2メートル未満の擁壁で被害を受けているものが多い。とのことでした。

 

高さ2メートル以下の擁壁に被害が多いという理由としては、高さ2メートル以下の擁壁については、工作物の範囲外と言うことで法的適用から外れてしまうと言うことがあるように思われます。

 

以上で終わりです。お疲れ様でした。

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所属課室:県土整備部都市計画課開発審査班

電話番号:043-223-3245

ファックス番号:043-222-7844

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