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ホーム > 環境・まちづくり > まちづくり > 景観・屋外広告物 > ちばの景観づくり > 景観に関するイベント情報 > 過去の景観関連イベント開催結果 > 平成26年度第2回景観セミナーの開催結果
更新日:令和3(2021)年5月13日
ページ番号:16170
平成26年度第2回景観セミナーは、千葉県と酒々井町の共同開催により酒々井町で開催しました。
講師の西口先生から、日本社会における「戦後から現代」の変化、「現代から近い将来」の変化について、統計資料を用いて、事実からわかりやすく解説をいただいたのち、日本の生活に則した景観について、また、景観をとおした官民連携のまちづくりについて御講演いただき、多くの参加者から御意見や御感想をいただきました。
日時:平成26年10月25日(土曜日)13時30分~16時
会場:プリミエール酒々井
内容:講演
講師:西口元(にしぐちはじめ)氏(早稲田大学教授/弁護士)
日本社会の変化について、間違いのない事実から、考えていきましょう。まず、少子高齢化に伴い、若年層は半減し、人口も2060年には9000万人を割り込みます。それから、生産部門だけではなく、企業の中枢部門も海外移転をしていることにより、経済が空洞化していきます。国の借金はウナギ登りで、赤字国債は、通常国債より多く、それらの私共の世代の借金を若い世代が払うことになります。ちなみに、現在の国家予算の中で、年金、医療などの社会保障関係費と国債を合わせると、50%を超えています。また、日本は、戦前の「家制度」の変質に伴う核家族化、現在の独居老人の増加などにより、遠くない将来、家族中心の生活から、地域コミュニティ中心の生活へ移行することになります。人口が減れば、市町村の収入は減ります。また、老人が増えると支出が増えます。先の事実より、市町村頼みのサービスでは、財政面は苦しい状況になっていく(すでになっている)のです。以上のことは、すべて、事実ですから、私達は、これらの現実を踏まえ、日本はどうあるべきか、日本と国民の生活を考えていかなければいけません。
生活を考えるにあたり、市町村の財政状況から考えます。市町村の税収を増やすため、各市町村の人口を増やさなくていけません。人口を増やすためには、若者に住んでもらわなければなりません。では、若者が住みたい街の要件とはなんでしょうか。(1)通勤時間が短いこと、(2)子育て環境がよいこと、(3)住環境がよいことです。例えば(1)については、必要な施設が手近なところにあるまちであるコンパクトシティがあげられるでしょう。(2)については、育児施設や教育施設も関係します。例えば、大学進学率ですが、首都圏と地方では差がありますから、この分野は首都圏が有利でしょう。(3)は景色なども含まれますので、自然や歴史があるまちは有利です。これらの(1)交通の利便性、(2)子育て施設の充実、(3)自然や歴史の継承は、そのまちの「景観」に関係しています。また、ある地価調査の結果によれば、地価の1割は「景観」に左右されるそうです。金沢や鎌倉等は、同じ経済圏でも不動産価格は、高い傾向にありますが、これはブランドづくりにより、地域価値があがった例でしょう。つまり、「景観」が整うと人口が増え、経済的な利益をもたらすのです。
ここで、法律の観点からお話をしましょう。景観法第2条第2項には『良好な景観は、「地域の自然、歴史、文化等」と「人々の生活、経済活動等」との調和により形成される』とあり、「景観」の定義がありません。「景観」には主観性、地域性があり、「景観形成」においては、その地域の合意、協力、場合によっては専門家が必要です。それから、景観法では、主に市町村を景観行政の担い手とした「景観行政団体」を定め、「景観行政団体」は「景観計画」を策定することができます。この「景観計画」を策定するにあたっては、公聴会の開催等により住民の意見を反映させるための措置を講じる必要があります。景観法は、「国はあれやこれやいわず、市町村にお任せします。」という法律で、優れた景観は、見えない住民意識の高さ、生活の仕組みやルールのよさ等を反映したものですから、「がんばった市町村」と「がんばらない市町村」では格差がでます。それは人口格差となり、人口が減った市町村は消滅するしかないのです。
最初に、日本社会の変化のお話をしましたが、市町村頼みでは財政が厳しい中、地域の価値を高めるために「景観」からのまちづくりには有効です。そして「官」と「民」の協働が必要かつ重要です。「官」は役所などの行政、「民」は住民です。意見を集約するのは「官」主体ですが、活用については「民」が主体となります。「景観計画」の策定に関しては、有志によるプロジェクトチーム→自治会などの地縁団体→主に小学校区を基準とする町づくり協議会の順となるでしょう。有志によるプロジェクトチームが大所帯であったとしても、だいたいその中の1割の方が中心になって活動されることになると思います。
これからの日本は、人口が減少するわけですから、たゆまぬ自己改革をしない地方自治体は、消滅します。景観法は景観形成の基準等を市町村の条例に大幅に委任していますから、まさに、魅力あるまちづくりに向けての「大競争時代」に突入したのです。地域住民の自主的な景観形成活動に対し、行政が側面支援をすることにより、地域住民の主体性を尊重したまちづくり、景観づくりを行い、日本人のライフスタイルを「量」から「質」へパラダイム変換しましょう。(パラダイム変換=社会の規範や価値観の変更、発送の転換)
酒々井町 小坂泰久 町長
西口 元 氏
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