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更新日:令和4(2022)年6月30日

ページ番号:7478

作業の分業による酪農地域の活性化~TMRセンター、飼料生産コントラクターに続く民間育成牧場の取組~

1.県内初の民間育成牧場

平成28年5月、南房総市和田町に県内初の民間育成牧場「スノー・フィード中三原ファーム」が開設されました。

開設当初の50頭から順次規模を拡大し、現在(令和4年5月時点)はホルスタイン種育成牛134頭のほか自社所有の和牛7頭と交雑種11頭を飼育しています。

育成成績も良く、預託の要望も多いです。

※令和4年5月現在、飼料代高騰により受け入れを中止しています。

2.酪農の理想郷を作りたい

朝晩の搾乳・給餌に始まり、子牛の世話、ふん尿の処理、自給飼料を栽培すればさらに労働時間が増え、中小規模の酪農家は依然として厳しい労働環境におかれています。このような状況からくる後継者不足、従事者の高齢化は深刻で、安房地域でも平成17年からの10年間で半数の酪農家が離農しています。

厳しい環境の中、南房総市和田地区では関係者の雑談がきっかけとなりはじまった「和田町を酪農の理想郷へ」との構想が酪農家、飼料メーカー、飼料販売業者、家畜診療所及び行政の連携により着実に実現されてきています。

3.分業(外部化)による酪農をしやすい仕組みづくり

酪農家が多くの仕事に追われる中、作業の分業により時間、労働力に余裕を持った経営ができるよう、3つの仕組みが作られました。

(1)TMRセンターの設立

1つ目の取組として、飼料調製・給餌の分業です。飼料販売業者が母体となり平成21年に(株)スノー・フィード・サービスとしてTMRセンターが設立されました。酪農家では、安定した飼料が入り生産が安定するとともに飼料調製や給餌にかかる労働力・時間が大きく削減されました。

※TMR:TotalMixedRationの頭文字で「混合飼料」「完全飼料」などとも呼ばれ、粗飼料と濃厚飼料を混ぜ合わせた飼料

※TMRセンター:TMRを大規模に製造し、養牛農家へ供給する施設

(2)飼料生産コントラクターの設立

2つ目は、自給飼料生産の分業です。TMRセンター設立の翌年に飼料生産コントラクター「NFC和田」が立ち上がり、「自給飼料の生産からTMRの調製・給餌まで」を経営から分離できたことで、自給飼料の生産や給餌に要する労働力と時間が大幅に減りました。また、個々で飼料生産機械を持つ必要がなくなったことから機械費用の削減にも繋がっています。

(3)育成牧場の開設

3つ目は、育成牛管理の分業です。全国的にも育成牧場はあり、県内でも県・市合わせて3つの公共牧場がありますが、民間の育成牧場としては県内初の取組です。育成牛の預託により、酪農家は親牛の管理に注力でき、生産性の向上が期待できます。スノー・フィード中三原ファームの強みとして丁寧な育成管理が上げられます。家畜診療所や飼料メーカーの指導・助言を受けながら、地元高校の畜産を専攻した卒業生が中心となって働き、預ける酪農家からは、牛の状態が良いと高く評価されています。また、繁殖状況や疾病など、酪農家や家畜診療所と密に連絡を取ることで、繁殖の要望や疾病に対しスムーズな対応ができることも大きな強みとなっています。

畜産7月写真1
写真1.家畜人工授精師とともに人工授精を行う職員

畜産7月写真2

写真2.丁寧な管理でいつもきれいな牛舎

4.将来に向けて

これら3つの仕組みにより、酪農家は時間と労働力に余裕ができ、適切な飼養管理による生産性の向上や体力に無理のない経営が可能となりました。

地域の将来を見据えて、酪農家と関係者が一体となって取り組んだことで、酪農の理想郷に大きく近づいています。これらの仕組みもあり、昨年と今年で和田地区に4名の後継者が就農しました。とても大きな成果です。

しかし、3つの仕組みも万能ではありません。輸入乾草価格の高騰などによる飼料費の値上がり、自給飼料の収穫量の減少、コントラクターオペレーターの高齢化などの課題もあります。酪農の理想郷に向けて、それぞれの仕組みのさらなる改善を進めています。

 

初掲載:令和元年7月
安房農業事務所改良普及課
南房総・鋸南グループ
普及指導員
野中太輔
電話:0470-22-8132

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

電話番号:043-223-2911

ファックス番号:043-201-2615

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