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更新日:令和3(2021)年8月25日
ページ番号:7450
千葉県のサツマイモは貯蔵出荷が中心で、収穫したいもは土付きのまま一旦貯蔵し、出荷時に高圧水で洗浄されます。この洗浄の際に、いもの皮がむけてしまう「皮むけ」(写真1)は、商品性を著しく損なうため大きな問題となります。ここでは、特に皮むけ発生の多い「べにはるか」を中心に、栽培・貯蔵条件が皮むけ発生に及ぼす影響と、皮むけの軽減対策について紹介します。
写真1.「べにはるか」の皮むけ
皮むけ発生は、「べにはるか」で特に多く、「ベニアズマ」、「高系14号」、「シルクスイート」で少ないことがわかりました。「べにはるか」で、生育期間を135日、149日、165日、基肥窒素施用量を10アールあたり0キログラム(草勢中)、6キログラム(草勢やや強)と変えても、皮むけ発生に差はなく、栽培条件の影響はみられませんでした。
いもが腐敗しにくい14度、湿度90パーセント以上の好適条件で「べにはるか」を貯蔵する試験を複数回行いました。すると、皮むけの発生は、貯蔵1週間後では少なく、その後増加し、4週間前後で最も多くなり、その後減少して、いずれの試験でも6から8週間後に発生が無くなりました(図1)。発生のピークが前後する場合もあることから、確実に発生を抑制するためには、貯蔵期間を8週間以上確保します。
11度の低温条件の貯蔵は、糖化促進の目的から腐敗しにくい「べにはるか」で行われる場合がありますが、皮むけ発生の抑制効果も認められます。ただし、4週間以上の長期間の低温貯蔵では、「べにはるか」でも腐敗リスクが高まります。また、皮むけ抑制効果は、低温から好適条件に移すと失われます。11度で2週間貯蔵した後に14度に移した1週間以降に皮むけが多発しました(図1)。
低湿度条件でも、皮むけ発生が抑制されます。乾燥による腐敗が発生しにくい「べにはるか」には有効な対策ですが、湿度70パーセント台では皮色が暗黒化し、外観品質が悪くなるため、過度な保湿を避ける程度とします。
元々、腐敗防止を目的に行われますが、収穫直後に32度、湿度90パーセント台で5日間キュアリング処理した後に、好適条件で貯蔵することで、皮むけ発生が抑制されます。
図1.14度の好適条件と11度2週間貯蔵後14度貯蔵したときの「べにはるか」の皮むけ発生度の推移
注1)平成29年5月15日植付け、10月3日収穫
注2)イモを詰めたコンテナ内をポリフィルム包装して保湿
注3)皮むけ発生度は、皮むけ程度を指数0(無・微)から3(大)の4段階で判定し次式から算出
発生度=[∑(指数×いも数)/(全いも数×3)]×100
以上の他に、皮むけが多発する際の緊急避難的な対策として、出荷洗浄前1日間の低温(11度)保管や天日干しに効果があることがわかりました(表1)。
保管条件 | 皮向け発生率(パーセント) | 発生度 |
---|---|---|
14度貯蔵庫(保湿) | 58.3 | 22 |
11度貯蔵庫(保湿) | 16.7 | 6 |
天日干し→作業場 | 25.0 | 8 |
作業場 | 33.3 | 13 |
18度貯蔵庫(保湿) | 37.5 | 13 |
14度貯蔵庫(保湿無し) | 54.2 | 18 |
注1)平成28年10月21日収穫、14度湿度90パーセント貯蔵5週間後の皮むけ多発いもで試験を実施
注2)天日干し(6時間)の気温7から13度、湿度58から75パーセント
注3)作業場の気温3.2から11.4度、湿度63から95パーセント
注4)発生度は図1の注3)に同じ
初掲載:平成30年8月
農林総合研究センター
水稲・畑地園芸研究所
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