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更新日:令和4(2022)年1月5日

ページ番号:7461

EOD-heating処理を応用したアジサイの低コスト栽培技術

1.はじめに

近年、母の日の新たな商材として、鉢物アジサイの需要が高まっています。アジサイを母の日に合わせて出荷するには、4月下旬から5月上旬までに開花させなくてはなりません。そのためには、2月上旬から暖房を開始する必要があります。この作型は、一年で最も寒い時期に暖房を行うため、燃料コストが多くなります。そこで、EOD-heating処理と呼ばれる方法を応用した変温管理技術を用いることで、燃料消費量を削減する栽培方法を開発したので、紹介します。

2.EOD-heating処理とは

EODとはEnd of Day(日の入り)の略で、日の入り後数時間の温度を上げて管理する方法をEOD-heating処理と呼びます。この時間帯の温度は開花に大きく影響することが知られており、この処理を行うと開花が早まることが複数の植物で報告されています。

3.EOD-heating処理を応用した変温管理栽培

アジサイの夜間の暖房は、一定の温度で加温する方法が一般的です。EOD-heating処理を行うことで開花が早まるのであれば、それ以外の時間帯をこれまでより低い温度で加温しても、慣行と同時期に開花させることができるのではないかと考えました。そこで、日の入り後3時間を20度で加温し、その後日の出までを12度とするEOD20度/12度の変温管理栽培と、慣行の16度一定加温栽培が開花及び生育に及ぼす影響を比較しました(図1)。 

試験区の加温方法

図1_試験区の加温方法

4.変温管理栽培による燃料消費量の削減

EOD20度/12度栽培の燃料消費量は16度一定加温栽培に比べ、約20パーセント減少しました(表1)。

表1_温度管理の違いが燃料消費量に及ぼす影響

温度管理の違いが燃料消費量に及ぼす影響

注1)温度管理:EOD20度/12度;日の入り後3時間20度、その後日の出まで12度加温。16度一定;日の入りから日の出まで16度加温

注2)燃料消費量は幅5.6メートル×奥行き9.0メートル×高さ3.8メートルのガラスハウスにおいてネポン株式会社製温風機(KA-125:燃料消費量1時間あたり1.7リットル、定格暖房出力14W)を用いた際の灯油の消費量を示す

注3)燃料消費量:実数(L)は平成28年2月4日から4月30日の値を示す。割合(パーセント)は16度一定区の値を100として換算した際の値を示す。

5.変温管理栽培が開花及び生育に及ぼす影響

EOD20度/12度栽培した株の開花日及び草姿は16度一定加温栽培と同等となりました(表2)。

表2_加温方法の違いがアジサイ「ピンクダイヤモンド」の開花及び生育に及ぼす影響
温度管理 開花日 草丈(センチメートル) 株幅(センチメートル) 新梢長(センチメートル) 花房径(センチメートル)
EOD20度/12度 4月26日 34.9 42.6 18.7 23.4
16度一定 4月25日 35.8 42.7 17.9 23.4

注1)温度管理:表1と同様

注2)耕種概要:挿し芽;平成27年5月8日、鉢上げ(3号ポット);平成27年7月9日、鉢替え(5号鉢);平成28年1月28日、加温期間;平成28年2月3日から4月30日

注3)いずれの項目も分散分析で有意差は認められなかった

 

これらのことから、EOD20度/12度栽培を行うことで、16度一定加温栽培に比べ暖房の燃料消費量を約2割削減させつつ、同等の草姿のものを同時期に開花させることができます。

5.おわりに

EOD-heating処理を応用した変温管理栽培は、日の入り後の温度確保が重要です。アジサイでは、この時間帯の温度が十分に確保できないと開花が遅れ、草丈が長くなることが明らかとなっています。本技術の導入の際には、事前に暖房機の性能と温度確保ができることを確認しておく必要があります。

初掲載:平成30年12月

農林総合研究センター

花植木研究室

研究員

中島拓

電話:043-291-0151

お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

電話番号:043-223-2911

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