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更新日:平成30(2018)年8月8日

施設栽培に適したびわ新品種「はるたより」の特性

1.はじめに

千葉県のびわは、全国第2位の産出額を誇っており、大都市から近い立地条件を活かして直売やびわ狩りも盛んに行われています。

現在、露地では「大房」及び「田中」、施設では「富房」及び「瑞穂」が栽培されており、品種構成に偏りがみられます。そのため、摘房・摘らい、摘果・袋かけなどの結実管理や収穫・出荷の時期に作業が集中してしまいます。経営規模の拡大を図るためには、開花及び果実の生育時期が異なる品種を導入して、作業時期を分散させることが重要です。

平成26年に品種登録された「はるたより」は、千葉県の施設栽培での主力品種「富房」と比較して、開花及び果実の生育が早いため、結実管理や収穫・出荷が早くなります。また、食味が良く、早生種としては大果という特徴があります。「はるたより」は、許諾を受けた種苗会社から苗木を購入すれば、県内でも栽培が可能です。今後、千葉県への導入・普及が期待できるので、これまでに得られた特性について紹介します。

2.育成経過

「はるたより」は、長崎県果樹試験場(現長崎県農林技術開発センター)で、昭和63年に「長崎早生」を種子親として「77-856」(「シャンパン」×「津雲」)の花粉を交配して育成されました。千葉県を含む8公設研究機関で優秀性が認められ、平成26年に品種登録されました。

3.品種特性

(1)樹体の特性

樹勢は中で、枝の発生数は中程度、樹姿はやや直立性を示します(表1、写真1)。主要病害であるがんしゅ病に抵抗性があります。

(2)開花特性及び収穫期

側軸の着生方向はやや上向きで、開花期は11月上旬~12月中旬です(表1)。凍害には弱いため、千葉県では施設栽培が中心になり、収穫期は5月上旬で「富房」より早くなります(表2)。

(3)果実特性

果実は長卵形で、果頂部は凹み、がく片はやや閉じやすい傾向があります。1果実重は77グラム程度で、「富房」よりやや小さくなりますが、早生種としては大果です。果皮と果肉は橙黄色で、果皮にはそばかす症がわずかに発生しますが、そのほかの生理障害の発生はほとんどみられません(表2、写真2)。紫斑症(赤あざ)の発生は少ないので、びわ10号袋(小林製袋産業株式会社)での栽培が可能です。また、びわ12号袋(小林製袋産業株式会社)では、そばかす症の発生がわずかに抑えられます。
果肉が軟らかく、糖度が高く、酸が低いので、総合的な食味評価は良好です(表3)。

表1.施設栽培における「はるたより」の樹体特性、出蕾期、開花期

品種名 樹姿 樹勢 側軸
着生
方向
出蕾期 開花期(月.日)
始期 盛期 終期
(月.日)
はるたより やや直立 やや上 9.13 11.13 11.29 12.17
富房 直立 水平 9.10 11.16 12.11 1.4

注1)「はるたより」平成18年定植、「富房」平成3年定植、それぞれ異なる圃場で平成23~26年度の4か年平均
注2)冬季の暖房開始気温:平成25年度は4℃、それ以外は5℃で設定し12月下旬から4月中旬まで加温
注3)びわ12号袋(小林製袋産業株式会社)を用いた
注4)樹姿:直立、やや直立、中間、やや開張、開張に区分
注5)樹勢:弱、やや弱、中、やや強、強に区分
注6)側軸着生方向:下、やや下、水平、やや上、上に区分
注7)出蕾期:結果枝全体の10%に蕾が出現した日
注8)開花期:花房全体のうち10%が開花した日を始期、50%を盛期、90%を終期

表2.施設栽培における「はるたより」の収穫日、収量、果実の外観及び生理障害の発生

品種名 平均
収穫日
(月.日)
収量
(キログラム/樹)
果実の外観 果皮の生理障害
果皮
の色

1果実重

(グラム)

側面
の形
そば
かす
裂果 紫斑症
はるたより 5.6 15.9 橙黄 77 長卵
富房 5.17 - 橙黄 88 短卵

注1)収量は平成26年度の値、それ以外は平成23~26年度の4か年平均値
注2)果皮の色:白、黄白、淡橙黄、橙黄、橙に区分
注3)側面の形:扁円、円、短卵、短楕円、長卵、長楕円に区分
注4)そばかす、裂果、紫斑症:無、微、軽、中、甚に区分

表3.施設栽培における「はるたより」の果肉、糖度、酸含量及び食味

品種名 果肉色 果肉硬度 果汁 食味
糖度
(Brix%)
酸含量
(グラム/100ミリリットル)
はるたより 橙黄 13.2 0.22
富房 橙黄 やや硬 11.7 0.34

注1)平成23~26年度の4か年平均値
注2)果肉の硬度:軟、やや軟、中、やや硬、硬に区
注3)果肉色:白、黄白、淡橙黄、橙黄、橙に区分
注4)糖度:屈折糖度計(ATAGO、PAL-1)によって測定した可溶性固形物含
注5)酸含量:水酸化ナトリウムで中和される酸の含量をリンゴ酸に換算した値
注6)食味:不良、やや不良、中、やや良、良に区分

写真1はるたより樹姿(施設)
写真1施設栽培9年生樹の樹形(中央)

写真2はるたより着果状況
写真2はるたより着果状況

(4)栽培上の留意点

やや直立性の樹形を示すので、幼木期から成木期にかけて主枝を誘引して開張形に仕立てると管理しやすくなります。
果実は凍害を受けやすいので、露地栽培では、早期摘らいによる開花期の延長、防霜ファンの設置、燃焼法の実施などによる凍害対策が必須になります。

(5)おわりに

「はるたより」を導入することによって、集中する管理作業が分散し、規模拡大だけでなく、既存品種の管理も余裕を持って適期に行うことができるので、品質の向上にもつながります。びわの施設栽培が始まり30年を過ぎました。今後も発展し続けていくために、「はるたより」の導入が品種構成や老木の更新を考えるきっかけになれば幸いです。

注)なお、本試験は、第3回系統適応性検定試験(平成15~22年度)及び農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(平成23~25年度)を活用して実施しました

 

初掲載:平成27年8月

農林総合研究センター
暖地園芸研究所特産果樹研究室
研究員
蔦木康徳
(電話:0470-22-2603)

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お問い合わせ

所属課室:農林水産部担い手支援課専門普及指導室

電話番号:043-223-2913

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