緑肥「へアリーベッチ」を活用して水稲栽培の化学肥料低減に取り組んでいます
環境保全型農業への関心の高まり、化学肥料の低減を目指す動き等から、冬場、水田に緑肥「ヘアリーベッチ」を作付けし、春にすき込んで水稲を栽培する取り組みが、印旛管内の若手生産者を中心に広がりをみせています。
栽培する水稲品種によって、すき込む緑肥の量を調整した結果、基肥、穂肥ともに化学肥料を使用することなく、慣行と同程度の収量が得られています。
図1.すき込み直前の様子
水田緑肥「ヘアリーベッチ」とは?
ヘアリーベッチは、マメ科一年生の緑肥作物です。秋から春にかけて栽培し、水田にすき込むことで、化学肥料代替効果、土壌改善効果、アレロパシーによる抑草効果が期待できると言われています。印旛管内では、主に「ふさこがね」等、栽培に肥料をたくさん必要とし、倒伏に強い品種を用いて、肥料代替を目的とした栽培が行われています。
ヘアリーベッチの品種
- 早生種・・・「まめ助」(雪印種苗)、「まめっこ」(カネコ種苗)等
- 上記の早生種は、3月下旬から4月上旬までに、必要な生育量を確保することができます。5月上旬頃までの田植えの場合には、早生種が向いています。現在、印旛管内で主に栽培されている品種です。
- 晩生種・・・「寒太郎」(雪印種苗)
- 早生種に比べ、生育量が確保できる時期が遅れるため、田植えが遅い場合(5月中下旬以降の田植え)等に利用されています。
「ヘアリーベッチ」栽培のポイント
ヘアリーベッチの生育ムラは、水稲の生育ムラにつながるため、まずは、ヘアリーベッチを均一に生育させることが重要となります。
- 湿害対策を万全に!
ヘアリーベッチは畑地の作物であるため、播種後、ほ場表面に水が溜まるような条件では、発芽や生育が極端に悪くなります。このため、ほ場条件にあわせて、排水対策をしっかり行う必要があります。
排水溝を整備した場合は、排水路にしっかり接続します(排水溝を切っても、水がはけなくては意味がありません)。
- 播種は10月中旬までに!
播種適期は、早生種・晩生種とも、10月上中旬です。播種時期が遅れると、越冬前の生育量が確保できなくなるため、播き遅れないように注意します。播種量は、10アール当たり4キログラムを基本とします。
- 生育量を確認し、すき込みを!
冬期の生育は緩慢ですが、3月中旬頃から生育量が急激に増加するので、生育量に注意します。概ね生育量が確保できたと思われたら下記の方法により坪刈りをし、推定窒素量を確認します。
後作の水稲品種の倒伏性等に考慮し、ヘアリーベッチを鋤き込む時期により、すき込む窒素量を調整します。必要なすき込み窒素量(推定)が確保できた時点で、ロータリ等ですき込みます。現地ではすき込みから田植えまでの期間は2週間程度です。それぐらいの期間であれば分解によるガス湧きの問題は生じないようです。
〔推定窒素量の計算方法〕
- ほ場内でヘアリーベッチの生育が平均的なところを選びます。
- 50cm×50cm範囲のヘアリーベッチ地上部を刈取りします(図2,3)。
- 重さを測り、下記の計算式により、おおよその窒素量を推定します(図4)。
- 計算式
{生重(g)×4}×0.0038(窒素含有量の係数)=推定窒素量(kg/10a)
平方メートル当たり生重(g)に換算
※例えば、坪刈りで、地上部生体重が700gだった場合には、
{700g×4}×0.0038=10.6kgの窒素量であると推定します。
図2.50cm×50cm範囲
図3.ヘアリーベッチ地上部の刈り取り
図4.重さを測り、計算式により、おおよその窒素量を推定
初掲載:平成26年9月
印旛農業事務所改良普及課
中部グループ
上席普及指導員
中村悦子
(電話:043-483-1124)
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