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更新日:令和3(2021)年6月28日
ページ番号:7243
現在、一般に流通しているイチジクの品種は大半が「桝井ドーフィン」です。これは、「桝井ドーフィン」がイチジクの中では比較的日持ち性や輸送性に優れることが一つの要因となっています。しかし、輸送を前提としない観光摘み取りや直売経営では、日持ち性や輸送性が多少悪くても、美味しい品種や特徴のある品種等、品種選びの幅を広げることが可能です。
そこで、既存の14品種について、果実重、収量、食味の調査を行い、観光・直売向けの品種を選定しました。
果実重は、供試した品種のほとんどが60グラム以下で、唯一「バナーネ」が80グラム程度と対照品種である「桝井ドーフィン」並みでした(表1)。収量は、「バナーネ」、「ホワイトゼノア」、「早生日本種」が「桝井ドーフィン」より優れていました。これと食味調査の結果(図1)を併せて、観光・直売向けに最も有望な品種として、果実重、収量、食味がともに優れる「バナーネ」を、次いで、食味が良い「ブラウンターキー」を選定しました。
「バナーネ」:果実重は80グラム程度と「桝井ドーフィン」並の大果で、食味評価も高い品種です。裂果は「桝井ドーフィン」並です。果皮がやや薄く剥けやすいですが、多収でかつ長期にわたり途切れず安定して収穫できます。樹勢も中位で栽培しやすい品種です。
「ブラウンターキー」:欧米ではポピュラーな品種です。果実重は50グラム程度であり、収量は「桝井ドーフィン」よりやや少ないですが、食味は良好です。1節に2果着生する枝が多いのが特徴的で、裂果は「桝井ドーフィン」並です。
酸味のある品種は、酸味を好む新たな消費者の獲得が期待でき、加工にも適するとされています。今回供試した中では「ネグローネ」、「ブルジャソットグリース」、「早生日本種」の3品種に酸味がありましたが、「早生日本種」は果頂部が大きく裂開する場合が多いため、「ブルジャソットグリース」と「ネグローネ」を選定しました。これら酸味のある品種は、熟し方が足りないと“甘みが少ない”と感じやすいので、適熟果を収穫することが重要です。
「ネグローネ」:果実重が30グラム程度とやや小さいですが、イチジクの品種のなかではしっかりとした酸味が感じられる品種です。果皮が紫黒色で美しく、ケーキ等の飾りにも適しています。果実の成熟のスピードがやや遅く、気温が低下する収穫期後半の果実は成熟しないものが多くなるため、施設栽培に向いています。
「ブルジャソットグリース」:果実断面が鮮紅色で美しく、甘みと酸味のバランスが良い品種です。果実重は50グラム程度であり、収量は中位です。
夏果専用種の「ビオレドーフィン」、「キング」は収穫期が7月となるため、有利販売が期待できます。「ビオレドーフィン」は、果実は大きいものの収量が少ないため、大果で収量も多い「キング」を選定しました。
「キング」:6月下旬から7月上旬に収穫できる夏果専用種です。夏果専用種の中では収量が多く、果実重は70グラム程度です。収穫期間が短いため、他の品種を補完するための品種として位置づけるとよいでしょう。
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写真1「バナーネ」
写真2「ブラウンターキー」
写真3「ネグローネ」
写真4「ブルジャソットグリース」
写真5「キング」
初掲載:平成23年10月
農林総合研究センター生産技術部果樹研究室
果樹育種試験地研究員小出香
(電話:043-291-0006)
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