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更新日:平成28(2016)年3月29日

フォレストレター36号(2004年2月)

山武の森から

県民参加型の森づくり事業への技術支援

本県においても放置された里山が多くみられ、森林の持つ公益的機能の衰えが懸念されています。そこで、ちばフォレストプラン21(千葉県2003)にも示されている県民参加・県民主役の森づくりの施策展開が始まろうとしています。

こうした森づくりでは「新しい里山づくり」が望まれており、たとえば森林の持つ公益的機能の増強と森林資源の活用を図り、加えて森づくり作業と森林レクリエーションなどにより参加県民の生きがいや健康づくりも求められています。しかしながら、この森づくりでは技術的な主な問題だけでも、たとえば如何なる整備目標を持ち、森を如何に活用するかの方針やそれに基づく整備や活用方法などが定まっていない状況です。

こうした背景を受けて、県の「千年の森づくり事業」では、県民と行政とのパートナーシップに基づく、「新しい里山づくり」のモデルが模索されました。このワークショップでは平成13年から3カ年間で14回、県有林の豊英島の森で公募県民61名、通常約30~40名の参加で森づくりが行われ、当研究センターもこれに技術支援しました。そこでは森づくり企画を通して後述の森づくりの目標を協議によって設定し、同時に森づくりに向けてモデル的作業と活用が行われました。

ここで実施された当センターの主な技術支援は、森の整備目標と活用に関しての原案の作成と現地での指導でした。この際の整備や活用はその基本方針を平成15年の第54回全国植樹祭の開催理念に求め、「資源循環型社会の森林づくり」及び「参画社会のみどりづくり」を踏まえ、21世紀を契機とする超長期(千年)の森づくりに置きました。

そこで、設定された整備目標は森の生態とその位置付けを踏まえた、貴重な植物や植生の保護、二次林の多様で活力のある維持を長期的に目指すものになりました。具体的には分布していたモミ・ツガの自然林が保護、シイ・カシ萌芽林の一部がシイの自然林に復元、貴重種が生育する同萌芽林の一部が現状維持、他のコナラの二次林などが改良に設定されました。改良はさらに公益的機能の高い落葉広葉樹の巨木林、活力のあるコナラ林や落葉広葉樹の景観林に細分されました。

また、活用内容は現地の森に生育するハリギリなどの山菜やヤマボウシなどの果実の採取と、改良などの森づくりで発生する伐採木を用いたきのこ栽培や炭焼きでした。また、これら森づくりで資源循環型を目指しますと、林産物の活用が森の整備規模を制限させたため、これらが一体となって連携されるべきものと理解されました。

以上の経験により、「新しい里山づくり」を模索する上では県民参加型の森づくりが有効なものと確信しました。今後も、こうした森づくりが公的に望むものを目指す意味において、当センターでは森づくり目標や活用に関し技術開発や支援を実施する予定です。なお、ここで試みられた森づくり活動の成果は参加者が同上の全国植樹祭で県民参加型のモデルとして発表しました。また、今後も参加者が立ち上げた「ちば千年の森をつくる会」の活動内容(活動協定書により2003年11月から2008年3月まで確保)として、成果の大半が活かされることになっています。

(特用林産研究室小平哲夫)

研究トピック

林床は落葉・落枝の分解場所

毎年多量の葉や枝が地表に落ちて積もりますが、気候や森林や土壌に合わせて落葉落枝の厚さはいつも一定に保たれています。森林の地表には多数の土壌動物が生息し、落葉落枝の分解に関わっています。

では、千葉県北総台地ではどの位の土壌動物が生息しているのでしょうか。土壌を垂直に10cmずつ区分して大形土壌動物を採集したところ、地表の落葉落枝層と土壌層0~10cmで最も多くの大形土壌動物が採集され、10cm以下では急激に個体数が減少しました(下図)。種類でも、落葉落枝層と土壌層0~10cmに多様な動物群が生息していたのに対し、10cm以下では土壌中に潜るジムカデやコウチュウ(幼虫)などごくわずかでした。

土壌動物の大きさを表わす現存量(湿重量)では、落葉落枝層で最も多く、土壌層0~10cmで60%程度に減少し、10cm以下では急激に減少しました(下図)。落葉落枝層と土壌層0~10cm合わせた個体数は1,532頭/m2、現存量は19.8g/m2にもなりました。

どのような種類が多く生息しているかと言うと、ミミズ類、クモ類、ヒメフナムシ類、ワラジムシ類、ヤスデ類、ムカデ類、ハエ類(幼虫)、コウチュウ類(成虫、幼虫)、アリ類などです。

全大形土壌動物に対する植物遺体を食べて粉砕する動物たちの割合を求めると、個体数を大きく増減させるアリ類を除くと58%となりました。現存量では90%と、分解に関わる大形土壌動物が多量であることがわかりました。

では、この林床にスギチップを堆積させると大形土壌動物はどのように変化するのでしょうか。林床にスギチップを山積みした場合、散布した場合そして1mm目の網袋に入れて積んだ場合を数年後に比較すると、林床で山積みした場合に大形土壌動物数が最も多く、中でも植物遺体を食物とするヤスデ類とワラジムシ類が特に増加していました。このことは食物となるチップが増加したことにより摂食する動物が増加したと考えられます。これに対し、網袋に入れたチップではクモ類やムカデ類が多く生息し、分解に関わる動物数の割合は低率でした。ヤスデ類やワラジムシ類が網袋に侵入できず、クモ類やムカデ類の隠れ場所になっていたと思われます。

このように林床は、私たちの目には触れませんが、多数の動物たちが活躍する分解場所となっています。

図大型土壌動物の垂直分布

(森林保全研究室石谷栄次)

研究室の窓

今年のスギ花粉量は少ない!

環境機能研究室

またまたスギ花粉の季節がやってきました。この紙面が皆さんのお手元に届くころには、すでにいくつかの都県で今年のスギ花粉量の予測が発表されているかもしれませんね。千葉県におけるスギ花粉量はどうなるでしょうか?

今年の予測情報については、1月7日に発表され、新聞や千葉県庁のホームページで、すでにご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが、その概略をお知らせします。

当センターで行った調査結果を見ると、どうやらこの春の花粉量は少なめとなりそうです。当センターが、昨年末に県内45箇所の調査林で花粉を放出するスギ雄花の着生状況を調べた結果、雄花の量を示す着花指数はすべての調査林において前年の値よりも小さくなり、県内全域で雄花の量が少ないことが明らかになりました。また、着花指数から推定される雄花の生産量は、昨年の3割程度と大幅に少なくなりました。

したがって、飛散する花粉量も昨年の3割程度に減少するものと予想されます。なお、この量は、平成7年からの10年間でみると、平成11年に次いで2番目に少ない量となります。このように少なくなった原因としては、昨年の夏の気象条件が冷涼であったことが考えられます。

ただし、全体量としては少なくても、気象条件や周囲のスギ林の状況等により一時的に大量に飛散する可能性もありますので、花粉症の方はしっかりとした対策をとることをお勧めします。予測情報の詳細については、千葉県庁のホームページ(http://www.pref.chiba.lg.jp/)、森林研究センターのホーム・ぺージ(URLは表紙に記載)をご覧ください。

(福島成樹)

松くい虫被害木の年越し枯れ

森林保全研究室

県内では松くい虫(マツ材線虫病)に罹ったマツは夏から秋にかけて葉が赤褐色に枯れるのが多く見られます。年が明けてから枯れるものを年越し枯れと言いますが、県内でも若干見られま.す。一方、東北地方等の寒冷地では気温が低いため、本病に罹病してから発病に至る期問が長いので年越し枯れが多く、発生する被害木の約半分とも言われています。そのため年越し枯れが翌年の被害と重なることも多いことが知られています。

千葉県において1970年代に行われた調査では、マツ材線虫病に罹ったマツの枯れは8月から始まり翌年3月で終息していました。しかし最近は4月以降にも新たな枯れが見られるため、平成14年から一宮町の保安林で約300本のマツを毎月継続して調査し、枯死木の発生状態等を観察しました。その結果、年越し枯れは4月以降も僅かながら発生し、7月まで続くことが確認されました。8月にも年越し枯れが発生しているかもしれませんが、この時期の枯れ方は急なので、確証は得られませんでした。本県のように温暖な地域で年越し枯れが7月まで続くようになった理由はまだ明らかになっていません。

松くい虫被害は夏が高温少雨の年に多いと言われています。平成15年の夏は低温多雨でした。確かに8月の枯死木の発生は目立ちませんでしたが、秋が深まるにつれ枯死木が目立つようになってきました。本病に罹病していても、発病する(症状が表れる)のが遅くなったためと思われます。このような年には年越し枯れも多くなる傾向があるので、今後とも検討が必要と思われます。

(中川茂子)

原木シイタケ自然子の新しい害虫に注意

特用林産研究室

昨年の11月頃から千葉、君津、山武管内において、原木シイタケの自然発生の子実体(自然子)にキノコバエ幼虫による食害が発生しました。被害の特徴は(1)原木シイタケの自然子で発生。(2)膜切れ前後から傘と柄の付け根付近を食害し、柄が毛羽立つ。(3)幼虫は黒い頭で5mm程度のウジ虫。(4)被害率が収穫子実体の80%程度と非常に高い場合が多いなどです。このキノコバエは以前に安房、夷隅管内で被害が報告されたExechiasp.が被害を拡大してきたものと推測されます。この害虫は収穫適期の子実体を非常に高い割合で食害することから、発生した場合には経営に与える影響が極めて大きいと考られます。

考えられる対策は(1)ほだ場の通風を良くし、陰湿にならないようにする。(2)取り残しのシイタケや廃ほだを片付ける。(3)ほだ場の連年使用を避ける。(4)防虫ネットで食害を防除。(5)食害前に収穫し、干しシイタケにする。幼虫が侵入したものは被害が軽ければスライスの干しシイタケにする。(6)生シイタケ用はハウスの中で芽出しを行い、生育させる(ハウスの中では被害が発生しない)。(7)被害の少ない低温で発生する低温性品種を使用する(8)自然子は作らず、シイタケはハウスで浸水発生。浸水に不向きな大径原木はナメコ、クリタケ、ムキタケなどを作るなどです。

この被害を防除するため、当研究室では害虫の生態と防除法について早急に調査を開始しましたが、被害が急速に拡大してきていますので、現状では上記の対策が有効と考えられます。なお、被害の拡大状況について把握したいので、この被害が発生している生産者の方は、各支庁担当者又は森林研究センター岩澤まで御連絡お願いします。

(岩澤勝已)

よくある質問

お問い合わせ

所属課室:農林水産部農林総合研究センター森林研究所

電話番号:0475-88-0505

ファックス番号:0475-88-0286

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