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更新日:令和4(2022)年2月14日

ページ番号:8430

フォレストレター33号(2003年2月)

山武の森から

平成15年の年頭にあたって

今年は千葉県にとって昭和28年以来50年ぶりとなる第54回全国植樹祭が、来る5月18日に木更津市のかずさアカデミアパークをメイン会場として開催されます。この植樹祭を契機に千葉県の森林・林業の再生と活性化、加えて里山等自然環境の保全整備が、県民、NPO、ボランティヤ等のパートナーシップのもと強力に推進されますことを心から願いたいと思います。

県では、今年を「ちば21世紀森林づくり」へのスタートと位置付け、重点施策として「森林の保全と総合利用」という大きなタイトルのもと施策展開を図ることとしております。とりわけ里山に対する県民の期待が高まる中、これまで以上の積極的な手法で里山の整備・保全・活用を図るため、仮称「里山保全条例」の制定準備に鋭意取り組んでおります。

森林研究センターでは、こうした新たな行政の動向を的確に見極めながら時代の要請に適応した研究開発も必要であると同時に未来を見据えた地道な研究も極めて重要であるという認識を持ち、心新たな気持ちで森林・林業さらに環境保全に役立つ研究を従前にも増して進めいく所存であります。

今日の環境問題で一番大きな問題は地球温暖化防止対策をいかに具体的に進め、実現していくかにかかっていると言っても過言ではないと思います。この温暖化防止に森林の果たす役割りの重要性が平成8年の「京都議定書」によって大きく取り上げられ、今や森林の整備による二酸化炭素の吸収・固定は国民の誰もが認知するところとなりました。

森林は、人々の暮らしの中で木材生産、林産物の供給をはじめ公益的な機能である水資源の涵養、国土保全等さまざまな機能を発揮してきましたが、時代の変遷とともに荒廃が進み、森林整備は温暖化防止対策の面からも国を挙げて取り組むべき緊急な課題となっています。資源循環型社会を構築し環境負荷をできるだけ少なくするためにも、森林の多面的機能の健全な発揮と循環型資源である森林資源の有効活用は、21世紀の森林・林業に携わる者に課せられた責務であると考えます。

このような視点から、森林研究センターでもその一翼を担うべき研究として、未利用木質資源の土壌動物や有用微生物による分解技術の開発や再利用システムの確立などに努力しているところですが、本県の森林・林業の現状を今一度直視し、発想の転換や新たな手法等による大胆かつ柔軟な研究開発に踏み出す時期にきていると、夢のような想いを年の初めに抱く次第であります。

現在、森林研究センターの試験研究は平成13年3月策定の「農林業の試験研究推進構想ー21世紀の革新的な試験研究の創造を目指してー」に基づき取り組みしておりますが、いよいよ本県の試験研究機関すべてで平成15年度から評価制度が導入されることになるなど研究機関を取り巻く情勢も大きく変化してまいりました。

このため、さまざまな問題があることを承知のうえ、あえて困難な研究にも果敢に挑戦し、夢と希望を持ちながら研究開発に邁進したいとの想いを平成15年の記念すべき年頭にあたり思う次第であります。

(センター長鈴木和彦)

研究トピック

市場におけるキノコ販売の現状と問題点

東京都には11の中央卸売市場があり、青果物が扱われるのは9箇所です。中央卸売市場の代名詞となっている築地市場では、業務用需要者との取引が主であるのに対し、太田市場では量販店との取引が主です。昨年12月に林務課振興班に同行し、太田市場で話を伺いました。今回は、特にシイタケとマッシュルームについて販売の現状と問題点をお伝えします。数字は平成13年のものです。

太田市場でのシイタケ取扱量は平成9年以降横ばいですが、単価は年々低くなっています。占有率の最高は中国産品の46%で、国内での占有率最高は岩手県の11%、次いで群馬県の8%でした。千葉県産品の取扱量は150トンで、占有率は1%でした。平均キロ単価が668円であるのに対し、本県産品は1,086円と高値でした。マッシュルーム取扱量は平成9年以降増加していますが、平均単価はシイタケ同様年々低くなっています。本県産品の取扱量は379トンで、占有率は33%であり、茨城県の40%に次いで2位でした。また、本県産品のキロ単価は1,255円で、平均の1,057円よりも若干高値でした。

市場関係者によると、シイタケでは、1)原木栽培品は食味と香りが特徴的だが、中国産品と菌床栽培品に引っ張られ、単価は上がる見込みはない。2)シイタケはキノコ類の中で需要の安定した特別の存在ではなく、常に他のキノコ(エノキタケ、シメジ類、マイタケ、エリンギなど)との競争の中に置かれている。3)シイタケは料理の主菜とはなりえないので、他の食材と抱き合わせて販売する必要がある。4)千葉県では、原木栽培品を中心とし、保冷を工夫するなどして、産地としてまとまって安定的な出荷をすれば、少量であっても有利に販売できる。

マッシュルームでは、1)これまでは荷姿として洗い(柄と土の部分を切って洗ったもの)が主であったが、茨城県から出荷され始めた量感のある根付(柄と土を残したもの)の方が評判がよい。荷姿、包装量を変化させて千葉県からも見本的な出荷をしてほしい。2)市場の望む予定数量を安定的に出荷できないため、千葉県は後発の産地に遅れをとっている。3)本来のよさを消費者に充分提示できてはいないので、宣伝の仕方によっては消費がのびる可能性がある。

千葉県でのシイタケ生産量は、残念ながら平成9年以降減り続けてきましたが、原木栽培品の比率が菌床栽培品よりも高いことが特徴でした。平成13年に千葉県では1,498トンのシイタケが生産されましたが、原木栽培品の比率は40%で、それまでとは逆転しました。販売では、個人出荷の割合が77%と共同出荷に比べて高いことが特徴です。本県でのマッシュルーム生産量は平成2年以降減少しており、平成12年には776トンでした。産地は海匝・香取支庁管内にまとまっていて、農協へ共同出荷されています。

市場関係者は生産と需要の情報を全国規模で集積しており、研究を進める上での参考となりました。シイタケとマッシュルームについては、商品としての優劣の判断基準と良品栽培のための技術がほぼ確立されています。研究としては、良質のキノコである上に、さらに、味がよい、栄養的に優れている、薬事効果があるなどの特徴を加えることが重要です。また、ポストハーベストに関しても検討する必要があるようです。

(特用林産研究室寺嶋芳江)

研究室の窓

砂利採取跡地等の緑化

環境機能研究室

林地の開発許可制度では、砂利採取跡地等の対象地は再び森林に復元することが開発の条件となっています。しかし、これまで、樹木の植栽は一般の林地と同じ方法で行われてきたため、これらの場所の植栽基盤が劣悪であることから、多くの箇所で生育が不良となっています。

そこで、砂利採取跡地や岩石採取跡地、残土埋立地など県内39箇所の開発許可対象地を調査し、森林の復元に支障となる阻害要因を明らかにし、その対応策を整理しました。

ほぼ共通した対応策として、まず、のり面勾配や有効土層厚に応じた緑化目標を決定し、目標となる樹種等を適切に選定することが重要となります。目標達成に支障となる阻害要因としては、土壌の固結と排水不良に起因する過湿と過乾、特に過湿が大きな阻害要因となっており、その対応策としては、固結した土壌の耕耘、土壌改良資材や肥料等の投入、集水溝(集水池)や縦穴排水工などによる排水対策を行います。また、のり面の表面(基質)が崩落することから、のり面勾配を極力緩傾斜とし、張芝工や植生マット工を施すようにします。この他詳細につきましては平成14年度試験研究成果発表会で報告いたします。

(富谷健三)

サンブスギ間伐手遅れ林分の管理指針

環境機能研究室

サンブスギは挿し木品種であるため実生スギに比べて個体間の競争による間引きが発生しにくく,間伐が遅れた場合には形状比(樹高/胸高直径)が高いモヤシ状の共倒れ型林分となってしまいます。一般に,形状比が70を越えると雪害等の気象害を受けやすくなり,100を越えると非常に危険と言われています。形状比が100を越えるような林分を放置した場合は,いずれ風害,冠雪害等により壊滅的な被害を受けると考えられますが,一方,間伐を行った場合にも同様の被害を受けてしまう場合があります。これは,間伐の遅れにより各個体の樹冠投影面積が減少し直径成長が緩慢となって形状比が回復しにくい状況になっているためで,このような場合には間伐よりも皆伐,再造林を行うべきです。そこで,形状比を基準として間伐をするか皆伐をするかの判断基準を含めて「サンブスギ間伐手遅れ林分の管理指針」を作成しました。管理指針の詳細については2月14日の試験研究成果発表会で報告します。

<おまけ>平成15年春のスギ花粉飛散予測については森林研究センターのホームページ(URLは表紙に記載)をご覧ください。2月上旬公表予定です。

(福島成樹)

栃木県にもスギ非赤枯性溝腐病

森林保全研究室

スギ非赤枯性溝腐病は、サンブスギに多く発生し、千葉県と茨城県以外では被害が報告されていませんでした。

しかし、栃木県林業センターから、約30年生のサンブスギに同様の症状が出ているが、スギ非赤枯性溝腐病でしょうかと問い合わせがありました。被害部分を見ると、同様の症状で、菌を分離して培養すると、菌糸や菌叢も病原体チャアナタケモドキと同様でした。本病の被害と言ってほぼ間違いないと思います。

サンブスギの苗木は、赤枯病に罹り難いことや形質の良いことから、大正時代より県外にも移出され、特に戦後から昭和30年代にかけて、関東を中心に福島県や愛媛県等にも出荷されました。昭和45年~46年にかけて、栃木県日光市小来川のサンブスギ(51年生)と福島県いわき市のサンブスギ(21年生)を当林業試験場で調査した結果、本病の被害は無かったと報告されています。

今後、県外のサンブスギについても、本病の調査が必要になって来ると思われます。他県の情報があれば、教えていただきたいと思います。

(中川茂子)

ケヤキ原木でエノキタケの栽培

特用林産研究室

エノキタケというキノコをほとんどの人が食べたことがあると思います。白いモヤシ状の細長いキノコが束になっていて、お味噌汁や鍋物に入れて食べると大変おいしいキノコです。しかし、原木栽培の傘が開いた褐色のエノキタケを食べたことがある人はあまりいないと思います。市販のエノキタケは菌床栽培で光を当てずに栽培したもので、食味は原木栽培の方が数段上と言われています。

このエノキタケを原木栽培する場合、野外ではケヤキの切り株によく発生していることから、この木が適木と考えられます。ケヤキは広葉樹用材を生産するために人工造林が一部で進められており、施業法について当センターでも試験中です。それらの林では優良材生産するために除間伐が必要になっており、出てくる材の活用法としてエノキタケの原木栽培が有望とみられます。そこで、当研究室でもケヤキ原木を用いたエノキタケ栽培法について、試験を始めました。その結果、エノキタケは菌糸の蔓延や子実体の生育にシイタケより高湿度が必要なことから、千葉県で栽培する場合にはナメコなどと同じようにホダ木が隠れる程度に覆土すると発生量が多くなることが明らかになりました。今後は汚れの少ない採取法や廃ホダまでの総生産量などについて引き続き調査していく予定です。

(岩澤勝巳)

お問い合わせ

所属課室:農林水産部農林総合研究センター森林研究所

電話番号:0475-88-0505

ファックス番号:0475-88-0286

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