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更新日:令和6(2024)年11月13日

ページ番号:707417

恩田原遺跡出土銅印

(おんだばらいせきしゅつどどういん)

恩田原遺跡出土銅印  恩田原遺跡出土銅印

種別

県指定有形文化財(考古資料)

指定日

令和4年3月8日

所在地(所有者)

南房総市岩糸2489(南房総市)

概要

本資料は、南房総市久枝(くし)(当時:安房郡富山町久枝)に所在する恩田原遺跡において平成8年(1996)の発掘調査により出土した古代青銅製の印章である。印影は「(おう)(せん)私印(しいん)」と判読でき、書体は楷書、文字は陽刻される。印面は一辺3.0センチメートルの方形、高さは3.2センチメートルである。つまみ部分は、つぼみの形をしたいわゆる「莟鈕(がんちゅう)」で、孔を有する。

発掘調査報告書では、四文字で構成される私印の分析により、銅印「王泉私印」は王氏の私印である可能性が高いことが指摘されている。「王●私印」の類例として、匝瑳市(やなぎ)(だい)遺跡出土「(おう)(しゅ)私印(しいん)」、長野県更埴(こうしょく)条里(じょうり)遺跡出土「王強(おうきょう)私印(しいん)」があり、渡来系氏族である王氏の存在がうかがえる。私印を有することのできる身分として、地方官人層が想定できることから、王氏が地方行政に関わっていたと考えられる。

恩田原遺跡の発掘調査区内では古代官衙(役所)の関連遺構は確認できなかったが、南東1.5キロメートルに所在する大峰(おおみね)(はた)遺跡から古代の銅製(おび)金具(かなぐ)丸鞆(まるとも))や灰釉陶器の(ひら)()(やく)()、墨書土器が出土しており、周辺地域にて、識字層の存在や地方官人層との結びつきがうかがえ、銅印が出土した背景を読み取ることが可能である。

恩田原遺跡から他の古代の出土遺物は極めて少なく、明らかなのは須恵器小形坏のみであるが、他の銅印出土遺跡や大峰畑遺跡の出土品等の年代観により、本銅印の製作年代は8世紀後半から9世紀前半頃と推定される。

千葉県内で発見され、所在の明らかな古代銅印は公印1点と私印4点のみである。公印の八街市出土「山邊(やまのべ)郡印(ぐんいん)」は重要文化財に指定されている。私印4点のうち、遺存状況が良好、かつ発掘調査により出土地点が明らかなものは「王泉私印」に限られる。このように、本銅印は未解明な安房地域の古代行政の在り方を紐解く上で鍵となる資料である。

お問い合わせ

所属課室:教育振興部文化財課指定文化財班

電話番号:043-223-4082

ファックス番号:043-221-8126

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