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更新日:令和6(2024)年2月6日

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平成28年度第1回景観セミナーの開催結果

平成28年度第1回景観セミナーは、千葉県の主催により、また佐倉市、成田市、佐原市及び銚子市の後援により、成田市で開催しました。

講師の池邊先生から、歴史的資産を活かしたまちのブランディングについて御講演をいただきました。また、千葉県教育庁から、日本遺産に認定され、江戸の暮らしや経済を支えた四都市の魅力について御紹介いただきました。その後、それぞれの地域で活躍されているパネリストの事例紹介やパネルディスカッションにより、北総地域のこれからのまちづくりについて意見交換を行いました。

「北総四都市江戸紀行・江戸を感じる北総の町並み」

日時:平成28年7月23日(土曜日)13時00分~16時30分
会場:成田市文化芸術センタースカイタウンホール
内容:基調講演、日本遺産の紹介、パネルディスカッション

開催案内チラシ(PDF:601.9KB)

基調講演「歴史的資産を活かしたまちのブランディング」

講師:池邊このみ(いけべこのみ)氏(千葉大学教授)基調講演

北総四都市の中でも、例えば成田市と言えば新勝寺というように、多分オールジャパンの人が知っていて、香取と言えば佐原の町並み、佐倉と言えば城下町というようにつながっていくのがひとつのブランドというものの力である。ブランドというのはものであるし、シンボルとしての称号であるが、ブランディング、ing形がつながってくると、ブランド要素を個々の消費者の頭や心の中に育んでいく活動となる。

町のブランディングとは、町のイメージづくりとして定着することであり、「○○な町と思われたい」というような思いを明確にしてそれを伝えるための手段である。そして町のブランディングというのが進んでいくと地域の住民は誇りに思い、それを醸成して、また他の地域にもアピールする。町のブランディングにはそういう力がある。

なぜ今ブランディングが必要なのか、日本遺産が必要なのかということにも関わるが、ブランディングされた町というのは同等の町に対し優位性や市場競争力を持つ。歴史的な町並みは日本全国にたくさんあり、その町の中でも勝ち組と負け組というような言葉で言われたりもしている。

人口減少の時代にあっては、町が人に選ばれる時代となる。歴史的な町並みを守るだけではなくてそこに住みたい、若い方々が一度東京に出ても、あるいは他の都市に出ても、また自分の町に戻って住み続けたい、あるいは来外者として移住したい、ブランディングされた町にはこの様な気持ちを誘発する力がある。

これによって人口が増えるとか、あるいは維持するということが出来てくる。そういった意味でこの歴史的な町並みというのは地域の人々の長い歴史の営みの証であり、それをブランディングをすることによって地域の持続可能性を高めることが出来る。

特に子供世代への地域の愛情を育むために必要なものとして、自分たちの町が「とてもいい町なんだ」、「歴史のある町なんだ」、「昔から人々が愛してきたんだ」というものを伝えるブランディングが大切である。

日本遺産の紹介「北総四都市江戸紀行・江戸を感じる北総の町並み」

説明者:千葉県教育庁文化財課 平田和弘氏

北総四都市は今も良好に残される、城下町の佐倉、成田の門前町、佐原の商家の町並み、銚子の港町として、世界から一番近い場所に江戸情緒が残り、同一地域にありながらタイプの違う4種の町で江戸を感じることができる稀有な例となっている。

今回申請したストーリーの重要なポイントは(1)江戸につづく回廊と利根川水運の発達がもたらした繁栄、(2)100万都市江戸を支え、江戸の関わりで発展した都市群、(3)世界からもっとも近い江戸、江戸情緒の残る代表的町並み群である。

ブランドイメージの定着、地域の活性化、文化財の価値の理解と魅力向上、地域の伝統産業の振興とそれらを活用した観光振興に努める、という将来的ビジョンがある。

今後、オリンピック、パラリンピックの開催に向け、成田空港を擁し、競技の開催地である千葉県には国内外から多くの方が訪れることが予想され、気軽に江戸情緒を体感し、より良く日本の歴史と文化を理解してもらえるよう準備を進めている。

現在、県と4市は、日本遺産北総四都市江戸紀行活用協議会を結成し、日本遺産魅力発信推進事業の推進を図っているところである。

パネルディスカッション

コーディネーター

  • 池邊このみ氏(千葉大学教授)コーディネーター

パネリスト

  • 鳥海孝範氏(佐倉市「おもてなしラボ」主宰)
  • 下田祥三氏(成田市上町街づくり協議会会長)
  • 大﨑美緒氏、齋藤綾氏、下谷祐平氏(千葉県立佐原高等学校「さわらぼ」)
  • 向後功作氏(前銚子市観光プロデューサー)

(1)事例紹介

鳥海孝範氏(佐倉)

パネリスト1元々この建物は家具屋さんで、その後歴史生活資料館として10年以上使われていたが、2年前に閉館したので自分が引き継いだ。間口が4.4m、奥行きが35mで、うなぎの寝床のような建物。ゲストハウス、コワーキングスペース、レンタルスペースの3つの機能がある。

ゲストハウスは安宿で、2段ベットが5台、計10人しか泊まれない。宿泊者さん同士がコミュニケーションを取れるようなスペースを設け、トースターや電子レンジなど簡単な調理器具が置いている。海外の方が70%利用。成田空港を使う人で翌朝早く飛行機に乗る人が前泊したり、国内の観光地を巡ってきた人が利用する。

コワーキングスペースは、個人事業主などがここへ来て1時間から1日働ける場所になってはいるが、地域で活動されているまちづくりや子育て関係、ガイドボランティアの方達が打合せや会議として利用するのがほとんどである。

レンタルスペースは約8×4mのスペースで、教室やダンス、ちょっとしたパーティー、PTAのお母さん方の集まりなどに使ってもらっている。

また、この3つが交流する場所としてコミュニティスペースがあり、地域にも開放しているので、ふらっと来て本を読んだり、子供達が放課後来て遊んだり宿題をやったりしている。コワーキングスペースやレンタルスペースでは、演劇部の公演や映画の上映会、古本市などいくつものイベントが立ち上がっている。

下田祥三氏(成田)

パネリスト2千年を超える歴史がある成田山新勝寺があり、毎年多くの参拝客で賑わっている。成田山新勝寺への通ずる参道は、花崎町、上町、幸町の一部、仲町、本町の5地区があり、上町地区は、成田駅と成田山新勝寺のちょうど真ん中にあたる。

表参道整備は、幅2mの安心安全で優しい歩道を造ることが目的。その他に、ファサード事業、瓦屋根、白壁、木製の袖看板の設置、電線の地中化、装飾街路灯も完成し、平成8年より進めているセットバック事業も上町地区では約85%が完成している。

装飾街路灯はオレンジ色のガス灯のような色で秩父の宮野川商店街を参考にした。十二支のボラード(車止め)はお客さんを逗留させようと魅力的なものにした。

昭和61年に佐倉・成田・佐原が国際観光モデル地区に指定されたが、当時子供達にどこがモデル地区かと聞かれても答えようがなかったが、今は、電線の地中化、装飾街路灯、セットバックなど、また日本遺産にも認定され、声を大にして話ができる。

大﨑美緒氏、齋藤綾氏、下谷祐平氏(佐原)

パネリスト3「さわらぼ」とは、3年前に佐原高校まちづくりプロジェクトSMPと、東京大学佐原プロジェクトチーム都市デザイン研究室が手を組んで「さわら部」を作り、その活動拠点が「さわらぼ」である。町中の空き家となった古民家を活用した。

さわらぼでは高校の演劇部や写真部の展示会を開催するなど、高校生や地域の住民も参加した活動を多く行ってきた。また、ガイドとして佐原を紹介する町中ツアーの実施やさわラジオなどを通じて、佐原の魅力を多くの人に知ってもらえるような活動をしている。

地域住民や他校のまちづくりチームと活動について議論や意見交換をしている。東葛飾高校と高校生まちづくりサミットを開催した。

佐原をあえて辛口でコメントする佐原カルタや、さわらぼを活用したピタゴラスイッチなど、誰もが楽しめるイベントの実施を通して、これまで町の人達が考えてこなかった斜め上のアイディアを実行しながら、地域の人々や高校生が参加できる活動を考えていく予定である。

人との関わりによって町は形成される。今回日本遺産に登録された佐原は町並みが古いというだけでなく、人が歴史あるこの町で生活しているからこそ、佐原の良さが創出され磨かれていくと思う。この活動を通して、佐原のいい部分も悪い部分もたくさん見つかった。高校生からの視点で発信していけたらと思う。

向後功作氏(銚子)

パネリスト4まち歩きを通して地域の魅力を知ってほしい。地元のケーブルテレビで自分の名前が付いたまち歩き番組があるが、地元の方に地域の魅力の発見の仕方などを伝えている。

外川は斜面を利用した町でどこからでも海が見える。南に面した暖かい坂道の町。大小合わせて10本程度の坂道があるが、それらすべてに名前が付いている。

約13年前にまち歩きを推奨する会を作ったが、外川の町を勉強する場所や休憩する場所が必要と気付き、会員で使わなくなった店にその場所を作ることになったところ、地元の郷土史家の先生が外川の資料をいっぱい持ち込んできて、資料展示することが功を奏して、ミニ資料館を開設する運びとなった。

経済活動を活性化させるまちづくりを行うために、昨年10月地元の魚屋さんや漁業協同組合などの皆さんが中心になって、まちづくり活性化協議会を立ち上げた。

外川の周辺には昨年天然記念物に指定された屏風ケ浦や、犬吠埼灯台など、風光明媚な箇所がたくさんある。その中に埋もれていた外川を人が来る場所にしたい。

(2)パネルディスカッション

(1)

パネルディスカッション池邊氏)キーワードとして「人とたまり場、交流」。さわらぼ、おもてなしラボ、ミニ郷土資料館はたまり場を作った。表参道のセットバックもある意味、人の滞留できる場所を作ったものと思っている。皆さんの活動は地元にどんな影響を与えているのか。

大﨑氏(佐原)佐原の交流館や市役所などいろいろな人とかかわりながら活動させてもらっている。私達の活動によって町が活性化し、観光客が少しでも佐原に長く滞在してもらえたらという思いでやっている。

下田氏(成田)セットバックや電柱を地中化する前は「あんな危険な道路の成田にはお客を連れて行けない。」と言われた。セットバックした表参道はお客さんも子供も安心して歩けるようになった。

鳥海氏(佐倉)おもてなしラボを始めて1年半、知ってもらえるきっかけとして地域に開放したコミュニティスペースに小学生や子供達が遊びや勉強をしに来て、その話が家族、近所に広がっていった。

向後氏(銚子)ミニ郷土資料館を造って外川の魅力を地元の方達が気付くようになった。銚子市内あるいは全国から外川の資料を送ってくれ、銚子全体が外川を見直してくれるようになった。

(2)

池邊氏)皆さんの活動について、もう少し詳しく伺いたい。まず、佐原高校さんには事例紹介にあった斜め上のアイディアの話をお願いしたい。

齋藤氏(佐原)斜め上からのアイディアとは、さわらカルタでは愛のある悪口と言っているが、例えば「よ」の場合「よくまわりを見ないと危ない香取街道沿い」としており、観光地なのに車の通りが激しいので、何かそういうのを自分達の視点で伝えていけたらいいと思う。

池邊氏)鳥海さんからは当初の目論見通りになっているか聞きたい。

鳥海氏(佐倉)コワーキングスペースは、当初仕事をしている人達が集まって情報共有ができることを目論んでいたが、今は地域活動の会議の場であったり、ハンドメイドを自分の趣味や仕事にしている人達の制作活動の場としていて、そのニーズが多くあり、その方向に少しずつ進もうかと思っている。

池邊氏)向後さんには、地元の方の反応や、経済活動との関係を伺いたい。

向後氏(銚子)最初の頃は地元の方はただ人がいっぱい歩いてくれて賑やかになってくれればいいと言うだけだったが、ミニ郷土資料館を造って外川の魅力に地元の方達が気付くようになってくれたのが一番大きかった。観光は地域の元気のあることに魅力を感じて来る場所なので、特に若い世代の人達が移住してきてもいろんなビジネスで元気で魅力を感じる経済活動ができるような場所を提供していかなければならないと思う。

池邊氏)下田さんには、先程見ていると外国人は本当に町を楽しんでいるような写真もあった。セットバックや美装化などによりこのような個人客への影響がわかったら教えていただければと思う。

下田氏(成田)成田では、セットバックや美装化と合わせて、観光客に向けて、月に1回のイベントをやりましょうということで、太鼓祭り、伝統芸能祭りなどを始めた。ここでは、成田国際高校の生徒さんが通訳のお手伝いに来てくれ、お茶を点てる体験や木の札に当て字で外国人の名前を書いてあげるお店を案内している。たくさんの外国人の行列ができている。

(3)

池邊氏)5年後の我が町に向けて、日本遺産に認定されてからの自分達がこんなまちづくりができる一言アイディアを伺いたい。

向後氏(銚子)コワーキングスペースの準備をしていて、起業する方や情報共有したい方、Uターンされる方などに集まっていただき、いろんなビジネス展開をしてほしい。また、日本遺産第1号である尾道のような町になってほしい。

下谷氏(佐原)高校生が滞在できる場所が5年後佐原にもっと増えていって、市民と高校生の距離が今よりも近くなっていればいい。

齋藤氏(佐原)佐原の高校生は祭りの時以外は町中に来ないので、町が活性化するように5年後、普通の日でも町中に高校生がいっぱいいられたらいいなと思う。

大﨑氏(佐原)佐原の今の問題点は閉鎖的なこと。祭りの内容が外に出ないし、外からの新しいアイディアを得ようとしない。5年後は私達の斜め上のアイディアで開放的になり、周りからのアイディアを受け入れ、今のこの町を維持しつつ新しく発展していくような町になっていってくれたらと思う。

下田氏(成田)自分はもう年だし、今は若手がソフト事業もやっていて、賑やかになっていくと思うので、楽しみにしていてくださればと思う。

鳥海氏(佐倉)5年後ゲストハウスを増やしたい。今日4都市のつながりができたので、5年後成果として発表できるような、何かが生まれるきっかけとなればいいなと思う。

お問い合わせ

所属課室:県土整備部公園緑地課景観づくり推進班

電話番号:043-223-3279

ファックス番号:043-222-6447

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