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報道発表資料

更新日:平成29(2017)年3月14日

第23回(平成28年度)千葉県建築文化賞表彰作品について

発表日:平成29年3月13日

県土整備部建築指導課

千葉県建築文化賞は、優れた建築物を表彰することにより、うるおいとやすらぎに満ちた快適なまちづくりを推進することを目的に、平成6年度に創設しました。
今年度は、近年では最も多い98点の応募があり、これらの作品について厳正な審査を行った結果、「優秀賞」6点及び「入賞」3点の合計9点が選ばれました。
なお、「最優秀賞」は該当がありませんでした。

  1. 表彰作品名一覧
  2. 選考経過
  3. 総評
  4. 優秀賞作品紹介(6点)
  5. 入賞作品紹介(3点)

1.表彰作品名一覧 

最優秀賞

一般建築物の部、住宅の部ともに該当なし

優秀賞(6点)

一般建築物の部(3点)

住宅の部(3点)

入賞(3点)

一般建築物の部(2点)

住宅の部(1点)

2.選考経過 

千葉県建築文化賞検討会議委員長 北原 理雄

第23回千葉県建築文化賞は平成28年6月の検討会議で募集要領を定め、7月中旬から9月下旬まで応募を受け付け、前回を大きく上まわる総数98点の応募をいただいた。(部門別内訳は下表のとおり。)

第1次選考はすべての応募用紙を一堂に展示し、その記載と写真をもとに投票を行い、一般建築物8点、住宅5点を選んだ。次いで11月の3日間をかけ、現地を訪問し、建築物の説明を伺いながら詳細に調査した。第2次選考は12月開催の検討会議で、現地調査の報告を踏まえて再度投票を行い、討議を重ねながら優秀な建築物を選んだ。

なお、今回も選考の公明性を保つため、委員と関係のある建築物が応募している場合は、そのことを確認したうえで、当該委員は討議に参加せず、票を投じないこととした。

その結果、優秀賞6点、入賞3点を表彰候補作品として決定した。

多くのすぐれた作品を応募していただいた皆さまの熱意に、この場を借りて深謝したい。今回は残念ながら最優秀賞の該当なしという結果になったが、全体にレベルの高い作品が多く、嬉しい意味で選考の難しい年になった。また、高度な伝統技法を駆使した建築物や特異な立地の住宅など、レアケースの評価をめぐって意見が交わされたのも今回の選考の特徴であった。

部門別内訳

部門

応募点数

現地調査

(第1次選考)

受賞作品選定(第2次選考)

最優秀賞

優秀賞

入賞

一般建築物

52

8

0

3

2

住宅

46

5

0

3

1

合計

98

13

0

6

3

3.総評 

一般建築物の部

一般建築物の部への応募は52点で、公共施設、学校関連施設に佳作が多かったが、それ以外に店舗、病院・診療所、こども園など、今回も多彩な作品が寄せられた。

新柏クリニック写真小優秀賞の「新柏クリニック」は、緑が残る台地に建つ120床の透析診療所である。透析室は、耐火集成材の門型フレームが連続する一室空間となっており、温かみのある柱・梁・天井とガラスの開口から流れ込む光が、長時間の診療を受ける患者に心休まる環境を提供している。外観も、大きな水平の庇とガラス面によって構成されるファサードが明るく端正な表情を醸し出している。

常磐神社写真小 「常磐神社」は、日本武尊(やまとたけるのみこと)と徳川家康・秀忠を祀る神社であり、船橋大神宮の境内に立地している。従来の社の老朽化に伴い新築された社殿と唐門は、漆塗りで極彩色をほどこした華やかなものである。全国から集まった宮大工、漆職人、錺金物職人たちの技術を結集した工芸品のような建築物は、建築文化の継承という面でも評価された。

キッコーマンアリーナ(流山市民総合体育館)写真小キッコーマンアリーナ(流山市民総合体育館)」は、運動公園内に立地する総合体育館であり、大規模な建築物をメインアリーナ、サブアリーナ、武道場の3つのマッスに分節し、公園の既存樹木と馴染ませている。また、メインアリーナの大屋根施工に際して、トラス鉄骨屋根のスライド工法を採用し、既存樹木や環境の保全をはかっている。

鋸南町都市交流施設・道の駅保田小学校写真小入賞の「鋸南町都市交流施設・道の駅 保田小学校」は、廃校となった小学校を道の駅として再生したものであり、校舎や備品を活用しながら、長く親しまれてきた地域の核に新しい生命を吹き込んでいる。

暁星国際流山小学校写真小暁星国際流山小学校」は、新しい都市型駅前小学校をコンセプトにしており、小規模学校の利点を活かし、教育プログラムを明快に反映した端正な建築を実現している。

住宅の部

住宅の部の応募は46点であり、多様なライフスタイルを反映した住宅に加えて、福祉施設にも興味深い作品が見られた。

海と大地の家ジオグラフィックハウス写真小優秀賞の「海と大地の家 ジオグラフィックハウス」は、犬吠埼と君ヶ浜を望む岬に建つ住宅である。一帯はジオパークに指定されており、住宅は自然環境との融合を目指し、曲線を描いて低く斜面に寄り添っている。居室からの眺望は雄大だが、浜から見上げると、肌色がかった建物が岬の岩と植生に溶け込んでいる。また、敷地境界に柵を設けず、大屋根に土を載せて既存植物を植え直すなど、随所に配慮が見られる。

松戸の家写真小松戸の家」は、池を中心にした日本庭園と一体になった数寄屋風の住宅である。池に面して濡れ縁をめぐらした和室と縁廊下を持つリビングを配し、雁行した建物に重なりあう屋根を掛け、屋内からの眺めと併せて、回遊式の庭からの眺めにも入念に配慮している。用材の調達から施工まで一貫した目配りのもとで、伝統的技法が融合的に活用されている。

上総喜望の郷おむかいさん写真小上総喜望の郷 おむかいさん」は、知的障がい者のための住まいである。建物は小規模小舎制をとり、6人の個室とリビング、ダイニング、キッチン、浴室などを備えた住まいが3棟、バックアップ棟と共用棟をあいだに挟み、中庭を取り巻いて配置されている。傘型屋根を組み合わせた各棟はリズミカルに分節され、それぞれのグループに落ち着いた居場所を提供している。

いつも日なた、いつも日かげの家写真小入賞の「いつも日なた、いつも日かげの家」は、ワンルーム的な平屋の住宅であり、深い庇によって季節に合わせて必要な日照が得られる快適な室内をつくり出している。

4.優秀賞作品紹介(6点) 

一般建築物の部

新柏クリニック(柏市) 

新柏クリニック写真1

(建築主)医療法人社団中郷会新柏クリニック
(設計者)株式会社竹中工務店
(施工者)株式会社竹中工務店

くつろげる透析空間を大型木造で

新柏クリニック写真2総ベッド数120床の透析専門の診療所である。国内で30万人ほどいるとされている透析患者は、週3回4-5時間程度透析を受ける必要があり、かなりの時間を透析室で過ごす。このクリニックでは、少しでも負担にならないように透析室環境に様々な工夫を凝らしている。本クリニックは、新柏駅に近接する一方、手賀沼に注ぐ大津川支流域の市街化調整区域に隣接しており、水源地に近い。恵まれた周辺の自然環境から着想し、森林浴気分になれる空間デザインを目指した。ガラス越しに周りの木々が見え、春には桜が楽しめる。木質建材を豊富に使うことで木の香りが漂い、木と緑に包まれた透析室を実現している。

新柏クリニック写真32層にわたる透析室部分には、耐火集成材の門型フレームが4m間隔で13個並び、これが主構造となっている。ずらっと並んだベッドと相まって、反復して連続する空間を強く印象づけている。これまで、学校や病院などの公共施設では、木のぬくもりを活かした建築をつくろうとしても法的に制約が多かった。諸外国ではCLT材を用いた高層の建物がすでに出現しつつあり、木造の伝統を持つ日本が、次世代木造建築では遅れをとった状態だった。2010年に公共建築物等木材利用促進法が制定され、国内の森林資源を活用した耐火木材開発への追い風となった。木造の復権は、建材としての木の見直しにとどまらないはずである。このクリニックのように木材を主構造に用いたハイグレードな建築物が増えることで、建築生産システム自体が、これまでの需要先導型から大きく転換して、循環型の構築生態系化していくことに期待したい。(岡部 明子)


写真1:奥深い庇が端正な佇まいを見せる外観
写真2:緑の景色を楽しめる透析室
写真3:木のぬくもりを醸し出す夜景
撮影/株式会社エスエス 島尾 望


常磐神社(船橋市) 

常磐神社写真1

(建築主)意富比(おほひ)神社(船橋大神宮)
(設計者)株式会社社寺建築研究所一級建築士事務所
(施工者)株式会社大林組

未来に蘇る、極彩色を纏った伝統木造建築社殿

千九百年の歴史を辿ると伝えられる船橋大神宮意富比神社は、かつて海に面していた。戦後の埋め立てによってその面影は失われたが、高台に残されている漁師のための灯台の存在が、そのことを今に伝えている。

常磐神社写真2境内の一角に方形の透塀に囲まれ、唐門奥に鎮座する本殿に日本武尊を祀った小ぶりの常磐神社がある。徳川秀忠が寄進した社殿だが、戊辰戦争の余波で焼失した。再建されたものの老朽化した社殿が家康没後400年を機に、目にも鮮やかな漆と極彩色を纏う伝統木造建築として平成27年10月に建て替えられた。普段は開けられることのない漆黒の漆で塗り込めた本殿内陣には、日本武尊、家康、秀忠が祀られている。

常磐神社写真3長い時間を経る前の文化財的建築を評価することは容易ではない。しかし、ここにある伝統文化の極みのような作品には、現代建築に対するある種の批評性を見て取ることができる。美しいプロポ-ションの木組みの構造から、漆の塗装、金物装飾の細部に至るまで、今に伝承される膨大な建築知識と技術が惜しみなく駆使されているからだ。完成後間もない時点にあってもその文化的価値は尋常ではない。発注者はもとより、手練れの設計者、宮大工、工匠、建設会社等による優れたコラボレーションによって実現した希有な成果に対し、その労を多としたい。

なお、こうした作品を想定していない本建築文化賞の趣旨から、「最優秀賞」とすることには異論があった。そして、将来時を重ねながら広く社会に受け入れられることを強く期待し、現時点では「優秀賞」とすることが適切と判断されたことを付記したい。(岩村 和夫)


写真1:本殿(南西面):総漆塗、彩色仕上げ
写真2:本殿 向拝:軒先および建具 錺金物(銅製打出し、金箔押し)
写真3:本殿彫刻(柱頭部):木鼻彫刻(獅子)


キッコーマンアリーナ(流山市民総合体育館)(流山市) 

キッコーマンアリーナ(流山市民総合体育館)写真1

(建築主)流山市
(設計者)株式会社INA新建築研究所+株式会社蒼設備設計
(施工者)株式会社フジタ

公園と一体化したスポーツ空間づくり

キッコーマンアリーナ(流山市民総合体育館)写真2千葉県流山市に完成した都心からのアクセスも良い運動公園内の総合体育館である。この体育館は、緑を楽しみながら運動ができる公園と一体化したスポーツ空間づくりを目指して計画された。災害時には、市内最大の避難所として活用できるように計画。防災備蓄倉庫、3日間対応の受水槽等を備え災害に対応している。市民が競技能力を発揮する場であり全国に通じる大規模な大会の開催。トップアスリートの試合等の観戦が出来る場の役割、文化行事の開催、災害時の避難場所等の機能を有する体育館である。メインアリーナ・サブアリーナ・武道場を備えた体育館・観覧場であり、地上3階RC造(一部S造)、杭基礎(既成杭)である。

キッコーマンアリーナ(流山市民総合体育館)写真3大空間のアリーナには「く」の字型の断面形状を採用することにより、観覧席上部の気積を抑え空調負荷を低減し、4周の高窓から競技に支障がないように柔らかな間接光を採り入れ、照明を必要としない自然光による心地よいスポーツ環境を実現した。

アリーナ空調には、地熱を活用するクールチューブ居住域空調を採用し、快適性を高めている。

アリーナの大空間を構成する大屋根の施工にあたっては、大屋根を2回に分けてスライドさせていく工法を取り入れることにより、鉄骨トラスの積上げを行うクレーン位置を限定することで、景観上重要な既存の樹木や石垣を保全しながら施工を行っている。緑が映えるキャンバスのような外観、アリーナ屋根と内外装の縦のラインは、森のイメージと一体化している。(圓﨑 直之)


写真1:西側エントランスアプローチ 公園の森を抜けてエントランスへアクセス
写真2:西側アリーナ外観 アリーナ内に自然光を採り入れる「く」の字型の外観
写真3:エントランスホール 連続するタテのラインが森の木立を連想させる
撮影/スタジオバウハウス 吉見 謙次郎


住宅の部

海と大地の家 ジオグラフィックハウス(銚子市) 

海と大地の家ジオグラフィックハウス写真1

(建築主)M氏
(設計者)川嶋彦一郎アトリエ+ラムラックス株式会社
(施工者)岡田土建株式会社

太平洋を東に望む大地の家と、グローバルな暮らし

海と大地の家ジオグラフィックハウス写真2太平洋の波に洗われる銚子の海辺の岩場に、想像を絶するプロセスを経て、他に再現し難い住まいができた。いわば海と大地の際(きわ)に一体化された鉄筋コンクリートの隠れ家だが、その物語はただものではない。

グローバルに活躍するフランス・ブルターニュ出身のケルト系フランス人が施主だったことが、ユニークな物語の発端であった。日の入りの大西洋と日の出の太平洋を愛で、住まいの日常と常識の殆どから開放された地平に自由に暮らす。懇意の一人の建築家が、海岸の土地の手当てや建築許可を得るための前さばきの段階から全面的にサポートすることで、その実現が可能となった。

海と大地の家ジオグラフィックハウス写真3広大な敷地は海岸沿いを走る県道に面しているが、その道路から海側に見えるのは岩場の崖と砂浜、そして海原だけである。ようやく日が沈む頃、トップライトや開口の隙間から明かりが漏れてくる。それ以外は屋根の上も荒々しく緑化され、そこに住まいがあることなどまず気付くことはない。一方、随所に角が丸められたインテリアのプランも自由気ままで、浴室や寝室を含めことのほか有機的かつモダンな空間から望む太平洋は、その飽きることのない潮騒の音とともに格別であった。

恐らく、至近距離の海水と強風に晒される立地条件の生活は生やさしくないだろう。特に塩害は並の程度ではないはずだ。そんなリスクを承知の上でなお余りあるおつりがくる住まいと場所性が暮らしを解き放つ。平らな所のない、ごつごつした草屋根の上を歩きながら、そうした建築文化の多様性と奥行きの可能性に想いを馳せることができたのは幸いであった。(岩村 和夫)


写真1:犬吠埼を望む
写真2:日の出前
写真3:内観


松戸の家(松戸市) 

松戸の家写真1

(建築主)渡辺 栄一
(設計者)暮らし十職一級建築士事務所
(施工者)株式会社大山建工

普請道楽で受け継がれる伝統木造

松戸の家写真2230平方メートルほどの伝統的な木造平屋の住宅である。銘石および銘木のコレクションがそもそもあって、それらを散りばめた作庭が先行していた。庭園に調和した建物をつくってほしいという依頼だったという。園路を行くと、さまざまな表情の石が語りかけてくる。庭の随所からの建物の見え方や、建物からの庭の眺めが入念に検討されており、完成度の高い空間を作り出している。施工は青森の工務店である。南部地方特産の赤松を活かし、青森で数寄屋大工を育て、東京方面でも複数の仕事をしてきた。このような普請道楽のおかげで、高い技術の求められる建築がつくられることで、森林が維持され、後継の職人たちの働く場ができる。その価値を評価した。

松戸の家写真3「日本らしい生活の姿を、現代に創出する」ことが、設計者の前田伸治さんの志だという。確かに、続き間のリビングと十畳の和室や池に張り出した濡れ縁に身を置くと、床に座して心地よい住まいのくつろぎが感じられるものの、奥へと深く引き込まれる日本的な空間感覚に少々欠ける。プランから伺い知る限り、その背面には普通の近代的な高性能住宅部分が隠されている。

交通量の多い県道に面し、農地や戸建て小規模団地、ゴルフ場、ロードサイド型商業施設など、多様な土地利用が脈絡なくパッチワーク状に散りばめられている地域にある。閉ざされた門扉の向こうに何があるのか、行き交う大型車両を背に、門前の鞍馬石の巨大踏石から想像を巡らすしかない。こうして結実した職人の伝統技術の世界を、郊外都市化した松戸という地域の空間の質を高めることにどうにか結びつけられないものだろうか。(岡部 明子)


写真1:主庭からの全景 庭と馴染むように高さを整え、屋根を雁行させて動きを与えた
写真2:リビングより主庭を望む 座った目線で庭に焦点を結ぶように開放し、内部空間を整えた
写真3:和室外部 池に張り出して濡縁を回し、内外の空間がダイナミックに交わる


上総喜望の郷 おむかいさん(木更津市) 

上総喜望の郷おむかいさん写真2

(建築主)社会福祉法人みづき会
(設計者)株式会社仲建築設計スタジオ
(施工者)株式会社大城組

中庭を囲んで 6人の家族がくらす 3棟の家

田園風景の広がりの中、緩やかな傾斜の築山を囲んで、25個の小さな寄せ棟屋根(傘ユニットと名づけられた)が互いに支えあうように連なる、知的障がい者支援施設「おむかいさん」。

上総喜望の郷おむかいさん写真1建物は鉄骨平屋造、既存の「上総喜望の郷」の敷地内に増設、として建築された。屋根と柱が一体となった25のユニットは、渡り廊下で繋がりながら6棟に分かれ、3棟が6人の居住者が家族のように暮らす家、3棟がバックアップ棟(支援員室・医務室・特浴室等)になっている。

上総喜望の郷おむかいさん写真3それぞれの棟は少しづつ表情を変えながら、中庭に面した玄関とデイルーム(リビング+キッチン・ダイニング)を中心に、個室とトイレ・浴室が配置されている。特徴的な傘ユニットを支持する列柱の上部はトップライトとし、デイルームの採光と冬の暖房にも一役担う工夫がされている。同時に大きな空間を分ける壁の役目を持ち、空間の一体感を保ちながら、居住者の小さな居場所を作り出すことで、住空間としての充実を図っている。

分散型の建築に合わせて、あらゆるトラブルに対する想定と対策が取られているのも特徴的だ。各棟ごとに対応可能な非常時の電源、ベッドのまま避難できる大きな開口部とバリアフリー対応等、災害時の安全と居住性も確保している。

施設運営者の開設当初からの強い思い「入居者が生涯心地よく暮らす家をつくりたい」を、しっかりとした信頼関係のもとに、建築家が丁寧に取り組み、実現している。穏やかな空気の流れる「住まい」である。(夏目 幸子)


写真1:だいちの里のデイルーム。小さな居場所があつまって6人の「住まい」となる
写真2:傘ユニットがお互いを支え合うことで大きな屋根になる。
写真3:いぶきの里の玄関ポーチから見る。開放的で、季節や天気、時間の移り変わりが感じられる
撮影/西川公朗

5.入賞作品紹介(3点) 

一般建築物の部

鋸南町都市交流施設・道の駅 保田小学校(鋸南町) 

鋸南町都市交流施設・道の駅保田小学校写真1

(建築主)鋸南町
(設計者)N.A.S.A.設計共同体(architecture WORKSHOP,空間研究所,(株)設計組織ADH,NASCA)
(施工者)東海建設株式会社 鋸南支店

既存の校舎を最大限活用

鋸南町都市交流施設・道の駅保田小学校写真2廃校となった町立保田小学校を新たなコミュニティの核となる拠点として再生し、地方の活性化、都市と農山漁村の新たな交流拠点を目指し、平成27年12月にオープンした。廃校を活用して既存の校舎や備品をできるだけ活用し、教室などを当時の面影を残しながら改修し、平時には宿泊室として使用し、緊急時には避難所にと使用方法を変化させるなど、小学校時代から町の広域避難所であったという機能を引継いで、施設を多面的に活用できるように設計されている。空調に頼らない環境制御機能を導入して、宿泊室の断熱性能を向上したり、空調コスト低減を図るような先進の試みがされている。

鋸南町都市交流施設・道の駅保田小学校写真3廃校となった町立保田小学校の既存の校舎を最大限活用している。旧体育館の外壁を撤去し、自然光を透過する半透明のポリカーボネイトを外壁として使用し、温室を思わせる南房総の農村風景に溶け込む外観となっている。日中は自然光が内部を明るくし、夜間は内部照明が外を照らし存在感を出している。

宿泊室は旧教室を2分割し、当時の黒板やロッカー、学習机など当時の面影を残すようにされている。校舎全面に「まちの縁側」を増築し、外気とのバッファーゾーンを形成している。(圓﨑 直之)


写真1:はらっぱ広場より見る
写真2:既存校舎南側に新設された縁側
写真3:産直市場内観
撮影/淺川敏


暁星国際流山小学校(流山市) 

暁星国際流山小学校写真1

(建築主)学校法人暁星国際学園
(設計者)芦原太郎建築事務所
(施工者)スターツCAM株式会社

流山市から世界へ「新しい都市型駅前小学校」の提案

暁星国際流山小学校写真2敷地はつくばエクスプレス開通にあわせ区画整理が行われた流山市所有駅前市有地である。市との「流山から世界へ」という共通スローガンのもと「国際感覚を兼ね備え新時代に活躍する人材の育成」に相応しい建築空間を目指している。

昇降口は「流山セントラルパーク駅」から、高架下脇の道約100m。エントランス広場は落ち着いた清楚な雰囲気で一息つくのにほど良いスペースだ。昇降口の先に運動場が広がる。

暁星国際流山小学校写真3教室は螺旋階段を中心としたメディアセンター(図書館+ICT)が核となり、特別教室の複数使用や可動型什器の採用により、使用率を高める工夫を行っている。インテリアは温かみのある木質系材料とベージュ系を中心に、アクセントカラーを使う。極力既製品は使わない、デザインする姿勢が感じられた。コストに配慮し、室によりグレードとディテールを使い分けながらも極端に見えない工夫があり、好感が持てた。

現在在校生は1,2年生のみの約60名。6年生まで揃ったとき校内のあちこちで新たなストーリーが展開されるだろう。昇降口前の高架下もこれから一体的な整備が始まるそうだ。学校と道路を挟んだ総合運動公園との連携も考えられる。駅と市と小学校の成長と未来に期待が膨らむ。(藤本 香)


写真1:誰もが立ち寄りたくなるような開かれたエントランス
写真2:ICTと融合した新感覚の図書館
写真3:低層化および分割により街並みとの調和に配慮した外観
撮影/雁光舎 野田東徳


住宅の部

いつも日なた、いつも日かげの家(いすみ市) 

いつも日なた、いつも日かげの家写真1

(建築主)松本清・松本作恵
(設計者)桑原茂建築設計事務所
(施工者)吉田工務店+松本家具

日差しを有効に取り入れる 冬は日なた・夏は日かげ

いつも日なた、いつも日かげの家写真2施主老夫婦が住まう平屋のこの住宅は「空調に頼らない優しい暮らし」を理念に計画された。年間を通して日差しを有効に利用するため、設計者は太陽の年間軌道を追跡し、室内の日差しをコントロール出来るよう屋根の大きさと角度を決定。徹底的に『屋根と床』の関係を見直した住宅である。

いつも日なた、いつも日かげの家写真3建物の構成はシンプル。平面は長方形で南側庭に面して縁側(屋外)、居室+収納部(屋内)となり、耐震構造の浴室部分でLDKと寝室を分節する。断面は収納仕切り壁を兼ねる板状垂直壁からL字に折れて水平耐力を支える梁で屋根を支えている。屋根の大きさと角度、庇の長さを入念にチェックして「冬は日なた・夏は日かげ」の家を実現した。縁側とLDKは連続し、テラス窓を開放すると縁側とLDKは一体となり、季節によって、その境界が曖昧だ。東西は閉ざされているため、庭〜縁側〜LDKは切り取られた世界となる。背面の収納は程良い奥行で、引戸を開けると一覧でき使いやすい。

また施主は敷地の近くに家具製作所を併せ持ち、当住宅の家具や建具等の施工も担う。長い間培った技術を自らの住宅に活かし、今後網戸等足していく部分もあるという。竣工がスタートであり、これからの成長も楽しみな住宅である。(藤本 香)


写真1:外観
写真2:内観1
写真3:内観2
撮影/鳥村鋼一

よくある質問

お問い合わせ

所属課室:県土整備部建築指導課企画班

電話番号:043-223-3181

ファックス番号:043-225-0913

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