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更新日:令和元(2019)年7月23日

成人先天性心疾患

成人先天性心疾患は、生まれつきの心臓病、すなわち、先天性心疾患に罹患している成人患者さんの事を指します。

先天性心疾患は長い間、長生きが出来ない子供の病気と考えられてきました。しかし、近年の内科診断、外科治療の発達のおかげで、多くの先天性心疾患の子供は成人となることが可能となりました。先天性心疾患手術の多くは根治手術ではないため、先天性心疾患の大部分は手術後も継続的な長期間の経過観察、診療が必要です。

我が国では、このような成人先天性心疾患患者さんがすでに40万人以上いると推定されています。千葉県では、2万7千人です。先天性心疾患は、日本では年間1万2千人(千葉県では、800人)余りが生まれ、そのうち90%が成人します。従って、今後成人先天性心疾患患者数は約5%の割合で増加します。

1980年頃は、先天性心疾患といえば子供の病気でしたが、2000年には成人患者数と小児患者数は殆ど同数になりました。さらに、2020年には、成人患者数は小児を遙かに凌駕して、先天性心疾患というと成人の病気と見なされると予想されます。

即ち、先天性心疾患はすでに成人循環器疾患の1領域と考えられます。

先天性心疾患患者は、成人しても主に循環器科小児科医が継続して診ていますが、循環器科医が経過観察している場合も少なくありません。今のところ、循環器科医のこの分野への関心は高くはありません。しかし、患者数の増加、加齢の進行、さらに後天性心疾患と同様に心不全、不整脈が問題となることが多いため、近い将来、この分野は循環器科医の興味を引くことは疑いがありません。

小児の未手術チアノーゼ型先天性心疾患は減少していますが、成人では一定数存在し、系統的多臓器異常に対する医療が必要です。複雑心奇形術後の成人患者も増加しています。先天性心疾患手術の多くは根治手術ではなく、合併症、残遺症、続発症を伴います。そして加齢に伴い、心機能の悪化、不整脈、心不全、突然死、再手術、感染性心内膜炎、妊娠、出産、高血圧、冠動脈異常、非心臓手術などにより病態、罹病率、生命予後が修飾されます。

また、就業、保険、結婚、心理的社会的問題、喫煙など成人特有の問題を抱えます。このため、先天性心疾患の多くは成人後も循環器小児科だけでなく、循環器科、心臓血管外科、麻酔科、産科、内科などのチームでの診療を必要とします。

成人先天性心疾患における当センター成人先天性心疾患診療部の役割

当センターの成人先天性心疾患診療部は、成人先天性心疾患の診療に長い経験を持ち、この診療に習熟した成人先天性心疾患専門の医師を中心として成人先天性心疾患の診療を行うために、初めて開設されました。

成人先天性心疾患に多くみられる、不整脈、心不全、肺高血圧、チアノーゼ合併症、心臓手術等に対してチーム医療を行える診療体制を備えています。また、出産は取り扱いませんが、妊娠中の経過観察、カウンセリング、心臓の治療を行っています。

また、成人先天性心疾患診療部は成人となった小児期心疾患、例えば川崎病後の冠状動脈異常を残した方の診療も行います。

当センター成人先天性心疾患診療部の学術面での果たしている役割

この分野は新しい分野であり、年々多くの新しい臨床研究が行われています。当センターの成人先天性心疾患診療部は、国内外の多施設研究を企画、或いは参画し、毎年、講演、学会発表、論文発表などを広く行い、この分野の発展に寄与できるように努力しております。

これ以外に、

  1. 日本成人先天性心疾患研究会事務局を設置し、毎年行われる総会の企画、運営を行っています。今年から、患者さん、若い医師の教育を考慮した、成人先天性心疾患セミナーを開催する予定です。また、世界成人先天性心疾患学会(International Society of Adult Congenital Heart Disease)に、理事として参加し、
  2. 患者さんとの交流の場であり、この分野の新しい情報を発信する成人先天性心疾患、成人川崎病ネットワーク(home page)を運営しています。
  3. 医療関係者向けの成人先天性心疾患(メジカルビュー社、2005)、患者さん向けの成人先天性心疾患の方のための妊娠、出産ガイドブック(中央法規出版、2006)を執筆、出版しております。また、英国医師と共同して、Heart Disease and Pregnancy (RCOG Press, 2006),Diagnosis and Management of Adult Congenital Heart Disease (Churchill Livingstone, 2003)等の教科書の作成に参画しております。
  4. 日本循環器学会の成人先天性心疾患野領域に関するガイドライン作成に班員として参加しております。

成人先天性心疾患診療部の今後の学術的な役割

当センターの成人先天性心疾患診療部は、成人先天性心疾患の診療だけではなく今後の成人先天性心疾患の診療の向上のために、臨床研究、結果発表、論文作成、教科書作成、患者さんに対する病気病態の伝達、さらに若手医師の教育の役割を担っていく予定です。