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更新日:平成29(2017)年6月6日

緩和医療科-がん専門研修

研修概要

臨症医としてあるべき人間性の涵養と悪性疾患に関する知識の適切な活用による緩和的治療方針の決定能力、緩和医療技術の習得が大きな研修の目的になります。

人間性とは具体的にはがん患者さん(家族を含めた)に対して一臨床医として適切に対応し、信頼に基づいた患者医師関係の構築を図り、また、チーム医療を理解し、問題解決のため専門医や指導医あるいは同僚、他の医療スタッフなどと目的に応じて適切な共同作業ができるようになることです。

各種悪性疾患に関する知識や緩和医療技術の研修は、緩和ケア病棟、緩和医療科外来、を通して行われます。つまり、日本緩和医療学会の専門医取得のために設定された経験すべき臨床的必須項目の獲得を目標に日常診療に参加し、形成的評価、評価のフィードバックを受けながら実力を高めて行く事になります。したがって知識や技術は、一般臨床的に基本とされる部分から専門的緩和医療学的部分までの幅を持ったものになります。

研修開始時本人の目的によって研修期間を提示された短期、中期、長期の研修プログラムのいずれかから選びます。短期は初期臨床研修、長期は本格的な緩和医療学的研修を想定しています。研修終了時には指導医側で総括的評価を行い、仕上げとします。事情によっては重点的疾患を決めて研修することも可能です。

研修体制

緩和医療科スタッフは現在3名であり、2名の日本緩和医療学会認定の暫定指導医を有しています。年間約300例の緩和ケア病棟入院実績があります。日常診療は月から金までの毎日で、研修の場合は、午前中緩和医療科外来、午後に緩和ケア病棟実習となります。他職種による病棟カンファレンスを、1日2回、またがん治療病棟へのリエゾン式介入のためのカンファランスを週1回開催しています。緩和医療科の研修ではなるべく病棟主治医として関わってもらい、少なくとも年50例の主治医経験ができるようにする予定です。

緩和医療科がん専門研修プログラム

一般目標

悪性腫瘍をはじめとする生命を脅かす疾患に罹患している患者・家族のQOLの向上のために緩和医療を実践し、さらに本分野の教育や臨床研究を行うことができる能力を身につける。

行動目標

全般的な目標と疾患部位別目標を設ける。目標はA;必須目標、B;努力目標に分け、各目標に対しての評価(研修医および指導医)はa=十分できる、b=できる、c=要努力、d=評価不能、で行う。研修終了時に総括的評価を行う。

目標の設定は研修期間の長さで行う。短期(1~6ヶ月;初期研修、後期レジの一部が該当)、中期(6ヶ月~1年;後期レジの一部、医員が該当)、長期(1年以上;後期レジの一部、がん修練医が該当)

項目

設定目標

短期

中期

長期

1.症状マネジメント

 

 

 

(1)患者の苦痛を全人的苦痛(totalpain)として理解し、身体的だけではなく、心理的、社会的、霊的(spiritual)に把握することができる。

B

A

A

(2)症状のマネジメントおよび日常生活動作(ADL)の維持、改善がQOLの向上につながることを理解している。

B

A

A

(3)症状の早期発見、治療や予防について常に配慮することができる。

B

A

A

(4)症状マネジメントは患者・家族と医療チームによる共同作業であるということを理解することができる。

B

A

A

(5)症状マネジメントに対して、患者・家族が過度の期待を持つ傾向があることを認識し、常に現実的な目標を設定し、患者・家族と共有することができる。

B

A

A

(6)自らの力量の限界を認識し、自分の対応できない問題について、適切な時期に専門家に助言を求めることができる。

B

A

A

(7)症状マネジメントに必要な薬物の作用機序およびその薬理学的特徴について述べることができる。

A

A

A

(8)鎮痛薬(オピオイド、非オピオイド)や鎮痛補助薬を正しく理解し、処方することができる。

A

A

A

(9)薬物の経口投与や非経口投与(持続皮下注法や持続静脈注射法など)を正しく行うことができる。

A

A

A

(10)オピオイドをはじめとする症状マネジメントに必要な薬剤の副作用に対して、適切に予防、対処を行うことができる。

A

A

A

(11)様々な病態に対する非薬物療法(放射線療法、外科的療法、神経ブロックなど)の適応について判断することができ、適切に施行するか、もしくは各分野の専門家に相談および紹介することができる。

 

B

 

A

 

A

(12)様々な症状の非薬物療法について述べることができる。

B

A

A

(13)病歴聴取(発症時期、発症様式、苦痛の部位、性質、程度、持続期間、推移、増悪・軽快因子など)、身体所見を適切にとることができる。

B

A

A

(14)各種症状を適切に評価することができる。

B

A

A

(15)痛みの定義について述べることができる。

B

A

A

(16)痛みをはじめとする諸症状の成因やそのメカニズムについて述べることができる。

B

A

A

(17)症状のアセスメントについて具体的に説明することができる。

B

A

A

(18)痛みの種類と、典型的な痛み症候群について説明することができる。

A

A

A

(19)WHO方式がん疼痛治療法について具体的に説明できる。(鎮痛薬の使い方5原則、モルヒネの至適濃度の説明を含む)

B

A

A

(20)神経障害性疼痛について、その原因と痛みの性状について述べ、治療法を説明することができる。

B

A

A

(21)患者のADLを正確に把握し、ADLの維持、改善をリハビリテーションスタッフらとともに行うことができる。

A

A

A

(22)終末期の輸液について十分な知識を持ち、適切に施行することができる。

A

A

A

(23)以下の疾患および症状、状態における苦痛の緩和を適切に行うことができる。

 

 

 

※印以外は自分で経験し、自分ですることができることが必要。

 

 

 

※印は経験したことがあり、専門家とともに実施することができる必要がある。

 

 

 

項目

 

 

 

1)疼痛

 

 

 

がん性疼痛

 

 

 

侵害受容性疼痛

A

A

A

神経障害性疼痛

B

A

A

非がん性疼痛

A

A

A

2)消化器系

 

 

 

食欲不振

A

A

A

嘔気

A

A

A

嘔吐

A

A

A

便秘

A

A

A

下痢

A

A

A

消化管閉塞

A

A

A

腹部膨満感

A

A

A

腹痛

B

A

A

吃逆

B

A

A

嚥下困難

B

A

A

口腔・食道カンジダ症

B

A

A

口内炎

B

A

A

黄疸

B

A

A

肝不全

B

A

A

※肝硬変

B

A

A

3)呼吸器系

A

A

A

A

A

A

A

A

A

呼吸困難

A

A

A

死前喘鳴

B

A

A

気道分泌

A

A

A

胸痛

A

A

A

誤嚥性肺炎

B

A

A

※難治性の肺疾患

B

A

A

4)皮膚の問題

 

 

 

褥瘡

B

A

A

ストマケア

B

A

A

皮膚潰瘍

B

A

A

皮膚掻痒症

B

A

A

5)腎・尿路系

B

A

A

血尿

B

A

A

尿失禁

A

A

A

排尿困難

B

A

A

膀胱部痛

B

A

A

水腎症(腎瘻の適応決定を含む)

B

A

A

※慢性腎不全

B

A

A

※人工透析患者

B

A

A

6)神経系

 

 

 

原発性・転移性脳腫瘍

B

A

A

頭蓋内圧亢進症

B

A

A

けいれん発作

B

A

A

四肢および体幹の麻痺

B

A

A

腫瘍随伴症候群

B

A

A

※神経筋疾患

B

A

A

7)精神症状

 

 

 

適応障害

B

A

A

不安

B

A

A

うつ病(抑うつ)

B

A

A

不眠

A

A

A

せん妄

A

A

A

怒り

B

A

A

恐怖

B

A

A

8)胸水、腹水、心嚢水

B

A

A

9)後天性免疫不全症候群(AIDS)

B

B

B

10)難治性の心不全

B

B

B

11)その他

 

 

 

悪液質

B

A

A

倦怠感

B

A

A

リンパ浮腫

B

A

A

(24)以下の腫瘍学的緊急症に適切に対応できる

 

 

 

高カルシウム血症

B

A

A

上大静脈症候群

B

A

A

大量出血(吐血、下血、喀血など)

B

A

A

脊髄圧迫

B

A

A

(25)セデーションの適応と限界、その問題点を患者と家族に説明し、必要時に適切なセデーションを行うことができる。

B

A

A

2.腫瘍学

 

 

 

(1)腫瘍各分野の専門家と協力して患者の診療にあたることができる。

B

A

A

(2)各種悪性腫瘍の基本的な治療方法を具体的に述べることができる。

B

A

A

(3)頻度の高い疾患の外科療法(外科・整形外科的治療)の適応とその方法について述べることができる。

B

A

A

(4)頻度の高い疾患の放射線療法の適応とその方法について述べることができる。

B

A

A

(5)頻度の高い疾患の化学療法の適応とその方法について述べることができる。

B

A

A

3.心理社会的側面

 

 

 

心理的反応

 

 

 

(1)喪失反応が色々な場面で、様々な形で現れることを理解し、それが悲しみを癒すための重要なプロセスであることに配慮する。

B

A

A

(2)希望を持つことの重要性について知り、場吅によってはその希望の成就が、病気の治癒に代わる治療目標となりうることを理解する。

B

A

A

(3)子どもや心理的に傷つきやすい人に特に配慮することができる。

B

A

A

(4)喪失体験や悪い知らせを聞いた後の以下のような心理的反応を認識し、適切に対応できる。

 

 

 

1)怒り

B

A

A

2)罪責感

B

A

A

3)否認

B

A

A

4)沈黙

B

A

A

5)悲嘆

B

A

A

(5)病的悲嘆のスクリーニングを行い、適切に対処することができる。

B

A

A

コミュニケーション

 

 

 

(1)患者の人格を尊重し、傾聴することができる。

B

A

A

(2)患者が病状をどのように把握しているかを聞き、評価することができる。

B

A

A

(3)患者および家族に病気の診断や見通し、治療方針について(特に悪い知らせを)適切に伝えることができる。

B

A

A

(4)よいタイミングで、必要な情報を患者に伝えることができる。

B

A

A

(5)困難な質問や感情の表出に対応できる。

B

A

A

(6)患者や家族の恐怖感や不安感をひきだし、それに対応することができる。

B

A

A

(7)患者の自立性を尊重し、支援することができる。

B

A

A

社会的経済的問題の理解と援助

 

 

 

(1)患者や家族のおかれた社会的、経済的問題に配慮することができる。

B

A

A

(2)ソーシャルワーカ等と協力して、患者・家族の社会的、経済的援助のための社会資源を適切に紹介、利用することができる。

B

A

A

家族のケア

 

 

 

(1)家族の構成員がそれぞれ病状や予後に対して異なる考えや見通しを持っていることに配慮できる。

B

A

A

(2)家族の構成員が持つコミュニケーションスタイルやコーピングスタイルを理解し適切に対応、援助をすることができる。

B

A

A

(3)看護師やソーシャルワーカと協力し、家族の援助を行うための社会資源を利用することができる。

B

A

A

死別による悲嘆反応

 

 

 

(1)以下のことを行うことができる。

 

 

 

1)予期悲嘆に対する対処

B

A

A

2)死別を体験した人のサポート

B

A

A

3)家族に対して死別の準備を促す。

B

A

A

4)複雑な悲嘆反応をスクリーニングし適切に対処する。

B

A

A

5)抑うつを早期に発見し、専門家に紹介する。

B

A

A

4.自分自身およびスタッフの心理的ケア

 

 

 

(1)チームメンバーや自分の心理的ストレスを認識することができる。

B

A

A

(2)自分自身の心理的ストレスに対して他のスタッフに助けを求めることの重要性を認識する。

B

A

A

(3)自分自身の個人的な意見や死に対する考え方が患者およびスタッフに影響を与えることを認識する。

B

A

A

(4)ケアの提供にあたって体験する自分の死別体験、喪失体験の重要性を認

識する。

B

A

A

(5)ケアが不十分だったのではないかという自分、および他のスタッフの罪責感をチーム内で話し吅い、乗り越えることができる。

B

A

A

(6)スタッフサポートの方法論を知り、実践することができる。

B

A

A

(7)スタッフが常に死や喪失体験と向き吅っているということを理解し、正常の心理反応といわゆる燃え尽き反応を区別することができる。

B

A

A

5.スピリチュアルな側面

 

 

 

(1)診療にあたり患者・家族の信念や価値観を尊重することができる。

B

A

A

(2)患者や家族、医療者の死生観がスピリチュアルペインに及ぼす影響と重要性を認識する。

B

A

A

(3)スピリチュアルペイン、および宗教的、文化的背景が患者のQOLに大きな影響をもたらすことを認識する。

B

A

A

(4)患者・家族の持つ宗教による死のとらえ方を尊重することができる。

B

A

A

(5)患者のスピリチュアルペインを正しく理解し、適切な援助をすることができる。

B

A

A

6.倫理的側面

 

 

 

(1)患者や家族の治療に対する考えや意志を尊重し、配慮することができる。

A

A

A

(2)医療における倫理的問題に気づくことができる。

B

A

A

(3)医療における基本的な倫理原則について述べることができる。

B

A

A

(4)患者が治療を拒否する権利や他の治療についての情報を得る権利を尊重できる。

B

A

A

(5)患者・家族と治療およびケアの方法について話し吅い、治療計画をともに作成することができる。

B

A

A

(6)尊厳死や安楽死の希望に対して、適切に対応することができる。

B

A

A

(7)個々の倫理的問題を所属機関の倫理委員会に提出することができる。

B

A

A

7.チームワークとマネジメント

 

 

 

(1)他のスタッフおよびボランティアについてその果たす役割を述べ、お互いに尊重し吅うことができる。

B

A

A

(2)チーム医療の重要性と難しさを理解し、チームの一員として働くことができる。

B

A

A

(3)リーダーシップの重要性について理解し、チーム構成員の能力の向上に配慮できる。

B

A

A

(4)他領域の専門医に対して緩和医療のコンサルタントとして適切な助言を行い、協力して医療を提供する事ができる。

B

A

A

(5)他領域の専門医に対して適切にアドバイスを求め、療養に関する幅広い選択肢を患者・家族に提供し、互いに協力して医療を提供する事ができる。

B

A

A

(6)緩和ケア病棟、緩和ケアチームおよび在宅緩和ケアについてそれぞれの役割について述べることができ、自分が所属する組織の地域における役割を述べ、周囲の医療機関と協力して適切に医療を提供することができる。

 

B

 

A

 

A

(7)基本的なグループダイナミクスとその重要性について述べることができる。

B

A

A

(8)緩和ケア病棟、緩和ケアチームおよび在宅緩和ケアに関する医療保険・介護保険制度について具体的に述べることができる。

B

A

A

8.研究と教育

 

 

 

(1)臨床現場で起こる日常の疑問について、常に最新の知識を得るよう心がけることができる。

B

A

A

(2)臨床研究の重要性を知り、緩和医療に関する未解決な問題に対して行われる臨床研究に参加することができる。

B

A

A

(3)医学的論文の批判的吟味を行うことができる。

B

A

A

(4)Medlineや医学中央雑誌などの医学文献データベースを利用し体系的文献検索を行うことができる。

B

A

A

(5)二次資料(UpToDateやCochraneLibraryなど)を適切に利用することができる。

B

A

A

(6)成人学習理論に基づいた教育の基本的な手法について知り、実践することができる。

B

A

A

(7)所属する各機関およびその地域に於いて緩和医療の教育・啓発・普及活動を行うことができる。

B

A

A

(8)緩和医療に関する学会・研修会等に積極的に参加し、診療・研究業績を発表することができる。

B

A

A

※注釈:緩和医療に従事するものにとって、研究についての能力を持つことが必要である。理由は以下の3点にまとめられる。

 

 

 

1)日常に起こる臨床疑問についての解決方法を得るために、文献検索を行うことは必須であること。

A

A

A

2)文献を読むためにはまずその文献の質(研究方法やバイアス、限界)を評価する必要があること。

B

A

A

3)緩和医療は未発達な部分が多く、今後研究によって治療方法を探索、開発する必要が大きいと考えられること。

B

A

A

また、教育についての能力を持つ必要性は以下の3点にまとめられる。

 

 

 

1)ともに医療にあたる同僚に対して、必要な能力の伝達を行うことが必須であること。

B

A

A

2)教育を行うことが緩和医療に関する生涯学習につながること。

B

A

A

3)地域における緩和医療の充実のため、他施設や診療所の医師をはじめとする医療従事者に緩和医療の教育を行うことは必要不可欠であること。

B

A

A

9.その他

 

 

 

(1)臨死期および死後の患者・家族の心理に配慮することができる。

A

A

A

(2)死因を適切に診断し、患者および家族に説明することができる。

B

A

A

(3)我が国におけるホスピス・緩和ケアの歴史と現状、展望について概説できる。

B

A

A