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更新日:平成30(2018)年1月15日

DNA損傷シグナル研究室

 抗がん剤による腫瘍治療効果が低下するという深刻な現象は、悪性の腫瘍細胞が獲得し維持する「抗がん剤耐性」という性質によって引き起こされます。当研究室では治療困難な腫瘍(膵臓がん、大腸がん)由来の細胞が示すこの性質を制御するタンパク質群(がん遺伝子産物、がん抑制遺伝子産物)、およびその背景に存在する仕組み(情報伝達系)を明らかにすることを通して、既存の抗がん剤による腫瘍治療効果をさらに増強させる方法を提案したいと考えています。

 最近になって当研究室では古くから重要な骨形成因子として知られていた転写因子 RUNX2 のサイレンシングが、p53 遺伝子変異を持つ膵臓がん細胞のゲムシタビン(GEM)、および SAHA に対する感受性を向上させることを世界に先駆けて見いだしました(Nakamura et al., 2016; Ozaki et al., 2016; Ogata et al., 2017)。これらの研究成果はRUNX2 の発現量あるいは機能そのものを抑制することができれば、膵臓がんの既存の抗がん剤に対する感受性を向上させ、その治療困難な性質を克服し得る可能性を強く示唆しています。

 さらに、我々はがんの進展および抗がん剤耐性獲得への関与が示唆されている「がん幹細胞」に着目した研究を進めています。その成果の一部として、「がん幹細胞」の幹細胞性を規定するCD133 のチロシンリン酸化がCD133 依存性の腫瘍形成を促進することに加えて、このチロシンリン酸化を制御するタンパク質の候補として受容体型蛋白質チロシン脱リン酸化酵素の一つであるPTPRK を見いだしました (Shimozato et al., 2015)。この新たな発見から、PTPRK の恒常的な活性化を実現する方法の確立は「がん幹細胞」を標的する新規がん治療の開発へと進展する可能性を内包しています。

DNA sonsho

メンバー

室長 尾崎 俊文
研究員 下里 修

DNA sonshou

最近の主な業績

  1. Ogata et al., Depletion of runt-related transcription factor 2 (RUNX2) enhances SAHA sensitivity of p53-mutated pancreatic cancer cells through the regulation of mutant p53 and TAp63. PLoS ONE 12: e0179884. 2017.
  2. Ozaki et al., The functional interplay between pro-oncogenic RUNX2 and hypoxia-inducing factor-1α (HIF-1α) during hypoxia-mediated tumor progression. Book Series: Human Cell Research 2017, in press.
  3. Hoshi et al., Depletion of TFAP2E attenuates adriamycin-mediated apoptosis in human neuroblastoma cells. Oncology Rep. 37: 2459-2464. 2017.
  4. Ozaki et al., Depletion of pro-oncogenic RUNX2 enhances gemcitabine  (GEM) sensitivity of p53-mutated pancreatic cancer Panc-1 cells through the induction of pro-apoptotic TAp63. Oncotarget 7: 71937-71950. 2016.
  5. Fan et al., High mutation levels are compatible with normal embryonic development in Mlh1-deficient mice. Radiat. Res. 186: 377-384. 2016.
  6. Islam et al., Transcriptional regulation of BMCC1 mediated by E2F1 in neuroblastoma cells. Biochem. Biophys. Res. Commun. 478: 81-86. 2016.
  7. Nakamura et al., Improvement of gemcitabine sensitivity of p53-mutated pancreatic cancer MiaPaCa-2 cells by RUNX2 depletion-mediated augmentation of TAp73-dependent cell death. Oncogenesis 5: e233. 2016.